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ベトナム最大手の証券会社であるSSI証券(ホーチミン証券取引所:SSI)が2026年第1四半期の業績を発表した。連結売上高は3,295億ドン、税引前利益は1,593億ドンと、前年同期比で大幅な増収増益を達成。さらに約6,227億ドン規模の増資も完了し、資本基盤を一段と強化した格好である。ベトナム株式市場が2026年9月のFTSE新興市場指数格上げ判定を控える中、業界リーダーの好決算は市場全体の追い風となり得る。
業績の全体像——単体ベースでは利益44%増
SSI証券の親会社単体ベースでは、売上高が3,112億ドン(前年同期比46%増)、税引前利益が1,461億ドン(同44%増)と力強い成長を示した。2026年3月31日時点の総資産は9兆1,893億ドン、自己資本は3兆8,531億ドンで、2025年末比24%の増加となっている。この自己資本の急増は、第1四半期中に完了した既存株主向けの約4億1,518万株の新株発行(調達額6,227億ドン)によるものである。直近4四半期累計のROE(自己資本利益率)は13.3%、ROA(総資産利益率)は4.5%と、資本効率の高さも維持している。
証券サービス部門——仲介シェアが11.14%に拡大
同社の収益の柱である証券サービス部門は売上高1,682億ドンを計上し、全体の約54%を占めた。中でも株式仲介・カストディ・投資コンサルティング業務の売上高は633億ドンと前年同期比93%増という驚異的な伸びを記録した。ホーチミン証券取引所(HoSE)における株式・ETF・カバードワラントの仲介シェアは11.14%に到達し、前年同期の9.93%から大きく躍進している。
デリバティブ(先物)仲介においても市場シェアは3.11%(2025年第1四半期)から7.2%へと倍以上に拡大した。SSIは取引プラットフォームの改善や投資コンサルティングサービスの充実、ユーザー体験の向上を推進しており、これが現物・デリバティブ双方での成長ドライバーとなっている。
マージンローン——リスク管理を徹底しつつ高収益
信用取引(マージンローン)および株式売却代金の前払い業務の売上高は約1,050億ドンで、前年同期比67%増となった。一方、マージンローンおよび前払い残高は3兆6,928億ドンと年初比で5%の微減。市場のボラティリティが高まる中、SSIは意図的に残高を安全な水準に維持し、厳格なリスク管理を実施した結果、不良債権は発生していないとしている。この点は、急拡大を志向する一部の中小証券会社とは対照的であり、業界リーダーとしての安定感を示すものである。
投資部門・資金調達部門も堅調
自己投資部門の売上高は1,226億ドン(前年同期比18%増)で、全体の約39%を占めた。投資ポートフォリオは信用機関が発行する固定利付資産を中心に構成されており、マクロ政策や金利動向に応じて規模を柔軟に調整しているという。
資金調達・金融ビジネス部門の売上高は183億ドンで、前四半期比50%増を記録した。金利環境が大きく変動する中、SSIは資金調達チャネルの多様化を進め、事業ニーズへの対応力を高めている。
投資銀行部門——大型案件で存在感
投資銀行(IB)部門では、第1四半期中にいくつかの大型資本市場取引でアドバイザリーおよび販売代理を務めた。主な案件としては、BIDV(ベトナム投資開発銀行、国内最大級の国有商業銀行)向けの1兆ドン超規模の第三者割当増資アドバイザリー、およびコテコンス(Coteccons、ベトナム大手建設会社)の1,400億ドン規模の公募社債発行アドバイザリーが挙げられる。2026年通年でも大型案件の受託を予定しており、資本市場における同社のプレゼンス向上が見込まれる。
なお、SSI証券は2026年4月23日(木)午後に年次株主総会を開催する予定である。
投資家・ビジネス視点の考察
今回のSSIの好決算は、ベトナム株式市場全体の活況を映し出すものである。仲介シェアの拡大と取引高の増加は、個人投資家の市場参加がさらに進んでいることを示唆しており、市場の流動性改善というFTSE格上げの重要条件の一つとも合致する。2026年9月に予定されるFTSE新興市場指数への格上げ最終判定に向けて、SSIのような大手証券会社の業績拡大は、海外機関投資家に対するベトナム市場の「投資インフラの成熟度」を示すシグナルとなる。
増資による自己資本の大幅強化(24%増)は、今後のマージンローン拡大余地やIB案件の引受能力向上に直結する。ベトナムの証券会社は自己資本の規模がマージンローン上限に直結するため、この増資はSSIの中期的な収益成長の土台と位置づけられる。
日本企業の視点では、SSIが大型のIB案件を次々と手掛けている点が注目に値する。ベトナムでの資金調達やM&Aを検討する日系企業にとって、SSIは有力なパートナー候補の一つである。また、SSI株そのものがベトナム証券セクターへの投資における中核銘柄であり、FTSE格上げが実現すれば海外資金の流入による恩恵を最も受ける銘柄群の一角といえるだろう。
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