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ベトナム公安省は2026年4月3日の記者会見で、仮想通貨取引所「ONUS」を舞台にした大規模詐欺・マネーロンダリング事件について、主犯のヴォン・レ・ヴィン・ニャン(別名Eric Vuong)ら9名を起訴したと発表した。Botによる偽注文で価格を操作し、多数の投資家から資産を詐取した「特別に大規模なエコシステム」と当局は位置づけている。ベトナムにおける仮想通貨規制の行方を占う重要な事件である。
事件の全容——VNDCからONUSへの変遷
公安省経済安全保障局のファム・マイン・フン大佐によると、事件の発端は2018年に遡る。カントー市(ベトナム南部メコンデルタの中核都市)出身のヴォン・レ・ヴィン・ニャン(1984年生)とハノイ在住のチャン・クアン・チェンが共謀し、仮想通貨「VNDC」および取引プラットフォーム「VNDC Wallet」を開発した。2021年10月、このプラットフォームは「ONUS」に改称された。
2026年3月23日時点で、公安省捜査機関はニャンおよび共犯者8名に対し、「コンピュータネットワーク・通信ネットワークを利用した資産詐取」と「マネーロンダリング」の2つの罪名で起訴している。
4つの巧妙な「罠」——投資家を欺いた手口
第一の手口:虚偽の銀行担保。VNDCはベトナム国内の大手商業銀行に1対1の比率で資産を担保として預託していると宣伝されていた。しかし実際には、発行されたVNDCに対応する担保は銀行に預けられておらず、流動性の裏付けは存在しなかった。いわゆる「ステーブルコイン」を装った完全な虚偽である。
第二の手口:架空の実体経済との連携。グループはパン販売チェーン「SnackHouse」への投資を大々的に発表し、調印式まで開催した。カントーに30店舗、メコンデルタ地域に200店舗、全国で1,000店舗を展開し、VNDCバウチャーでパンと交換可能とされたが、実際にはそのような店舗網は存在しなかった。仮想通貨に実需を持たせるという典型的な信用創出の偽装である。
第三の手口:幽霊ECサイト。VNDCはTrustpay JSCおよびGo24 ATS JSCと提携し、「VNDCスーパーマーケット」なるECプラットフォームを立ち上げたと発表した。VNDCユーザー向けの消費・ショッピングチャネルとされたが、このサイトも実在しなかった。
第四の手口:シンガポール法人による権威付け。グループはVNDCおよびONUSがシンガポールの「VNDC Holding」と「Onus Technology」によって発行されていると公表し、国際的な信頼性を演出した。しかし実態は、これらのシンガポール法人もニャンとチェン自身が設立した会社に過ぎなかった。東南アジアでは、シンガポール法人の看板を借りて信用を装う手法は珍しくないが、本件はその典型例である。
KOL動員とBot操作——価格操縦の実態
グループはさらに、テクノロジー分野で影響力を持つKOL(Key Opinion Leader、インフルエンサー)を雇い、代理店や末端の勧誘員を組織的に配置して投資家を大量に呼び込んだ。ベトナムでは若年層のSNS利用率が極めて高く、KOLの影響力は日本以上に強大である。この動員力が被害を拡大させた要因の一つである。
十分な投資家を集めた後、グループはLABUBU、HNG、BDSといった複数の新たな仮想通貨トークンをプログラムで作成。Botを使って架空の売買注文を発生させ、取引量と価格を意のままに操作した。投資家が損失を被った段階でBotによる偽注文と広告宣伝を停止し、トークンの価格を本来の無価値な状態に戻す。その後、また新たなトークンプロジェクトを立ち上げ、同じサイクルを繰り返していたという。
フン大佐はこれを「特別に大規模なエコシステム」と表現し、被害額が極めて大きいことを強調した。捜査機関は現在、事件の全容解明と関係者の摘発を進めている。
投資家・ビジネス視点の考察
本事件はベトナムにおける仮想通貨市場の規制強化を加速させる可能性が高い。ベトナムは世界有数の仮想通貨利用国とされる一方、法的枠組みの整備が追いついておらず、今回のような大規模詐欺が発生する土壌があった。政府は現在、仮想資産に関する法的枠組みの策定を進めており、本事件はその議論に直接的な影響を与えるだろう。
ベトナム株式市場への直接的な影響は限定的と見られるが、間接的にはフィンテック関連銘柄への投資家心理に影を落とす可能性がある。特に、2026年9月に判断が見込まれるFTSE新興市場指数への格上げに向けて、ベトナムは市場の透明性・信頼性の向上を国際社会にアピールする必要がある。仮想通貨詐欺の摘発と厳正な処罰は、むしろ規制能力の高さを示すポジティブなシグナルとして受け止められる可能性もある。
日本企業やベトナム進出企業にとっては、ベトナムのデジタル金融領域における提携先選定の際に、法人の実態確認(特にシンガポール等の第三国に設立されたペーパーカンパニーの見極め)がより一層重要になることを示唆している。ベトナム市場のポテンシャルは依然として大きいが、急成長するデジタル経済の裏側にはこうしたリスクが潜んでいることを改めて認識すべきである。
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ハノイ在住13年日本語で毎日配信。
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