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世界の半導体ファウンドリ市場でTSMC(台湾積体電路製造)が競合他社を大きく引き離し続けている。2025年の同市場は過去最高の3,200億ドル規模に達する見通しだが、TSMCは売上成長率36%、市場シェア38%と、残る競合勢の成長率約8%を圧倒している。ベトナムを含む東南アジアの半導体サプライチェーンにも波及するこの構造的優位の背景を、詳しく読み解く。
先端プロセスへの集中投資が生む圧倒的収益構造
Counterpoint Researchの最新レポートによると、2025年の世界半導体ファウンドリ市場は前年比16%増の3,200億ドルに達する見込みである。このうちTSMCの売上成長率は36%と市場全体を大幅に上回り、同社単独で38%のシェアを占めている。一方、TSMC以外の企業全体の売上成長率は約8%にとどまる。
この差は一時的なものではない。TSMCは人工知能(AI)およびハイパフォーマンス・コンピューティング(HPC)向けの先端プロセスに経営資源を集中させてきた。2025年第4四半期には、7nm以下の先端プロセスがウエハー売上の74%を占め、そのうち3nmが24%、5nmが36%を構成する。3nmの比率は2024年の18%から24%へと着実に拡大しており、先端領域へのシフトが加速していることがわかる。
年率約16%のウエハー価格上昇——圧倒的な価格決定力
TSMCの成長を支えるもう一つの柱が、価格決定力(プライシングパワー)である。同社のウエハー平均販売価格(ASP)は2019年から2025年にかけて年率約15.9%で上昇してきた。2025年単年では、ウエハー1枚あたりの粗利益が約3.3倍に拡大している。これは価格上昇のペースが製造コストの増加を大きく上回っていることを意味する。
TrendForceの報道によれば、TSMCは2026年1月から5nm以下のプロセス(2nm、3nm、4nm、5nm)について5〜10%の値上げを顧客に通知済みである。特に3nmプロセスについては、今後数年にわたり二桁パーセントの値上げが続くと予測されている。
Tom’s Hardwareが指摘するように、TSMCがこうした値上げを継続できる最大の理由は、顧客にとって同等の規模と性能を提供できる代替先が事実上存在しないことにある。サムスン電子(Samsung Electronics)は5nm以下のプロセスで歩留まりが十分でなく、大規模受注に対応できる状態にない。インテル(Intel)もファウンドリ事業を強化しているものの、市場シェアは約6%にとどまり、2025年第4四半期に45億ドルの売上を記録したものの依然として大幅な赤字が続いている。
CoWoS——先端パッケージングという「第二の収益源」
TSMCの優位性はウエハー製造だけにとどまらない。同社が独自開発した2.5D先端パッケージング技術「CoWoS(Chip on Wafer on Substrate)」も急速に拡大している。CoWoSの生産能力は2024年末の月産約35,000枚から2025年末には約80,000枚へと倍増し、2026年末には約130,000枚への引き上げが計画されている。
Counterpoint Researchの「Foundry 2.0」分類によれば、TSMCのOSAT(外部委託パッケージング・テスト)部門も2025年に約10%の成長を記録している。ASEテクノロジー・ホールディング(SPILを含む)やアムコー・テクノロジー(Amkor Technology)といった大手OSATベンダーは、主にTSMCの内製能力を超えた需要を吸収する役割を担っているに過ぎない。シリコンインターポーザの製造やチップ・オン・ウエハーの初期工程といった高付加価値プロセスはTSMC自身が手がけ、利益率の低い基板レベルの組立・検査工程のみが外注されている構造である。
Counterpointは2026年に業界全体の先端パッケージング能力が約80%拡大すると予測しているが、その大部分をTSMCのCoWoS拡張が占める見通しである。
競合の追い上げは当面限定的
もちろん競合各社も手をこまねいているわけではない。サムスン電子は2nmプロセスの開発を加速しており、歩留まりが改善すれば外部顧客の獲得が始まる可能性がある。インテルも18Aプロセスを用いた「Panther Lake」および「Clearwater Forest」の初期製品を投入しているが、生産規模は限定的である。
中国の半導体メーカー群は、大規模な国産化プログラムに支えられ、二桁成長を維持する見込みである。テキサス・インスツルメンツ(Texas Instruments)やインフィニオン・テクノロジーズ(Infineon Technologies)といったIDM(垂直統合型半導体メーカー)は在庫調整をほぼ完了し、今後の安定需要の土台を築いている。
しかし少なくとも2025年中に、TSMCとの差を縮められる企業は見当たらない。TSMCの38%という市場シェアは、先端技術・価格決定力・垂直統合という長期的な競争優位の蓄積の結果であり、競合が加速したとしても追いつくには数年を要する構造的な差である。
投資家・ビジネス視点の考察
本記事は直接的にはベトナム市場のニュースではないが、ベトナムの半導体関連投資を考えるうえで極めて重要な文脈を提供している。以下の点に注目したい。
1. ベトナム半導体サプライチェーンへの波及:TSMCの先端パッケージング能力拡大とOSAT外注の増加は、ベトナムに生産拠点を持つアムコー・テクノロジー(バクニン省工場)などへの受注増加に直結する。ベトナムは現在、後工程(パッケージング・テスト)の主要拠点として急速に存在感を高めており、TSMCの成長はベトナムの半導体産業にも追い風となる。
2. ベトナム株式市場への間接的影響:ホーチミン証券取引所(HOSE)に上場する半導体関連銘柄は限定的だが、FPTセミコンダクターやベトナムのEMS(電子機器受託製造)企業群は、グローバルな半導体需要拡大の恩恵を受ける立場にある。また、ベトナム政府が2024年に発表した半導体人材育成計画(2030年までに5万人の半導体エンジニア育成)も、こうしたグローバルトレンドを見据えた政策である。
3. FTSE新興市場指数格上げとの関連:2026年9月に決定が見込まれるベトナムのFTSE新興市場指数への格上げが実現すれば、海外機関投資家のベトナム株への資金流入が加速する。半導体関連を含むテクノロジーセクターへの関心は一段と高まる可能性があり、サプライチェーン全体での投資機会を早期に押さえておくことが重要である。
4. 日本企業への示唆:日本の半導体製造装置・素材メーカーにとって、TSMCの設備投資拡大は直接的な商機である。同時に、ベトナムへの後工程移転を進める日系企業にとっても、TSMCのサプライチェーン戦略の変化は注視すべきテーマである。
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ハノイ在住13年日本語で毎日配信。
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出典: 元記事












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