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4月7日(火)、ロシアと中国が国連安全保障理事会においてホルムズ海峡の再開を求める決議案に拒否権を行使し、否決した。世界の石油・天然ガス取引量の約5分の1が通過するこの海峡の封鎖は、すでに5週間以上にわたりエネルギー価格を急騰させており、ベトナムを含む新興国経済にも深刻な影響を及ぼしている。
決議案の否決と投票の内訳
今回の決議案は賛成11票、反対2票(ロシア・中国)、棄権2票(パキスタン・コロンビア)という結果となった。国連安保理の規定では、決議の採択には15カ国中9カ国以上の賛成に加え、常任理事国5カ国(米国・ロシア・中国・英国・フランス)のいずれも反対しないことが条件となる。賛成票は条件を満たしていたものの、ロシアと中国の拒否権行使により否決された。
トランプ大統領の強硬発言と停戦提案
投票はトランプ米大統領がかつてない強硬な脅迫を発した数時間後に行われた。トランプ大統領は「イランがホルムズ海峡を再開し、米東部時間午後8時までに合意を受け入れなければ、一つの文明が今夜消滅する」と警告していた。しかし翌火曜日には一転して、ホルムズ海峡の再開を条件とした2週間の暫定停戦に同意する姿勢を示した。
ロシア・中国が反対した理由
ロシアのネベンジャ国連大使と中国の傅聡(フー・ツォン)国連大使は、決議案が紛争の根本原因と全体像を正確に反映していないと主張した。具体的には、米国とその緊密な同盟国が戦争を開始した当事者であることが明記されていない点を問題視した。傅聡大使は決議案について「誤解を招きやすく、濫用される恐れがある」と述べ、採択されれば「誤ったメッセージを発信し、深刻な結果を招きかねない」と警告した。
トランプ大統領の最新の脅迫発言を踏まえ、両国は決議が採択されれば米国とイスラエルが軍事行動を継続する口実を得ることになると判断したとされる。
拒否権行使の直後、ロシアと中国は独自の決議案を提出した。AP通信が確認した内容によると、この対案はすべての当事者に軍事活動の停止を求めるとともに、民間人および民間インフラへの攻撃を非難するものである。ネベンジャ大使は、この対案はすでに投票に付す準備ができていると述べた。
決議案の段階的な軟化の経緯
今回否決された決議案は、バーレーン(Bahrain、ペルシャ湾岸の島国で米海軍第5艦隊の拠点)が起草したものである。当初の草案では、ホルムズ海峡の航行を確保しあらゆる封鎖を阻止するために「あらゆる必要な措置」の使用を各国に認める内容だった。国連の文脈において、この表現は軍事力の行使を含むと解釈される。
しかし、ロシア・中国・フランスの3常任理事国が武力行使の容認に反対したため、草案は大幅に修正された。まず攻撃的な内容が全面的に削除され、「あらゆる必要な防衛措置」のみを認める文言に変更された。さらにその後も修正が重ねられ、安保理による行動の承認に関する内容はすべて削除され、適用範囲も当初の周辺海域を含む広域から、ホルムズ海峡のみに限定された。
最終的に否決された版では、各国にホルムズ海峡の航行安全確保のための協力を「奨励」し、商船や貿易船の護衛を含む措置を求めるにとどまった。また、イランに対して航行の自由の妨害と民間インフラへの攻撃の停止を要求する内容が盛り込まれていた。分析家の間では、仮に採択されたとしても、ここまで軟化された内容では紛争に大きな影響を及ぼすことは難しかったとの見方が支配的である。
紛争の背景
2月28日に米国とイスラエルがイランへの空爆作戦を開始して以降、テヘランは報復としてペルシャ湾岸諸国を含む10カ国以上のホテル、空港、住宅地、その他の民間インフラを攻撃した。湾岸諸国は世界有数の石油・天然ガス輸出国であり、ホルムズ海峡の封鎖は死活問題と位置づけている。
なお、3月11日には安保理がバーレーン提出の別の決議を賛成13、反対0、棄権2(ロシア・中国)で採択しており、イランによる湾岸諸国への「深刻な」攻撃を非難し、即時停止を求めていた。この決議ではイランのホルムズ海峡での行動を国際平和と安全への脅威と認定していた。
イランのイラバニ国連大使は、拒否権を行使した同盟国に感謝を表明し、決議案がイランのホルムズ海峡での行動を「根拠なく歪曲して」描写していると批判した。テヘランは国連憲章に基づく正当な自衛権の行使であり、国際平和への脅威ではないと主張している。
バーレーンのアブドゥルラティフ・ビン・ラシッド・アルザヤーニ外相は、決議の否決は「国際航行路への脅威が、世界の平和と安全を維持する責務を持つ国際機関からいかなる断固とした対応も受けずに進行しうる、というシグナルを発した」と述べ、湾岸諸国は紛争のエスカレーション防止と航行の自由の保護に向けた外交努力を強化すると表明した。
ベトナム経済・投資家への影響と考察
今回の国連安保理での拒否権行使とホルムズ海峡封鎖の長期化は、ベトナム経済と株式市場に複数の経路で影響を及ぼす。
エネルギーコストの上昇:ベトナムは近年、液化天然ガス(LNG)の輸入を本格化させており、エネルギー輸入への依存度が高まっている。ホルムズ海峡の封鎖が続けば、原油・LNG価格の高止まりを通じて、ペトロリメックス(PLX)やPVガス(GAS)など石油・ガス関連銘柄には追い風となる一方、製造業全体のコスト増要因となり、特に輸送・物流セクターには逆風である。
インフレ圧力:エネルギー価格の上昇はベトナム国内のインフレ率を押し上げる要因となる。ベトナム国家銀行(中央銀行)が利下げ姿勢を維持しにくくなれば、不動産や銀行セクターへの資金流入が鈍化する可能性がある。
地政学リスクとサプライチェーン:ベトナムは「チャイナ・プラス・ワン」戦略の受け皿として日本企業を含むグローバル企業の製造拠点移転先となっているが、中東情勢の悪化による海上輸送リスクの増大は、ベトナムからの輸出競争力にも間接的に影響する。保険料や運賃の上昇は、ベトナム進出日系企業のコスト構造を圧迫しうる。
FTSE新興市場指数への格上げとの関連:2026年9月に決定が見込まれるFTSE新興市場指数への格上げに向け、ベトナム市場は海外投資家の注目を集めている。しかし、地政学リスクの高まりはグローバルな「リスクオフ」心理を強め、新興市場全体からの資金流出を招く恐れがある。格上げの恩恵を最大化するためにも、今後数カ月の中東情勢の推移は注視が必要である。
ロシア・中国とベトナムの関係:ベトナムは伝統的にロシアと中国の双方と緊密な外交関係を維持する「竹外交」(バンブー外交)を展開している。今回の拒否権行使に象徴される米中ロの対立構図の深化は、ベトナムの外交バランスにも影響を与えうる。投資家としては、ベトナムがこうした地政学的緊張の中でどのようにバランスを取るかが、中長期的な投資環境を左右する重要な要素となる。
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出典: 元記事












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