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ベトナム最大手の不動産デベロッパーであるVinhomes(ビンホームズ、ホーチミン証券取引所ティッカー:VHM)の取締役会会長ファム・ティエウ・ホア氏が、2026年のベトナム不動産市場について「選別的な回復段階に入った」との見解を示した。同氏は、市場の核心は依然として「実需向け製品」にあると強調しており、投機主導の過去の市場サイクルとは異なる構造的変化が進行していることを示唆している。
Vinhomes会長が語った「選別的回復」とは何か
Vinhomesの取締役会会長であるファム・ティエウ・ホア氏は、2026年の不動産市場の見通しについて発言し、市場は回復局面に入ったものの、その回復は「選別的(có chọn lọc)」であると明言した。すなわち、すべてのセグメントが一律に上昇するのではなく、実需に裏打ちされた優良な製品・プロジェクトに資金が集中する構図が鮮明になっているということである。
同氏が特に強調したのは、2026年の不動産市場における「コア(cốt lõi=核心)」は実需向け住宅製品であるという点だ。ベトナムでは2022年後半から2023年にかけて、社債市場の混乱や流動性危機を背景に不動産市場が深刻な低迷期に陥った。その後、政府による法整備(改正土地法、改正住宅法、改正不動産事業法の2024年8月施行)や、中央銀行(ベトナム国家銀行)による段階的な金融緩和政策を経て、市場は徐々に底打ちの兆しを見せてきた。しかし、2026年の現時点においても、回復は均一ではなく、「選別的」であるというのがVinhomes経営陣の認識である。
Vinhomesの市場ポジションと実需戦略
Vinhomesは、ベトナム最大の民間コングロマリットであるVingroup(ビングループ、VIC)傘下の不動産開発事業会社で、ホーチミン証券取引所に上場する時価総額トップクラスの銘柄である。ハノイのVinhomes Ocean Park(ビンホームズ・オーシャンパーク)やVinhomes Smart City(ビンホームズ・スマートシティ)、ホーチミン市近郊のVinhomes Grand Park(ビンホームズ・グランドパーク)など、都市圏の大規模タウンシップ開発を次々と手掛けてきた。
同社の強みは、数万戸規模の住宅供給能力と、学校・病院・商業施設を一体的に整備するタウンシップモデルにある。これはまさに「実需層」、すなわちベトナムの急速に拡大する中間所得層が求める住宅ニーズに直結するものだ。ベトナムの人口は約1億人で、平均年齢は30代前半と若く、都市化率も40%台から今後さらに上昇していく見通しであるため、中長期的な住宅需要の構造的な成長ドライバーは健在である。
ファム・ティエウ・ホア会長の発言は、こうしたVinhomesの戦略的方向性を改めて裏付けるものと言える。投機的なリゾート用地や高額別荘ではなく、実際に人が住む住宅こそが市場の中心であり、そこに経営資源を集中させるという明確なメッセージである。
ベトナム不動産市場の回復は本物か——構造的な背景
ベトナム不動産市場が「選別的回復」と表現される背景には、いくつかの構造的要因がある。
第一に、法制度の整備が進んだことが挙げられる。2024年8月に前倒し施行された改正土地法・改正住宅法・改正不動産事業法の「三法」は、土地使用権の明確化やプロジェクト承認手続きの簡素化を図るもので、長年の法的ボトルネックが緩和された。ただし、施行後も地方行政レベルでの運用に時間がかかっており、新規プロジェクトの供給増加が本格化するには依然としてタイムラグが存在する。
第二に、金利環境の改善がある。ベトナム国家銀行は2023年から複数回の利下げを実施し、住宅ローン金利は過去のピーク時と比較して大幅に低下した。これにより実需層の購買力が回復しつつある。
第三に、外国直接投資(FDI)の堅調な流入がある。製造業を中心にベトナムへの投資は引き続き活発であり、工業団地周辺の住宅需要や、駐在員向けの賃貸住宅市場にもプラスの波及効果が見られる。
一方で、「選別的」という留保が付く理由も明確である。高級リゾート物件やコンドテル(コンドミニアム型ホテル)など、過去の投機ブーム期に大量供給されたセグメントは依然として在庫消化に苦しんでおり、価格下落や流動性の欠如が続いている。また、地方都市の分譲地(đất nền)市場も、2021〜2022年の投機的高騰の反動から完全には立ち直っていない。つまり、回復の恩恵を受けるのは、立地が良く、実需に即した製品を持つデベロッパーに限定されるという構図である。
投資家・ビジネス視点の考察
【ベトナム株式市場への影響】
Vinhomes(VHM)はVN-Index(ベトナムの代表的株価指数)において時価総額上位の主要構成銘柄であり、同社会長の市場見通しは市場全体のセンチメントに影響を与えうる。「回復」というポジティブなキーワードと、「選別的」という慎重な留保の組み合わせは、不動産セクター全体の一律的な買い材料にはなりにくいが、Vinhomesのような実需型大手デベロッパーには相対的にポジティブに作用する可能性がある。同じく上場している中堅デベロッパーの中には、プロジェクトの法的問題や資金繰りの課題を抱える企業も少なくなく、銘柄間の選別がより重要になる局面である。
【日本企業・ベトナム進出企業への示唆】
日本の不動産・建設大手の中には、ベトナムでの住宅開発や工業団地開発に参画している企業も多い。野村不動産、三井不動産、大和ハウスなどがベトナム市場でプレゼンスを持つ。実需型住宅市場が回復の中心にあるという今回のメッセージは、日系デベロッパーにとっても事業環境の改善を示唆するものと言えよう。特に、中間所得層向けの住宅セグメントは今後も需要が旺盛であり、日本品質の住宅・建材へのニーズは引き続き高い。
【FTSE新興市場指数格上げとの関連性】
2026年9月に決定が見込まれるベトナムのFTSE新興市場指数への格上げが実現すれば、海外機関投資家の資金流入が加速する。その際、VHMのような大型・流動性の高い銘柄は組み入れ候補として注目度が高い。不動産セクターの「選別的回復」というナラティブは、ファンダメンタルズに裏打ちされた優良銘柄への資金集中という、格上げ後の市場環境とも整合的である。
【ベトナム経済全体における位置づけ】
不動産はベトナムGDPの約8〜10%を占め、銀行融資残高に占める割合も大きいため、同セクターの回復は経済全体の安定に直結する。選別的であっても回復が進むこと自体は、銀行の不良債権リスクの低下や、建設・建材・内装などの裾野産業への波及効果を通じてマクロ経済にポジティブである。2026年のベトナム政府の経済成長目標は引き続き高い水準に設定されており、不動産市場の段階的な正常化はその達成を下支えする重要な要素となる。
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出典: VnExpress元記事












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