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ベトナム株式市場を代表する外国人機関投資家であるDragon Capital(ドラゴン・キャピタル)が、石油掘削サービス最大手PVドリリング(銘柄コード:PVD、ホーチミン証券取引所上場)の大量株主(持株比率5%以上)から外れた。傘下ファンドによる20万株の売却が引き金となったが、一方で証券大手VCSCはPVDに対し目標株価を13%引き上げ「買い」推奨を維持しており、市場の見方は分かれている。
Dragon Capitalの売却と大量株主離脱の経緯
Dragon Capitalの報告によると、同グループに属するHanoi Investment Holdings Limitedが2025年4月10日の取引でPVD株20万株を売却した。この結果、Dragon Capital関連の投資家グループ全体の保有株数は約2,780万株(持株比率5%超)から約2,760万株(同4.97%)に減少し、ベトナムの証券法上「大量株主」の基準である5%を下回ることとなった。
4月10日のPVD終値3万2,850ドン/株で概算すると、今回の売却によりDragon Capitalは約66億ドンを回収したとみられる。Dragon Capitalはホーチミン市に本拠を置くベトナム最大級の外資系運用会社であり、同社の投資動向はベトナム株式市場全体のセンチメントに影響を与えることが多い。今回の「5%割れ」は形式的な閾値の問題ではあるものの、市場参加者の間では注目材料として受け止められている。
VCSCは目標株価を13%引き上げ、「買い」を維持
一方、ベトナム大手証券会社のVCSC(ベトキャップ証券)は直近でPVDの目標株価を4万300ドン/株へ13%引き上げ、投資判断「買い」を継続した。楽観シナリオでは目標株価は4万3,600ドン/株に達するとしている。
VCSCが目標株価を引き上げた背景には、2026〜2030年の連結税引後利益(少数株主持分控除後)の予想を平均12%上方修正したことがある。各年度の修正幅は、2026年が±0%、2027年が+7%、2028年が+16%、2029年が+15%、2030年が+14%である。主な根拠は以下の4点である。
- ジャッキアップリグ(自昇式掘削装置)の追加取得:PVDがPVD XII(出資比率51%)を新たに取得し、2028年から収益に貢献するとの前提
- リグ日額賃料の上昇:2026〜2030年の平均ジャッキアップリグ賃料を+0.5%と想定
- 坑井関連サービスの増収とコスト削減:2025年実績をベースに、営業キャッシュコストが3%低下
- 関連会社からの利益増:年間390万USD増(2026〜2030年)。ベトナム国内の探鉱・開発(E&P)活動の加速を反映
2026年は利益52%増を予想、2028年には2014年のピークに接近
VCSCは2026年のコア税引後利益(少数株主持分控除後)が前年比52%増になると予測している。その原動力は、ジャッキアップリグの稼働率回復、日額賃料の1.2%上昇、新リグPVD VIIIの稼働開始、坑井サービス粗利益の前年比35%増、関連会社利益の同15%増である。
さらに2026〜2028年の利益CAGR(年平均成長率)は57%に達する見通しで、日額賃料の年7%上昇、PVD IX(2026年4月稼働開始)およびPVD X(2028年稼働開始)の貢献、坑井サービスの回復が寄与する。VCSCは2028年に関連会社利益が2014年のピーク水準に接近すると見込んでいる。
現在のPVDの2026年予想PER(株価収益率)は16倍で、過去の中央値である32倍を大きく下回る。PEG(PER÷利益成長率)は0.3倍と、成長性を加味すれば割安な水準にある。
PVDの2025年実績と2026年計画
PVD(正式名称:PVドリリング総合株式会社、ベトナム国営石油ガスグループ・ペトロベトナム傘下)は、2025年通期で総売上高1兆1,553億ドンを達成した。これは株主総会で承認された計画値7,200億ドンを4,353億ドン(60%)上回り、前年実績比でも1,987億ドン(21%)の増収である。税引後利益は1,052億ドンで、計画値530億ドンの約2倍、前年比354億ドン(51%)増となった。
好業績の主因は、自昇式リグ・半潜水式リグおよびチャーターリグの高稼働率に加え、2025年のベトナム国内石油掘削市場の活況により坑井技術サービスが大きく伸びたことである。
2026年の事業計画は、総売上高1兆1,185億ドン、税引後利益800億ドン(2025年実績からは減益)、自己資本を1兆7,098億ドンから1兆7,851億ドンへ、総資産を2兆8,310億ドンから2兆8,714億ドンへそれぞれ拡大する方針である。また、株式配当による66.9%の資本金増強も予定されている。年次株主総会はホーチミン市のレックスホテル・サイゴン(グエンフエ通り141番地)で開催される。
投資家・ビジネス視点の考察
Dragon Capitalの大量株主離脱は、保有比率がわずか0.03ポイント低下しただけであり、大規模な見切り売りとは性質が異なる。ポートフォリオのリバランスや短期的な資金需要の可能性もあり、これだけをもってPVDの先行きに悲観的な見方を持つのは早計である。
むしろ注目すべきは、VCSCが示した中期的な成長シナリオである。ベトナム政府はエネルギー安全保障の観点から国内E&P活動の拡大を推進しており、PVDはその直接的な恩恵を受ける立場にある。PEG 0.3倍という指標は、グローバルな石油サービス銘柄と比較しても際立って割安であり、成長率が実現すれば大きなリレーティングの余地がある。
一方、リスクとしてはリグ拡張の遅延、原油価格や日額賃料の下振れが挙げられる。2026年計画で税引後利益が2025年実績を下回る保守的な数字を掲げている点も、経営陣の慎重姿勢を示している。
日本の投資家にとっては、2026年9月に判断が見込まれるFTSE新興市場指数へのベトナム格上げも重要な文脈である。格上げが実現すれば、PVDのような時価総額が一定規模ある銘柄にはグローバルなパッシブ資金の流入が期待でき、外国人投資家の保有比率変動は今後さらに注目度を増すことになるだろう。
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