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ベトナムの中堅証券会社SHS(サイゴン・ハノイ証券、正式名称:Công ty Cổ phần Chứng khoán Sài Gòn – Hà Nội)のドー・クアン・ヴィン(Đỗ Quang Vinh)会長が、同社の中期経営ビジョンとして「2025年中に仲介(ブローカレッジ)市場シェアでトップ10入りを果たし、2030年までにトップ5に食い込む」という野心的な目標を打ち出した。ベトナム株式市場が構造的な転換期を迎えるなか、証券業界の勢力図がどう変わるのか注目が集まっている。
SHSとドー・クアン・ヴィン会長とは何者か
SHSはホーチミン証券取引所(HOSE)に上場する証券会社で、ティッカーは「SHS」。もともとベトナム北部を中心に顧客基盤を持ち、ハノイ証券取引所(HNX)の銘柄仲介では一定の存在感を示してきた。しかし、VNDirect(VND)、SSI証券(SSI)、VPBankSecurities、Techcom Securities(TCBS)といった大手と比較すると、HOSE市場における仲介シェアでは中位にとどまっていた。
会長のドー・クアン・ヴィン氏は、ベトナム最大の民間銀行の一つであるSHB(サイゴン・ハノイ商業銀行)を率いるドー・クアン・ヒエン(Đỗ Quang Hiển)会長の子息として知られる。SHBグループとの資本関係もあり、銀行連携による顧客獲得はSHSの競争優位の一つとされている。若い世代の経営者がベトナム金融業界のトップに就く事例として、ヴィン氏の動向はメディアでもたびたび取り上げられてきた。
2025年トップ10、2030年トップ5——目標の中身
ヴィン会長が示した目標は二段構えである。まず短期的には、2025年内に仲介市場シェアでトップ10の証券会社に入ること。そして中期的には、2030年までにトップ5へ躍進することだ。
ベトナムの証券仲介市場は競争が激しい。2024年時点で、仲介シェア上位にはVPS証券、SSI証券、VNDirect、HSC(ホーチミン証券)、Mirae Asset(韓国系)、TCBS(テクコムバンク証券)などが名を連ね、上位5社だけで市場全体のシェアの過半を握る寡占構造になっている。SHSがこの壁を突破するには、IT投資、手数料戦略、商品ラインアップの拡充、そして何より顧客基盤の大幅な拡大が不可欠となる。
近年、ベトナムではスマートフォンを活用したオンライン取引の比率が急伸しており、テクノロジー投資の巧拙が証券会社の命運を分ける時代に突入している。VPS証券がゼロ手数料戦略で急速にシェアを伸ばした事例は象徴的であり、SHSもデジタルプラットフォームの強化を成長の柱に据えているとみられる。
ベトナム証券業界を取り巻く追い風
SHSの強気な目標設定には、ベトナム株式市場そのもののパイ拡大という追い風がある。ベトナムの証券口座開設数は2024年末時点で約900万口座を突破し、人口比ではまだ9%程度にとどまる。これは隣国タイ(約15%)や韓国(30%超)と比較してもまだ大きな成長余地がある。個人投資家の裾野が広がれば、仲介業務の総量自体が増えるため、後発組にもシェア拡大の余地が生まれる構図だ。
また、ベトナム政府が進めるKRXシステム(韓国取引所技術をベースにした新取引システム)の導入は、取引の効率化や新商品(空売り、信用取引の拡大など)の導入を後押しし、市場全体の流動性向上に寄与する。証券会社にとっては事業機会の拡大を意味する。
投資家・ビジネス視点の考察
SHS株への影響:ヴィン会長の明確な中期目標提示は、SHS株にとってポジティブなシグナルである。ただし、トップ5入りという目標はかなりハードルが高く、実現のためには増資や戦略的提携、IT投資の加速が求められるだろう。目標達成に向けた具体的なロードマップや四半期ごとの進捗が株価評価のカギを握る。
ベトナム証券セクター全体への示唆:SHSの攻勢は、すでに激化している証券会社間の競争をさらに加速させる可能性がある。手数料引き下げ競争やサービスの差別化が進むことで、投資家にとっては取引環境の改善というメリットが生まれる。一方で、体力のない小規模証券会社にとっては淘汰圧力が強まる展開も想定される。
FTSE新興市場指数への格上げとの関連:2026年9月に決定が見込まれるベトナムのFTSE新興市場指数への格上げが実現すれば、海外マネーの大量流入が予想される。その際、仲介シェアの大きい証券会社ほど恩恵を受けやすく、SHSが目標通りにシェアを伸ばしていれば、格上げの果実を享受できる立場となる。格上げを見据えた証券会社の「陣取り合戦」は、今まさに始まっているとも言える。
日本企業との接点:ベトナム市場への日本人投資家のアクセスは、SBI証券やマネックス証券を通じた間接的なルートが主流だが、現地証券会社の顧客サービス向上は、将来的に日系金融機関との提携の可能性を広げる。SHBグループの銀行ネットワークを活用した法人サービスは、ベトナム進出日本企業にとっても関心を引くテーマとなりうる。
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