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トランプ米大統領が設定した関税期限が迫る中、ベトナム株式市場は内外の投資家がともに取引を手控え、売買代金が12カ月ぶりの最低水準に沈んだ。VN-Indexは午前の取引で前半の上昇分をほぼ吐き出し、じわじわと下落する展開となった。
アジア市場全体が様子見、原油だけが急騰
アジアの主要株式市場はほぼ全面安となったものの、下落幅はわずかにとどまった。米国・欧州の株式先物も平穏な動きである。唯一目立ったのが原油価格の急騰で、WTI原油は3.1%上昇し約116ドル/バレル、ブレント原油は1.6%上昇し111.5ドル/バレルに達した。トランプ大統領が提示した期限が近づくにつれ、市場全体がリスク回避姿勢を強めている中、エネルギー市場だけが異なる動きを見せている格好である。
VN-Index午前の動き—前半の上昇を後半で全て失う
VN-Indexは午前の取引を0.12%安(-2.06ポイント)で終えた。一見すると小幅な下落だが、注目すべきはその中身である。午前10時10分にはVN-Indexが0.91%高まで上昇し、値上がり銘柄178に対し値下がり銘柄86と買い優勢だった。しかし後半にかけて売りが優勢となり、取引終了時には値上がり123銘柄に対し値下がり150銘柄と逆転した。日中の最大変動幅は約1.24%(約24ポイント)と極めて狭く、方向感のなさが際立った。
ホーチミン証券取引所(HoSE)全体でも、1%超の値下がりとなった銘柄は52にとどまり、売買代金シェアは17.9%。一方、1%超の値上がり銘柄は47で売買代金シェア16.1%。大多数の銘柄が極めて狭いレンジでの推移にとどまった。
売買代金は12カ月ぶり最低、外国人投資家の買いも13カ月ぶり低水準
最も深刻なのは流動性の枯渇である。HoSEとHNX(ハノイ証券取引所)の合計マッチング売買代金はわずか6,278億ドン(協議取引を除く)にとどまり、過去12カ月間で最低を更新した。さらに外国人投資家のHoSEでの買い付け額はわずか520.2億ドンと、過去13カ月間で最も低い水準に落ち込んだ。国内投資家だけでなく、海外投資家もまさに「凍結」状態に陥っている。
個別銘柄の動向—VICが孤軍奮闘
大型株ではVIC(ビンホームズ、ビングループ傘下の不動産大手)が1.55%高と最も堅調で、時価総額トップ10の他の6銘柄の下落をほぼ相殺した。VN30指数の構成銘柄は値上がり9・値下がり18だが、大半は狭いレンジでの推移である。VIC以外で目立った上昇はLPB(リエンベト・ポストバンク)の4.77%高、DGC(ドゥクザン・ケミカルズ)の1.13%高程度であった。
値下がり側ではVPL(ビンパール、ビングループ傘下のホスピタリティ企業)が3.15%安、GVR(ベトナムラバーグループ)が2.07%安、HDB(HDバンク)が1.76%安、TCB(テクコムバンク)が1.03%安と、銀行・不動産セクターに売りが散見された。VN30-Indexは午前終値で0.09%高だったが、これはほぼVIC1銘柄の貢献によるものである。
値上がり銘柄で売買代金10億ドン超を記録したのは約10銘柄のみ。VIX(VIX証券)が1.26%高・160.5億ドン、VSC(ベトナムコンテナシッピング)が2.34%高・107.3億ドン、DCM(ダクノン肥料、ペトロベトナム系)が1.4%高・66.6億ドン、DPM(ペトロベトナム肥料化学)が1.09%高・64.1億ドン、VCG(ビナコネックス)が1.67%高・63.1億ドン、VTP(ベトテルポスト)が4.62%高・52.2億ドンなどであった。
値下がり側で売買代金10億ドン超かつ1%超の下落を記録したのは19銘柄。VN30構成銘柄のTCB、HDB、GVR、VPL以外では、NVL(ノバランド、不動産大手)が2.06%安・102.1億ドン、VCK(ビンカム小売)が1.09%安・87.1億ドン、GEE(GEEグループ)が6.31%安・81.6億ドン、TCX(タンカン・ロジスティクス)が2.45%安・65.7億ドン、GEL(GELグループ)が1.29%安・60.2億ドンであった。
外国人投資家は463.3億ドンの売り越し
外国人投資家は買い付け額が極めて小さかったため、売り総額が1,000億ドンに満たないにもかかわらず、HoSEでの売買差引は-463.3億ドンと売り越しとなった。売り越し上位はHDB(-82.2億ドン)、TCB(-80.2億ドン)、BID(BIDV、ベトナム投資開発銀行、-58.3億ドン)、MBB(MBバンク、-53.6億ドン)、ACB(アジア商業銀行、-52.6億ドン)と銀行株に集中した。買い越しで目立ったのはVIC(+53.1億ドン)のみであった。
投資家・ビジネス視点の考察
今回の「凍結」相場は、トランプ大統領の関税政策の期限が迫る中、市場参加者が結果を見極めるまで動けないという典型的な「イベント待ち」の状態を如実に示している。ベトナムは対米輸出依存度が高く、関税引き上げが現実化すれば製造業・輸出関連銘柄に直接的な打撃が及ぶ。一方で原油価格の急騰は、PVD(ペトロベトナム・ドリリング)やPVS(ペトロベトナム・テクニカルサービス)などの石油関連銘柄、さらにはDCM・DPMといった肥料セクターにとってはプラス材料となり得る。
外国人投資家が銀行株を中心に売り越している点も見逃せない。2026年9月に予定されるFTSE新興市場指数への格上げ判断を前に、短期的な不透明感から外国人資金が一時的に退避している可能性がある。格上げが実現すれば数十億ドル規模のパッシブ資金流入が期待されるだけに、現在の低流動性は中長期投資家にとってはむしろ仕込みの好機とも解釈できる。
日本企業にとっても、ベトナムの製造拠点やサプライチェーンへの影響は注視すべきポイントである。関税政策の帰結次第では、チャイナプラスワンの受け皿としてのベトナムの競争力に変化が生じる可能性もあり、中長期的な事業戦略の見直しが必要になるかもしれない。
いずれにせよ、市場が動き出すのはトランプ大統領の期限が過ぎてからとなる公算が大きい。それまでは低流動性・狭レンジの膠着状態が続くと見られ、無理なポジション構築は避けるのが賢明であろう。
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出典: 元記事












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