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幼稚園児から小学生までをターゲットにした化粧品・スキンケア市場が世界的に急拡大している。2024年、7〜12歳の子どもがいる家庭のスキンケア支出は約25億ドルに達し、2022年の18億ドルから大幅に増加した。一方で、イタリア当局がセフォラやLVMH傘下ブランドの子ども向けマーケティングに対し調査を開始するなど、規制の動きも出始めている。美容大国ベトナムにとっても無関係ではないこのトレンドを詳しく解説する。
「アルファ世代」を狙う新興ブランドの台頭
米ウォール・ストリート・ジャーナルの報道によると、化粧品企業各社が「アルファ世代」(2010年以降に生まれた子どもたち)に対するマーケティングを急速に強化している。キャンディやおもちゃを思わせるパッケージデザイン、「皮膚科医認証」「低刺激処方」といった訴求が特徴で、大人向け製品とは明確に差別化されたポジショニングが取られている。
3歳以上を対象とした保湿クリームやボディソープを展開するエバーデン(Evereden)は、2024年に約1億ドルの売上を記録した。同ブランドは「バービー」をテーマにしたスキンケアセットを69ドルで販売するなど、キャラクターIPとの連携にも積極的である。
また、クリー・ナチュラルズ(Klee Naturals)は5〜7歳向けの低色素チーク、アイシャドウ、リップグロスを展開し、2024年以降に顕著な成長を遂げ、年間売上は400万ドル近くに達している。創業者のプリシラ・チャン氏はウォール・ストリート・ジャーナルに対し、この成長の背景にはSNSを通じた子どもたちの美容への関心の高まりがあると説明した。
業界の主張と専門家の懸念
業界関係者は、子ども向け化粧品はアンチエイジングではなく「セルフケア」を軸に設計されており、大人用の刺激の強い製品を子どもが使うリスクを低減する「より安全な選択肢」であると主張する。子どもの肌は未発達で敏感であるため、好奇心から大人の製品を使うよりも、年齢に適した製品を用意すべきだという論理である。
しかし、皮膚科医や心理学の専門家からは強い懸念の声が上がっている。ラトガーズ大学(Rutgers University)の心理学教授で、思春期のボディイメージに関する著書を多数持つシャーロット・マーキー氏は、「美容業界は外見に対する不安から利益を得てきた産業であり、子どもを未開拓の市場として見ている可能性がある」と指摘する。マーキー氏は「どれほど安全な処方であっても、化粧品セットを子どもに与えること自体が、外見のトレンドを追うことが重要だというメッセージを暗に送ることになる」と警鐘を鳴らし、「理想的には、子どもたちは肌のことなど気にせず、塗り絵や遊びに時間を使うべきだ」と述べている。
一部の保護者は、子どもが単に大人や年上のきょうだいを真似ているだけで、化粧品の使用は遊びや自己表現の一形態だと捉えている。だが、こうした行為が思春期前の段階から外見へのプレッシャーを生むリスクがあるとの指摘も少なくない。
イタリア当局がセフォラ・LVMH傘下ブランドを調査
規制当局も動き始めている。イタリアの競争・市場監視当局(AGCM:Autorità Garante della Concorrenza e del Mercato)は最近、セフォラ(Sephora)およびLVMH傘下のベネフィット・コスメティクス(Benefit Cosmetics)に対し、子どもや青少年への不公正な商慣行の疑いで調査を開始した。
AGCMが特に問題視しているのは、非常に若い年齢のマイクロインフルエンサーをSNS上で活用し、マスク、美容液、アンチエイジングクリームといった大人向け製品を子どもに早期から使わせるよう促すマーケティング手法である。同当局は「未成年者向けではない、またはその年齢層でテストされていない化粧品に関する重要な情報が、省略されたり誤解を招く形で提示されている可能性がある」と声明で述べた。
AGCMは、未成年者が十分な知識を持たないまま多種多様な化粧品を日常的に使用することが健康に悪影響を及ぼしうると警告している。イタリアの財務警察とともに、セフォラ・イタリア、LVMHプロフュミ・エ・コスメティチ・イタリア、LVMHイタリアの各拠点に対する立ち入り検査も実施された。
こうした現象は「コスメティコレキシア(cosmeticorexia)」、すなわち未成年者におけるスキンケアへの過度な執着として概念化されつつあり、今後さらなる規制議論を呼ぶ可能性がある。
投資家・ビジネス視点の考察
この世界的トレンドは、ベトナムの美容・消費財市場にも複数の示唆を与える。
第一に、ベトナムは人口構成が若く、アルファ世代の人口比率が高い。SNS浸透率も極めて高いため、TikTokやYouTubeを通じた子ども向け美容マーケティングが今後急速に波及する可能性がある。ベトナムの化粧品市場は年間20億ドル超とされ、成長余地が大きい中で、子ども向けセグメントが新たな成長ドライバーとなりうる。
第二に、ベトナム株式市場においては、国内化粧品・消費財銘柄(例えばサイゴン・コスメティクスなど)や、外資系ブランドの代理店・流通を担う企業にとって、新たな市場カテゴリーの出現はポジティブ要因である。一方で、イタリアの事例が示すように、規制リスクも同時に高まる点には留意が必要である。
第三に、日本企業への影響も見逃せない。資生堂やコーセーといった日本の大手化粧品メーカーはベトナム市場でのプレゼンスを拡大しているが、子ども向けカテゴリーへの参入は倫理的・規制的リスクを慎重に見極める必要がある。「安全性」「皮膚科医監修」といった日本ブランドの強みが活きる領域でもあり、戦略次第では大きなチャンスにもなりうる。
2026年9月に見込まれるFTSE新興市場指数への格上げとの直接的な関連は限定的だが、ベトナムの消費市場の成熟度や多様性が国際投資家に評価される材料の一つとして、こうした市場トレンドの動向は注視に値する。
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