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ベトナム電力公社(EVN)は、2026年第1四半期の電力供給が安定的に確保されたことを発表した。システム全体の発電・輸入量は768.6億kWhに達し、前年同期比6.6%増を記録。しかし第2四半期は乾季のピークを迎え、電力需要が急増する見通しであり、EVNは重点プロジェクトの加速と節電対策を全力で推進している。
2026年第1四半期の電力供給実績
EVNによると、2026年3月単月の発電・輸入量は286億kWhに達した。第1四半期全体では768.6億kWhとなり、前年同期比6.6%の伸びを示した。送電量ベースでは3カ月間で約609億kWhを記録している。
電源別の内訳は以下の通りである。
- 石炭火力発電:405.8億kWh(全体の52.8%)——依然として主力電源の座を占める
- 水力発電:160.9億kWh(20.9%)
- 再生可能エネルギー:118億kWh(15.4%)。うち太陽光が69.8億kWh、風力が43.3億kWh
- ガスタービン:54億kWh(7.0%)
- 輸入電力:29.2億kWh(3.8%)
石炭火力が過半を占める構造は変わらないものの、再生可能エネルギーが15%超のシェアを確保しており、ベトナムのエネルギー転換が着実に進みつつあることが読み取れる。
重要イベントへの電力供給と農業用水の確保
第1四半期には、ベトナム共産党第14回全国代表大会、第16期国会議員選挙および2026〜2031年任期の各級人民評議会選挙という重要な政治イベントが相次いだ。EVNはこれらのイベントに対し、安全かつ安定的な電力供給を実現したと報告している。
また、電力供給と並行して、農業・環境省の要請に基づき、ホアビン(Hòa Bình)水力発電所、タックバー(Thác Bà)水力発電所、トゥエンクアン(Tuyên Quang)水力発電所を高出力で運転し、北部中山間地域および紅河デルタ地域の2025〜2026年冬春期の稲作用水を確保した。2回にわたる放水の合計期間は15日間で、当初計画より1.5日短縮。放水総量は33.48億立方メートルと、計画比18%の節水を達成した。水資源と発電の両立という難しい課題に対し、効率的な運用が行われた格好である。
重点電源・送電網プロジェクトの進捗
EVNは複数の重点プロジェクトについて進捗を明らかにした。
電源開発:
- クアンチャック第1火力発電所(Nhiệt điện Quảng Trạch I):全体進捗率98.4%。1号機の系統同期が間近で、2026年4月中の併入、5月の商業運転開始を目指す
- クアンチャック第2 LNG発電所(LNG Quảng Trạch II):EPC契約を締結済み。第2四半期中の着工・施工開始を目指す
- クアンチャック第3 LNG発電所(LNG Quảng Trạch III):2026年4月中にFS(フィージビリティスタディ)審査を完了し、年内着工を目指す
- ホアビン水力発電所拡張:国家検査委員会が建設工事の竣工検査結果を承認済み
- チーアン水力発電所拡張(Thủy điện Trị An)、バックアイ揚水発電所(Thủy điện tích năng Bác Ái):2026年の工程目標に従い施工を集中推進中
送電網整備:
第1四半期にEVNおよび傘下各社は46件の工事を着工し、110kV〜500kVの送電設備39件の通電を完了した。内訳は500kVが1件、220kVが7件、110kVが31件である。主な完了案件には、フォーノイ(Phố Nối)500kV変電所の容量増強、ドックソイ〜ズンクアット(Dốc Sỏi – Dung Quất)間220kV送電線、ヴィンイエン(Vĩnh Yên)500kV変電所からの500kV接続線などがある。
第2四半期の課題と対策
第2四半期は乾季のピークに入り、電力需給が最も逼迫する時期となる。EVNは以下のリスク要因を挙げている。
- 地政学的緊張による燃料コスト上昇リスク
- 猛暑による家庭・商業用電力需要の急増
- 製造業の回復に伴う工業用電力需要の増加
- AI・デジタルトランスフォーメーション(DX)の進展やEV(電気自動車)普及による新たな電力需要
これらに対応するため、EVNは首相指示第10号(Chỉ thị số 10/CT-TTg)に基づく節電推進を徹底するほか、発電各社に対し燃料の十分な確保と設備稼働率の維持を求めている。水力発電所のダム運用については、農業用水と発電の需要を柔軟にバランスさせる方針である。
送電面では、国家送電公社が設備の不具合を徹底的に解消するとともに、配電網への蓄電池システム(BESS)の設置を加速させる。特に北部地域での供給力確保が重点課題とされている。
第2四半期に通電を目指す主要送電プロジェクトとしては、ニョークアン〜フーリー〜トゥオンティン(Nho Quan – Phủ Lý – Thường Tín)間500kV/220kV送電線、ニョンチャック第3発電所〜ロンタイン(Nhơn Trạch 3 – Long Thành)間220kV送電線、タイハノイ〜タインスアン(Tây Hà Nội – Thanh Xuân)間220kV送電線、ダイモー(Đại Mỗ)220kV変電所(ハノイ市内)、そしてAPEC会議の電力供給に向けたフーコック島(Phú Quốc)の110kV送電線2路線が挙げられている。
また、各地域の電力総公司には、極端な状況に備えた供給計画の策定、大口需要家との負荷調整協議、自家消費型屋上太陽光発電の普及促進が求められている。
投資家・ビジネス視点の考察
本ニュースは、ベトナムの電力インフラ整備が加速している現状を如実に示している。投資家にとって注目すべきポイントは以下の通りである。
1. LNG関連プロジェクトの本格化:クアンチャック第2・第3 LNG発電所が相次いで動き出しており、LNGインフラ関連(ガス輸入ターミナル、パイプライン建設など)に携わるベトナム企業や、LNG供給契約を持つ日本企業にとってビジネス機会が拡大する。PVガス(GAS)やペトロベトナム系企業の動向は要注目である。
2. BESS(蓄電池)の導入加速:送電網へのBESS設置が明確に言及されたことは、蓄電池関連メーカーや素材企業にとって追い風である。再生可能エネルギーの出力変動を吸収するためのBESS需要は今後急拡大が見込まれ、日本の蓄電池メーカーにとってもベトナム市場は有望なターゲットとなる。
3. 電力需給逼迫リスクと産業への影響:乾季ピーク時の電力不足は、2023年に深刻な問題となった経験がある。万が一供給制限が発生すれば、北部の工業団地に集積する日系製造業にも影響が及ぶ。進出企業は自家発電設備や屋上太陽光の導入を検討すべき局面にある。
4. FTSE新興市場指数格上げとの関連:2026年9月に決定が見込まれるFTSE格上げに向けて、ベトナムはインフラ整備を含む経済基盤の強化をアピールしている。電力の安定供給は外国投資家の信頼を得るうえで不可欠な要素であり、EVNの取り組みはマクロ的な格上げストーリーの一部として位置づけられる。
5. 関連銘柄:EVN自体は非上場だが、傘下の上場発電会社(POW=ペトロベトナムパワー、NT2=ニョンチャック2火力、HND=ハノイ電力など)や送電・配電関連企業は、電力需要の増加と設備投資拡大の恩恵を直接受ける立場にある。再エネ関連ではBCG、GEG、REEなども注視したい。
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出典: 元記事












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