ハノイ在住13年の現地投資家による、より深い企業分析・投資戦略は👉 メンバーシップで公開中
米国が、レアアース(希土類)の中国依存を大幅に引き下げるべく、アフリカでの鉱山開発を加速させるとともに、EU(欧州連合)やオーストラリアとの戦略的パートナーシップを拡大している。電気自動車(EV)、半導体、防衛装備など先端産業の根幹を支えるレアアースを巡る覇権争いは、ベトナムを含むアジア各国の資源戦略にも大きな影響を及ぼす可能性がある。
レアアースとは何か——なぜ「戦略物資」なのか
レアアースとは、スカンジウムやイットリウムを含むランタノイド系17元素の総称である。スマートフォンのバイブレーションモーター、風力発電タービンの永久磁石、戦闘機のレーダー部品、EVの駆動モーターなど、現代の先端技術に不可欠な素材だ。埋蔵量自体は世界各地に存在するものの、採掘から精錬・分離までの一貫したサプライチェーンを持つ国は限られており、現在は中国が世界の精錬能力の約60〜70%を握るとされる。中国政府はこれまでも輸出規制をちらつかせ、外交カードとして活用してきた経緯がある。
米国の新戦略——アフリカ資源開発と多国間連携
今回報じられた動きによれば、米国はアフリカ大陸におけるレアアース鉱山の開発を本格化させている。アフリカには未開発の鉱床が多く、タンザニアや南アフリカ、マダガスカルなどが有望な産地として注目されてきた。米国は資金支援や技術移転を通じて現地での採掘・精錬インフラを整備し、中国を介さないサプライチェーンの構築を急いでいる。
さらに、EUおよびオーストラリアとの戦略的協力も拡大している。EUは2023年に「重要原材料法(Critical Raw Materials Act)」を成立させ、域内でのレアアース調達目標を設定済みだ。オーストラリアはライナス・レアアーシズ(Lynas Rare Earths)を筆頭に、中国以外では最大級のレアアース精錬能力を有しており、米国との合弁事業も進展している。こうした「脱・中国一極集中」の多国間フレームワークは、サプライチェーンの冗長性(レジリエンス)を高める狙いがある。
中国の対抗措置と米中対立の深層
中国はこうした動きに対し、レアアース関連の輸出管理をさらに厳格化する姿勢を見せている。2023年以降、ガリウム・ゲルマニウムの輸出規制を発動したほか、レアアース精錬技術の海外移転にも制限を設けた。米中のテクノロジー覇権争いにおいて、レアアースは半導体とならぶ「チョークポイント(急所)」となっており、両国の攻防は今後さらに激化する見通しである。
ベトナムの位置づけ——世界第2位の埋蔵量を持つ資源大国
ここで注目すべきは、ベトナムが世界第2位とも言われるレアアース埋蔵量を有している点である。米国地質調査所(USGS)の推定では、ベトナムのレアアース埋蔵量は約2,200万トンとされ、中国に次ぐ規模だ。主要鉱床は北西部のライチャウ省(Lai Châu)やイエンバイ省(Yên Bái)などに分布する。
ベトナム政府はレアアースを「戦略的鉱物資源」と位置づけ、長年にわたり慎重な開発方針をとってきた。しかし、米中対立の激化に伴い、ベトナムのレアアースに対する国際的な関心は急速に高まっている。2023年にはバイデン政権(当時)がベトナムとの包括的戦略パートナーシップを締結し、レアアースを含む重要鉱物のサプライチェーン協力が合意事項に盛り込まれた。日本もJOGMEC(独立行政法人エネルギー・金属鉱物資源機構)を通じてベトナムのレアアース開発に関与しており、官民を挙げた連携が進んでいる。
ベトナム国内の関連企業と課題
ベトナム国内では、国営ベトナム鉱物総公社(VIMICO、Vietnam National Mining and Mineral Corporation)がレアアース開発の中核を担っている。また、ドンパオ(Đông Pao)鉱山プロジェクトなど複数の開発案件が進行中だが、精錬・分離技術の不足、環境規制への対応、インフラ整備の遅れなどが課題として残る。加工なしの鉱石輸出では付加価値が低いため、ベトナム政府は国内での一次加工能力の確立を優先課題としている。
投資家・ビジネス視点の考察
ベトナム株式市場への影響:米国が「脱中国」のレアアース調達先を多角化する流れは、ベトナムの鉱業セクターにとって中長期的な追い風となる。VIMICO関連企業や、レアアース加工に参入する可能性のある素材企業の動向は注視すべきである。ただし、鉱業関連銘柄はホーチミン証券取引所(HOSE)やハノイ証券取引所(HNX)において時価総額が小さく流動性も限られるため、投資判断には慎重さが求められる。
日本企業への影響:日本はレアアースの大口需要国であり、中国依存リスクの低減は国策レベルの課題である。住友商事、豊田通商、JOGMECなどがベトナムでのレアアース開発に関わっており、米国主導の多国間枠組みにベトナムが組み込まれることで、日本企業にとっても調達先の分散が進む好機となる。ベトナム進出の日系製造業にとっても、将来的にレアアース素材の現地調達が可能になれば、サプライチェーンの安定性が大幅に向上する。
FTSE新興市場指数格上げとの関連:2026年9月に判定が見込まれるFTSE新興市場指数へのベトナム格上げは、海外資金の大量流入を呼び込む契機となる。レアアースを含む重要鉱物資源の存在は、ベトナムの「投資先としての戦略的価値」を裏付ける材料の一つであり、格上げ後のベトナム市場全体の再評価において、資源セクターの位置づけが見直される可能性がある。
マクロ的な位置づけ:ベトナムは「チャイナ・プラスワン」の最大受益国として製造業の集積が進んでいるが、レアアースという上流資源を有する点は、単なる「工場」ではなく「資源・製造複合型」の経済としての将来像を描く上で極めて重要である。米国の脱中国戦略が加速すればするほど、ベトナムの地政学的・経済的な存在感は増していくだろう。
いかがでしたでしょうか。今回のニュースについて、皆さんのご意見もぜひお聞かせください。コメント欄や@viettechtaroのDMでお待ちしています。
この記事が参考になったら、ぜひXでシェアしていただけると嬉しいです。より多くの方にベトナム投資の魅力を伝えたいと思っています。
ハノイ在住13年日本語で毎日配信。
✅ 個別銘柄の詳細分析 ✅ FTSE格上げ関連速報 ✅ 現地だからわかるリアルタイム情報
👉 月額980円でメンバーシップに参加する
出典: 元記事












コメント