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ベトナム最大級の旅行見本市「VITM ハノイ 2026」が4日間の日程で閉幕し、旅行商品の総売上が1,950億ドンを超える盛況となった。中東情勢の緊張や燃料価格の上昇にもかかわらず、4月30日〜5月1日の連休に向けた海外ツアー予約は前年同期比10〜15%増を記録。中国行きツアーを筆頭に、近距離アジア圏への旅行需要がベトナム人消費者の間で急拡大している。
VITM 2026の全体像——約4,500社が参加、2万5,000件超の商談
ベトナム国際旅行博覧会(VITM)2026には、国内外から約4,500社・回の旅行関連企業が来場・出展した。会期中に行われた商談は2万5,000件以上、提供されたツアー・旅行商品は1万5,000件に上り、旅行商品の販売額は1,950億ドンを突破した。ベトナムの旅行市場の力強さを改めて示すイベントとなった。
海外ツアーが絶好調——中国が最大の「勝ち組」
今回のVITMで最も注目されたのは、連休向けアウトバウンド(海外旅行)需要の強さである。サイゴンツーリスト(Saigontourist)ハノイ支店の副支店長グエン・ホアイ・トゥ氏によれば、燃料価格の上昇懸念はツアー価格に大きな影響を与えていない。これは旅行各社が2025年末の段階で航空会社と価格交渉を済ませ、2026年第2四半期までの商品設計を完了していたためである。一方、現時点の航空券単体価格は前年同期比30%上昇しており、結果としてパッケージツアーやコンボ商品の価格優位性が際立ち、予約増につながっている。
市場別では、中国、日本、韓国がいずれも前年同期比10〜15%の予約増を記録。台湾、香港、シンガポールも人気を集めた。Du Lich Viet(ベトナム旅行社)のチュオン・トゥイ・チャウ氏は、「中国ツアーが最も人気が高く、5日4泊のツアーが1,200万ドンからと手頃。団体ビザの利便性も追い風だ」と語った。北京〜上海〜杭州を巡る高級路線(約2,500万ドン)も依然として人気を維持しているほか、桂林(クイリン)、内モンゴル、新疆ウイグル自治区といった新路線も登場している。
ベトトラベル——ブースだけで売上300億ドン超
ベトナム最大手旅行会社の一つであるベトトラベル(Vietravel)は、VITMのブースだけで1,800人の登録を獲得し、売上は300億ドンを超えた。内訳は国内ツアーが45%、海外ツアーが55%と、海外旅行がわずかに上回った。同社マーケティング担当ディレクターのグエン・グエット・ヴァン・カイン氏は「旅行者は有名だからという理由だけで目的地を選ぶのではなく、休暇の長さや目的に合った商品を慎重に選ぶようになっている。現時点で両連休(フン王命日・4月30日〜5月1日)のツアー充足率は70%を超えている」と説明した。
フン王命日(雄王忌)は旧暦3月10日にあたるベトナムの祝日で、短期の国内旅行が好まれる傾向にある。一方、4月30日(南部解放記念日)と5月1日(メーデー)の連休はまとまった休暇が取りやすく、海外旅行へのシフトが顕著となっている。
「ノーショッピング」ツアーと体験重視の新潮流
ハノツアーズ(Hanotours)のホー・スアン・フック総社長は、中国ツアーがすでに満席であることを明かしつつ、注目すべきトレンドとして「ノーショッピング(No Shopping)」ツアーの台頭を挙げた。従来の中国ツアーでは土産物店への立ち寄りが組み込まれることが多かったが、ベトナム人旅行者の間で「買い物時間を削り、文化体験や観光の時間を増やしたい」という志向が強まっている。
この傾向はVITMに先立って開催されたホーチミン市観光フェア2026でも確認されており、ベストプライストラベル(BestPrice Travel)は北京〜上海〜杭州〜西烏鎮や富士山〜横浜〜東京といった「体験特化型・ノーショッピング」路線を前面に打ち出して注目を集めた。ウェルネス(健康・癒やし)やパーソナライズ(個人設計型)の商品も増加傾向にある。
コンボ商品の急成長と「マイクロホリデー」
ビナグループトラベル(VinaGroup Travel)の副総社長グエン・ミン・マン氏は、燃料価格高騰が単にツアー価格を押し上げるだけでなく、業界の商品構造そのものを変革していると指摘した。従来型の団体ツアーは、コンボ(航空券+宿泊セット)、フリー&イージー、オーダーメイドツアーといった柔軟な商品に取って代わられつつある。消費者の行動も「多くの場所を回る」から「一カ所で深く体験する」へとシフトしている。
ベトラックスツアー(Vietluxtour)のマーケティング担当ディレクター、チャン・ティ・バオ・トゥ氏も、コンボ商品の需要増を認め、背景として①旅行者の個人化・自由度へのニーズ、②交通費上昇に伴う予算最適化意識の2点を挙げた。同社のVITMブースにおける短期海外ツアー売上は前年比15%増を達成した。
さらに、東南アジア最大級の旅行プラットフォームであるトラベロカ(Traveloka)の最新調査では、4月30日〜5月1日連休に向けた「マイクロホリデー(短期旅行)」の計画が前年比約40%増加していることが判明。旅行者は「短く、濃く、計画的に」旅をする傾向を強めており、移動距離よりも体験の質を重視する姿勢が鮮明になっている。
ベトコムバンクがAlipay+と提携——海外QR決済を50カ国以上で展開
アウトバウンド旅行の活況を支えるインフラ面でも動きがあった。ベトコムバンク(Vietcombank、ベトナム外商銀行)は、アリペイプラス(Alipay+)と提携し、個人向け海外QRコード決済サービスを開始すると発表した。VCB Digibankアプリを通じて中国、韓国、シンガポール、マレーシアを含む50以上の国・地域で決済が可能になる。ベトナム人海外旅行者の決済利便性を大幅に高める施策であり、観光消費のさらなる拡大が期待される。
投資家・ビジネス視点の考察
今回のVITM 2026の盛況は、ベトナムの内需、とりわけ中間層の旅行消費が構造的に拡大していることを裏付けるものである。以下の点が投資家やビジネスパーソンにとって重要となる。
①旅行・航空関連銘柄への追い風:アウトバウンド需要の拡大はベトジェットエア(VJC)やベトナム航空(HVN)の国際線搭乗率改善に直結する。航空券単体が前年比30%上昇している環境は、航空会社の収益性を押し上げる要因となる。また、上場旅行会社やホテル運営企業にも恩恵が及ぶ。
②日本も人気目的地の一角:日本は中国・韓国と並ぶ人気渡航先として言及されており、ベトナムからのインバウンド需要は日本の観光業にとっても重要性を増している。日本の地方自治体や観光関連企業にとって、ベトナム市場への積極的なマーケティングが一層有効になるだろう。
③フィンテック・決済分野の拡大:ベトコムバンクとAlipay+の提携に象徴されるように、クロスボーダー決済インフラの整備が進んでいる。これはベトナムのデジタル金融エコシステムの成熟を示すものであり、2026年9月に決定が見込まれるFTSE新興市場指数への格上げ議論においても、金融インフラの高度化はポジティブな材料となり得る。
④消費行動の質的変化:「ノーショッピング」「体験重視」「マイクロホリデー」といったトレンドは、ベトナムの消費者が単なる価格志向から価値志向へと移行していることを示す。中間層の成熟は、旅行業に限らず小売・サービス業全般における高付加価値化の追い風となるだろう。
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