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2026年3月30日〜4月3日の週、ベトナム株式市場に投資するETF(上場投資信託)群から1兆2,000億ドン超の資金が流出した。流出の主役は国内運用のETFであり、25本中14本のファンドで純流出が確認された。一方、同週にはFTSE Russellによるベトナム市場の中間評価結果の公表が控えており、2026年9月の「新興市場(Secondary Emerging Market)」への格上げに向けた重要局面を迎えている。
国内ETFから9,120億ドンが流出——Diamond ETFに集中
国内ETFの純流出額は9,120億ドンに達した。その大半を占めたのがVFMVN Diamond ETF(ベトナム主要優良株で構成されるETF)で、単独で8,856億ドンの流出を記録した。VFM VN30 ETF(VN30指数連動型)も228億ドンの純流出となった。唯一、VinaCapital VN100 ETF(VN100指数連動型)が2億ドン超の小幅な純流入を記録したにとどまる。
海外ETFも3,190億ドンの流出——VanEck、Fubonが中心
海外籍ETFからも3,190億ドン超が流出した。米国上場のVanEck Vietnam ETF(ベトナム株に特化した米国籍ETF)が2,453億ドンの流出、台湾上場のFubon FTSE Vietnam ETF(富邦ベトナムETF)が368億ドンの流出をそれぞれ記録した。
タイ投資家も売り越し——預託証券経由で資金引き揚げ
タイの投資家はバンコク証券取引所に上場する預託証券(DR)を通じてベトナム市場に投資しているが、同週はVFM VN30 ETFのDR(銘柄コード:E1VFVN3001)を25万口・80億ドン相当、VFM VNDiamond ETFのDR(FUEVFVND01)を18万口・60億ドン相当それぞれ売り越した。タイからの資金フローも縮小傾向にあることが確認された形である。
2026年累計の流出額は3,000億ドン超——資産規模も縮小
4月単月でもETF全体から6,340億ドンが流出しており、2026年年初からの累計純流出額は3,000億ドン超に膨らんだ。4月3日時点でベトナム市場に配分されたETFの純資産総額は5兆8,200億ドンとなり、2025年末比で11.7%減少している。市場全体のセンチメント悪化を如実に反映した数字である。
ETFが売り越した主要銘柄
同週にETFが売り越した上位銘柄は、MWG(モバイルワールド、ベトナム最大の家電・スマホ量販チェーン)、FPT(ベトナム最大手IT企業)、PNJ(フーニュアンジュエリー、宝飾品最大手)、TCB(テクコムバンク)、GMD(ジェマデプト、港湾・物流大手)などである。主にVFMVN Diamond ETFとFubon FTSE Vietnam ETFの売りが影響した。
外国人投資家は1,122億ドンの売り越し——銀行株に売り集中
外国人投資家全体では同週1,1220億ドンの売り越しとなり、板取引(マッチング注文)ベースでは4,4640億ドンの売り越しであった。板取引で買い越しとなったのは小売セクター、食品・飲料セクターで、買い越し上位にはMSN(マサングループ、食品・資源コングロマリット)、HCM(ホーチミン証券)、DGC(ドゥクザン化学)、VCI(ビエティンバンク証券)、SSI(SSI証券、ベトナム最大手証券会社)などが並んだ。一方、売り越しは銀行セクターに集中し、VHM(ビンホームズ、不動産大手)、VCB(ベトコムバンク)、FPT、MBB(MBバンク)、BID(BIDV)、VPB(VPバンク)、VIC(ビングループ、ベトナム最大のコングロマリット)などが上位に入った。
FTSE Russell中間評価——4月7日夜に結果公表
2026年4月7日夜(日本時間8日未明)、FTSE Russellがベトナム市場に対する3月期の中間評価(interim review)結果を公表する。これは、ベトナムが「フロンティア市場」から「新興市場(Secondary Emerging Market)」へ格上げされるかどうかを判断するうえで極めて重要なステップである。特に、グローバルブローカーのベトナム市場へのアクセス改善状況が焦点となる。
SSI Researchは、ベトナムが今回の中間評価を通過し、2026年9月から段階的にパッシブファンド(指数連動型の受動運用ファンド)の資金流入が始まると予想している。推定される受動資金の規模は最大17億ドルに達するが、一度に全額が流入する可能性は低い。2019年のサウジアラビアの格上げ事例と同様に、3〜5回に分けて四半期ごとに段階的に配分される見通しである。
格上げに伴い新興市場資金(EM Flows)の流入が期待される銘柄として、VIC(ビングループ)、SSI(SSI証券)、MSN(マサングループ)、VCI(ビエティンバンク証券)、KBC(キンバックシティ、工業団地開発)、DGC(ドゥクザン化学)、VND(VNダイレクト証券)、HCM(ホーチミン証券)が挙げられている。ウォッチリストにはBSR(ビンソン製油所)、SAB(サベコ、ベトナム最大のビールメーカー)、HUT(フーインフラ)、PDR(ファットダット不動産)、DXG(ダットサイゴン不動産)も含まれる。
さらにSSI Researchの調査によれば、過去にFTSEでフロンティアから新興市場へ格上げされた各国の株式市場は、中期的に顕著な超過リターンを記録する傾向があるという。
投資家・ビジネス視点の考察
足元のETF資金流出は、短期的にはベトナム市場の需給を悪化させる要因である。特にDiamond ETFの大幅流出は、構成銘柄であるMWG、FPT、PNJなど主力株の株価に直接的な下押し圧力を与えている。しかし、この流出トレンドの大部分は国内ファンドの利益確定や資金回収によるものであり、海外ファンドの「ベトナム離れ」とは性質が異なる点に留意が必要である。
最大の注目材料は、FTSE Russellの格上げ判断である。9月に正式に新興市場入りが実現すれば、17億ドル規模のパッシブ資金流入は、現在のETF純資産総額(約5兆8,200億ドン)と比較しても極めてインパクトが大きい。格上げ候補銘柄への先回り買いが中期的な投資戦略として有効であり、証券セクター(SSI、HCM、VCI、VND)や大型コングロマリット(VIC、MSN)が恩恵を受けやすい。
日本企業にとっては、ベトナム市場の流動性向上とグローバルブローカーのアクセス改善が進めば、ベトナム上場企業との資本提携やM&Aの実行環境が整う点も見逃せない。短期の資金流出に過度に悲観せず、格上げという構造変化に目を向けるべき局面である。
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