中国航空各社が欧州便を数千便増発へ——ロシア上空通過の優位性がベトナム含むアジア路線に波及

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中国の航空各社が、今後6カ月間で欧州向けに数千便規模の新規フライトを投入する計画を進めている。中東情勢の悪化とロシア・ウクライナ上空の閉鎖により、欧州系航空会社が迂回を余儀なくされる中、ロシア上空を引き続き通過できる中国勢が構造的な競争優位を確立しつつある。この動きはベトナムを含むアジア全域の航空市場にも大きな影響を及ぼす可能性がある。

目次

中東紛争と空域閉鎖が生んだ「非対称な競争環境」

2月28日に米国とイスラエルがイランに対して空爆を実施し、中東地域で報復攻撃が連鎖したことで、欧州・アジア間を結ぶ航空路線は大きな制約を受けることとなった。ロシアおよびウクライナの空域も依然として閉鎖されており、欧州系航空会社は南回りの狭い航空路を選択せざるを得ない状況にある。

これは飛行時間の延長と燃料消費の増大を意味し、原油価格の高騰と相まってコスト圧力が急激に高まっている。航空コンサルティング会社BAA Partnersの代表であるリヌス・バウアー氏は、日経アジアの取材に対し、迂回飛行は燃料費だけで1時間あたり8,000~20,000ドルの追加コストが発生し、その他経費を含めると1便あたり15,000~30,000ドルのコスト増になると指摘している。

一方、中国の航空各社はロシア上空の通過が認められているため、最短ルートを維持できる。航空コンサルティング企業デザン・シラ・アソシエイツ(Dezan Shira & Associates)のASEAN地域担当ディレクター、マルコ・フォースター氏は「短い航路は燃料消費の削減、運航コストの低減、そして競争力のある運賃設定に直結する」と断言する。

中国勢、今夏だけで2,350便を西欧に追加投入

航空データプロバイダーOAGによれば、中国の航空各社は今夏(3月~10月)に前年同期比で2,350便を西欧向けに増便する計画である。内訳は以下の通りだ。

  • 中国国際航空(Air China):969便増
  • 中国東方航空(China Eastern Airlines):697便増
  • 中国南方航空(China Southern Airlines):410便増

さらに、北京大興国際空港からフランクフルト、ヘルシンキ、ミラノへの直行便が初めて就航し、これらの路線だけで100便以上が運航される。英ブリティッシュ・エアウェイズが北京便を中国南方航空とのコードシェアでしか提供できていない現状と対照的である。

価格面でも差は歴然としている。オンライン航空券予約サイトSkyscannerによると、フランクフルト~上海間の同一期間の運賃は、中国国際航空が870ユーロ(1,015ドル)であるのに対し、ルフトハンザは1,008ユーロと約16%高い水準にある。

ビザ免除拡大も追い風に

航路の優位性に加え、中国政府が今年に入り欧州各国に対する査証免除措置を拡大していることも、中国系航空会社への需要を押し上げる要因となっている。観光・ビジネス双方で欧中間の人の往来が増加する見通しであり、座席供給の拡大は合理的な戦略といえる。

欧州勢も手をこまねいてはいない

欧州の航空各社は、燃料価格の変動に対するヘッジ(先物予約)を最大90%まで実施しており、短期的には原油高の直撃を回避している。フィンランドのフィンエアー(Finnair)はアジア向け平均運賃が需要増により15%上昇したと報告。ブリティッシュ・エアウェイズは中東便を削減する一方で、バンコクやシンガポール便を3月中旬に増便し、2026年冬季にはメルボルンやコロンボへの新路線も発表した。

ASMグローバル・ルート・デベロップメントの航空コンサルティング部門を率いるエドモンド・ローズ氏は「湾岸経由を避けたい旅客が欧州系に流れるが、その分、燃料コスト上昇を反映した高い運賃を支払うことになる」と分析する。

ただし、物流データ企業Kplerは、供給の混乱が続けば5月頃に欧州・アジア間のフライトキャンセルが発生する可能性があると警告している。

「一時的な機会」か「構造的シフト」か

BAA Partnersのバウアー氏は、中国勢の増便を単なる短期的な「機会主義的対応」と見るべきではないと警鐘を鳴らす。「これは短期的な混乱ではなく、欧州・アジア間の競争力そのものの再編である。欧州の航空会社は構造的に不利な立場に置かれ、中国の航空会社はすでに大きなアドバンテージを獲得した」と同氏は述べている。

ベトナム投資家・ビジネス関係者への示唆

本件は直接的にはベトナム発のニュースではないが、ベトナムの航空・観光セクターに関心を持つ投資家にとって、複数の重要な含意がある。

第一に、ベトナム航空各社への間接的影響である。ベトナム航空(HVN)やバンブー・エアウェイズ、ベトジェットエア(VJC)はいずれもロシア上空の通過が可能であり、中国勢と同様の構造的優位を享受し得る。特にベトジェットエアは欧州路線の拡充を視野に入れており、今回の地政学的変化は追い風となる可能性がある。

第二に、ベトナムのインバウンド観光への波及効果である。欧州からアジアへの旅客動線が変化する中、ハブとしてのハノイやホーチミンの存在感が高まる可能性がある。中国経由の乗り継ぎ需要が増えれば、ベトナムへの立ち寄り観光も増加し得る。ベトナム政府が進める観光ビザ免除策との相乗効果にも期待が持てる。

第三に、燃料コスト構造の変化がベトナムの航空株に与える影響である。原油価格高騰は航空セクター全体にとってネガティブだが、ロシア上空を通過できるかどうかで航空会社間のコスト格差が拡大する構図は、ベトナム勢にとって相対的な優位をもたらす。ホーチミン証券取引所に上場するVJC(ベトジェットエア)やHVN(ベトナム航空)の動向は引き続き注視すべきである。

第四に、2026年9月に見込まれるFTSE新興市場指数への格上げとの関連である。ベトナム市場が格上げされれば、海外機関投資家の資金流入が本格化する。航空・観光セクターはベトナム経済の成長ストーリーを体現する業種であり、地政学的な航空路線の再編がベトナム勢に有利に働く局面では、セクター全体の評価見直しにつながる可能性がある。

日系企業にとっても、ベトナム拠点と欧州拠点を結ぶ出張・物流ルートの再検討が必要になる場面が増えるだろう。中国系航空会社経由のルートが価格面で優位となる中、コスト最適化の観点から航空戦略を見直す企業が出てくることが予想される。


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出典: 元記事

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