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米国のドナルド・トランプ大統領が、2025年5月に英国と締結した貿易協定について「変更、さらには破棄もあり得る」と警告した。背景にはイラン情勢をめぐる米英間の深刻な対立がある。米国の通商政策が同盟国にさえ容赦なく揺さぶりをかける現状は、ベトナムを含む対米貿易依存度の高い国々にとっても他人事ではない。
トランプ発言の全容―「彼らは我々が必要な時にいなかった」
英Sky Newsの電話インタビューに応じたトランプ大統領は、キア・スターマー英首相(2024年就任の労働党党首)との間で締結した貿易協定について、「我々は必要以上に良い条件を与えた。だが、あの協定はいつでも変更できる」と明言した。協定には英国の自動車産業、鉄鋼・アルミニウム分野への関税緩和措置が含まれており、スターマー政権にとって最大の経済的成果の一つとされてきた。
トランプ氏が問題視しているのは、米国がイランに対する軍事作戦を展開する中、英国が参戦を拒否したことである。「彼らは我々が最も支援を必要としていた時にそこにいなかった。今もそうだ」と不満を露わにした。
スターマー首相は強硬に拒否
4月15日の英下院での首相質疑において、スターマー首相は「これは英国の戦争ではない。我が国を紛争に巻き込ませるつもりはない」と断言。「多くの圧力が別の方向に向かわせようとした。しかし私は立場を変えない。譲歩しない」と述べた。
一方、自由民主党のエド・デイヴィー党首はトランプ氏を批判し、今月末に予定されるチャールズ国王の訪米を中止するよう求めた。これに対し、保守党のアンドリュー・グリフィス議員は「好むと好まざるとにかかわらず、米国は国別で英国最大の貿易相手国である。貿易障壁が高まれば、英国の企業と労働者が代償を払うことになる」と現実路線を訴えた。
米英財務相会談でも溝は埋まらず
4月15日にワシントンで行われたレイチェル・リーブス英財務相とスコット・ベッセント米財務長官の会談でも、対立は鮮明であった。リーブス氏は「出口の見えない戦争に突入した米国に非常に失望している」と述べ、軍事介入が企業や家計に大きな負担を与えていると批判した。
一方、ベッセント氏はIMF(国際通貨基金)の会合で「核兵器がロンドンを直撃した場合、世界のGDPはどうなるか考えてほしい。短期的な予測より長期的な安全保障の方が重要だ」と反論し、イラン核武装阻止のための短期的コストは許容すべきとの立場を示した。
協定の中身と交渉の現状
2025年5月に締結された米英貿易協定は、当時ワシントンが「米国の農産物輸出にとって英国市場への大幅なアクセス拡大」と称賛したものであり、米国側の農家・牧場主・製造業者に50億ドル規模の新たな輸出機会を創出するとされた。英国側にとっては自動車・鉄鋼・アルミの関税緩和が大きなメリットであった。
フィナンシャル・タイムズによれば、米英関係が緊張する中でも、貿易交渉自体はここ数週間も継続しており、今月には医薬品と薬価メカニズムに関する追加合意も署名されている。完全な決裂には至っていないものの、トランプ氏の発言が交渉環境を一段と不透明にしていることは間違いない。
ベトナム投資家・ビジネス視点での考察
本件は直接的にはベトナムに関するニュースではないが、以下の点でベトナム経済・株式市場への間接的影響が無視できない。
①「ディール外交」のリスクが改めて浮き彫りに。トランプ政権は締結済みの協定さえも政治的レバレッジとして利用する姿勢を明確にした。ベトナムは米国との貿易黒字が大きく、過去にも為替操作国認定の圧力を受けた経緯がある。米英間ですらこの状況であることを踏まえると、ベトナムに対する通商圧力が再び強まるシナリオは常に意識しておく必要がある。
②サプライチェーン再編への波及。米英間の貿易障壁が高まれば、英国企業はアジアを含む他地域での調達・生産拠点の見直しを加速させる可能性がある。ベトナムは製造業の受け皿として恩恵を受ける余地があり、特に鉄鋼・アルミ関連やアパレル、電子部品分野での受注増が考えられる。
③地政学リスクと原油価格。イラン情勢の悪化は原油価格の高止まりにつながり、ベトナムのペトロベトナムガス(GAS)やペトロベトナム(PVD)など石油・ガス関連銘柄にとっては追い風となる一方、輸入コスト増加を通じてインフレ圧力が高まり、ベトナム中央銀行(SBV)の金融政策に影響を及ぼす可能性がある。
④FTSE新興市場指数への格上げとの関連。2026年9月に決定が見込まれるベトナムのFTSE新興市場指数への格上げは、世界的なリスクオフ局面では投資家の判断が慎重になる要素でもある。米英対立に端を発するグローバルな不確実性の高まりは、格上げプロセスそのものには影響しないものの、格上げ後の資金流入規模を左右する市場環境に影を落としかねない。
日本企業にとっても、英国経由で米国市場にアクセスしていた製造業がサプライチェーンの見直しを迫られる可能性があり、その代替拠点としてベトナムが選択肢に上がる展開は十分にあり得る。ベトナム進出済みの日系企業にとっては、こうした地政学的変動を「漁夫の利」として取り込む戦略的視点が求められる局面である。
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出典: 元記事












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