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2025年第1四半期、地政学リスクの高まりによる金融市場の激しいボラティリティが、ウォール街の大手銀行に記録的な収益をもたらした。JPモルガン・チェース(JPMorgan Chase)、シティグループ(Citigroup)、ウェルズ・ファーゴ(Wells Fargo)の米大手3行だけで四半期利益は合計270億ドルを超え、トレーディング部門が主要なけん引役となった。この動きは、ベトナムを含む新興国市場への資金フローにも影響を及ぼし得るものである。
地政学リスクが生んだ「トレーディング特需」
第1四半期は、米国のベネズエラにおける軍事作戦やイランでの戦闘といった地政学的ショックが相次いだ。これらの出来事はコモディティ市場のボラティリティを急激に高め、投資家の金利見通しも大きく揺れ動いた。こうした環境は投資銀行にとって理想的な収益機会となる。市場が荒れるほど顧客の取引頻度が増加し、銀行は手数料収入を拡大できるためである。一方、原油価格の上昇は米国内の借入顧客に対してまだ深刻な圧力とはなっていない。
JPモルガン:トレーディング収益が過去最高を更新
最も際立った業績を上げたのがJPモルガン・チェースである。同行の純利益は前年同期比13%増の165億ドルとなり、アナリスト予想を約10億ドル上回った。特筆すべきはトレーディング部門で、債券・譲渡性預金・株式といった固定利付資産を中心に116億ドルの収益を計上し、これは同行史上最高額である。トレーディング手数料収入では競合のゴールドマン・サックス(Goldman Sachs)を23億ドルも上回り、業界リーダーとしての地位を一段と強固にした。なお、純利益が2024年をわずかに下回ったのは、前年にビザ(Visa)株売却による特別利益があったためである。
シティ:10年ぶり高水準の収益、リストラ完了が視野に
シティグループも好調であった。トレーディング収益は72億ドルと10年超ぶりの高水準を記録。第1四半期の純利益は前年同期比42%増の58億ドルに達し、アナリスト予想の49億ドルを大きく上回った。株価は2008年の世界金融危機以来の高値に上昇している。同行は長年にわたる大規模リストラを進めてきたが、今回の重要な利益目標の達成は、その再建プロセスが最終段階に入りつつあることを示すものである。
ウェルズ・ファーゴ:貸出残高1兆ドル突破、消費への懸念も
リテールバンキングや商業銀行業務への依存度が高いウェルズ・ファーゴは、純利益が前年同期比7%増の53億ドルとなり、こちらも予想を上回った。注目すべきは、貸出残高が第1四半期に1兆ドルの大台を突破した点である。これは、同行に対して課されていた資産上限規制(バランスシートの規模を制限する罰則措置)が撤廃されてから1年足らずでの達成であり、重要なマイルストーンとなった。
ただし、マイク・サントマシモ(Mike Santomassimo)最高財務責任者(CFO)は、イラン戦闘の影響による原油価格上昇が消費者支出に影響を及ぼし始めていると警告した。同行のリテール顧客はガソリン支出が戦闘開始前と比べて25%〜30%増加しているという。もっとも、消費トレンド全体に顕著な変化はまだ見られていない。
JPモルガンのジェイミー・ダイモン(Jamie Dimon)CEOも4月14日の発言で、米国経済は複雑化するリスクにもかかわらず「依然として持ちこたえている」との見方を示した。同氏はエネルギーコストが一般的な消費者の総支出に占める割合は約3%に過ぎないと指摘し、「ガソリンは消費全体に占める比率がかなり小さい。低所得層への影響はより大きいが、彼らも雇用と収入を維持している」と述べた。
なお、米大手4行(Big 4)のもう1行であるバンク・オブ・アメリカ(Bank of America)は米国時間4月14日に第1四半期決算を発表予定で、上記の合計270億ドル超には含まれていない。
投資家・ビジネス視点の考察
ウォール街大手銀行の記録的な好業績は、いくつかの経路でベトナム市場にも影響を与え得る。
①グローバル資金フローへの影響:米大手銀行のトレーディング収益拡大はボラティリティの高さを反映しているが、同時にリスク選好が完全に後退していないことも意味する。地政学リスクに伴う「質への逃避」が一巡すれば、高成長が見込まれるベトナムのようなフロンティア・新興市場に資金が再流入する余地がある。特に2026年9月に見込まれるFTSE新興市場指数への格上げが実現すれば、パッシブ資金の流入が加速するタイミングと重なる可能性がある。
②原油高の影響:イラン情勢による原油価格上昇は、ベトナムにとっても無視できない。ベトナムはエネルギー純輸入国に転じつつあり、原油高は貿易収支やインフレ率に直接影響する。ベトナム中央銀行(SBV)の金融政策運営にも制約を加え、ベトナム株式市場のバリュエーションに下押し圧力をかける可能性がある。
③ベトナムの銀行セクターへの示唆:米銀のトレーディング収益爆発は、市場のボラティリティを収益に変換できる高度なインフラと人材の重要性を改めて示した。ベトナムの銀行セクターは依然として金利収入への依存度が高く、非金利収入の多様化は中長期的な課題である。VCB(ベトコムバンク)やTCB(テクコムバンク)など証券・投資銀行機能の強化を進める銘柄は、こうしたグローバルトレンドの恩恵を将来的に取り込める可能性がある。
④日本企業への影響:ベトナムに進出している日系製造業にとって、原油高に伴う物流コスト・原材料コストの上昇は短期的なリスク要因となる。一方、米国経済が底堅さを維持している限り、ベトナムからの対米輸出需要は堅調に推移すると見込まれ、過度な悲観は不要であろう。
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