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2025年4月9日(木)の米国株式市場は、ホルムズ海峡が依然として封鎖状態にあるにもかかわらず続伸した。米国とイランの間で成立した2週間の脆い停戦合意が維持されるとの期待が、投資家のリスク選好を支えている。原油価格は一時100ドルを超える場面もあり、エネルギー市場の混乱はベトナムをはじめとする新興国経済にも大きな影響を及ぼし得る状況である。
米主要3指数がそろって上昇、ダウは年初来プラス圏に
9日の取引終了時点で、S&P500は前日比0.62%高の6,824.66ポイント、ナスダックは0.83%高の22,822.42ポイント、ダウ工業株30種平均は275.88ドル(0.58%)高の48,185.8ポイントとなった。ダウはこの上昇により年初来の騰落率がプラス0.25%に転じた。
前日8日(水)には、米国とイランの停戦合意報道を受けて3指数がそろって2%超の急騰を記録しており、ダウは2025年4月以来最大の上昇幅を記録していた。2営業日連続の上昇で市場のセンチメントは改善傾向にある。
原油価格は反発—WTIが一時100ドル突破
前日に急落したWTI(ウエスト・テキサス・インターミディエート)原油先物とブレント原油先物は、この日反発に転じた。WTIはニューヨーク市場で3%超上昇し97.87ドル/バレルで引け、ブレントはロンドン市場で1%超上昇の95.92ドル/バレルとなった。前日にはWTIが16%、ブレントが13%という記録的な急落を見せていた。
取引時間中、イランがホルムズ海峡を依然として開放していないことを背景にWTIは一時100ドルを突破した。しかし、イスラエルのネタニヤフ首相がレバノンとの直接交渉に意欲を示したことで価格は100ドルを下回る水準まで押し戻された。
ホルムズ海峡の封鎖は継続—通航はほぼ停止状態
ホルムズ海峡は世界の海上原油輸送の約2割が通過する戦略的要衝である。アブダビ国営石油会社ADNOC(Abu Dhabi National Oil Company)のCEOは9日、同海峡での船舶の通航は依然として制限されていると述べた。イランは自国の許可を得た船舶のみ通過を認めるとの立場を崩していない。
海上輸送データを追跡する企業の衛星画像によれば、米イラン停戦合意が発表されて以降、ホルムズ海峡を通過できたのはタンカー1隻とドライバルク船5隻のみである。通常であれば1日あたり約140隻が通過する海峡であり、事実上の封鎖状態が続いていることになる。
中東情勢は依然不透明—停戦崩壊リスクも
停戦合意にもかかわらず、中東の緊張は解消されていない。イスラエルは水曜日にもレバノンの複数の標的に対する空爆を継続した。イランはレバノンも停戦の対象に含まれるべきだと主張しており、イスラエルの行動は停戦崩壊のリスクを高めている。
RFGアドバイザリーの最高投資責任者リック・ウェデル氏はCNBCに対し、「停戦が続く限り、投資家はこの状況が長期的に解決に向かうと信じ続けるだろう」と述べた。ただし同氏は、海峡の封鎖が長引けば長引くほど再開は難しくなり、供給ショックが長期化すると警告している。
米インフレ指標は高止まり—Fed利下げは遠のく
この日発表された2月のPCE(個人消費支出)価格指数は前年同月比2.8%上昇、食品・エネルギーを除くコアPCEは同3.0%上昇となり、いずれも市場予想と一致した。ただしFRB(米連邦準備制度理事会)の目標である2%を大幅に上回る水準が続いている。
重要なのは、このデータが戦争勃発前の2月時点のものであり、3月に急騰した原油価格の影響がまだ反映されていない点である。翌10日(金)に発表される3月のCPI(消費者物価指数)はエネルギー価格高騰の影響を織り込んだものとなり、インフレ加速が確認される可能性が高い。これはFRBが年内利下げを見送る方向性をさらに強固にするものとなるだろう。
また、メタ・プラットフォームズ(旧Facebook)が新たなAIモデルを発表したことで同社株が2.6%上昇し、市場全体の支援材料となった。
投資家・ビジネス視点の考察—ベトナムへの波及
今回の中東危機とホルムズ海峡封鎖は、ベトナム経済と株式市場にとって複数の経路で影響を及ぼし得る。
①原油価格高騰とベトナムの二面性:ベトナムは石油の純輸出国から純輸入国へと転じつつある過渡期にある。ペトロベトナムガス(GAS)やペトロベトナム(PVD、PVS)などの上流企業にとって原油高は追い風だが、航空(ベトジェットエア=VJC、ベトナム航空=HVN)や物流、製造業にとっては燃料コスト増が利益を圧迫する。VN-Index構成銘柄のセクター別影響を精査する必要がある。
②インフレ・金利への波及:原油価格の高止まりはベトナム国内のインフレ圧力を高め、ベトナム国家銀行(中央銀行)の金融緩和余地を制限する可能性がある。これは不動産セクター(VHM、NVLなど)や銀行セクターの株価にとってマイナス要因となり得る。
③サプライチェーンへの影響:ホルムズ海峡の封鎖が長期化すれば、海上輸送コストの上昇や物流の混乱を通じて、ベトナムに製造拠点を持つ日本企業にも影響が及ぶ。特にベトナムからの輸出品は海上輸送に依存しており、エネルギーコスト増は輸出競争力を低下させるリスクがある。
④FTSE新興市場指数への格上げとの関連:2026年9月に決定が見込まれるベトナムのFTSE新興市場指数への格上げに向けて、グローバルなリスクオン・リスクオフの動きは市場の地合いに直結する。中東情勢の安定化は新興国市場全体への資金流入を促し、格上げ期待を後押しする一方、長期化すればリスク回避の売りが新興国市場から資金を引き揚げる要因となる。
⑤米国の利下げ見送りがベトナム市場に与える影響:FRBが年内利下げを見送れば、ドル高が継続しベトナムドンへの下落圧力となる。為替防衛のために国家銀行が利下げに慎重になれば、国内の信用拡大ペースが鈍化し、経済成長率にもブレーキがかかる可能性がある。
いずれにせよ、ホルムズ海峡の実質的な封鎖が続く限り、原油市場のボラティリティは高止まりし、ベトナムを含むアジア新興国市場は不安定な展開を余儀なくされるだろう。今後数日間の停戦合意の行方と、10日発表の米CPI統計が次の方向性を決める鍵となる。
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出典: 元記事












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