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ベトナムのゴー・バン・トゥアン財務大臣が、国内の投資プロジェクトや土地関連案件に約3.3兆兆ドン(3,300万億ドン)もの資金が滞留しており、約20万ヘクタールの土地が有効活用されていない現状を明らかにした。同大臣は、これらの「凍結資産」を解放し、経済成長の原動力に転換する必要性を強く訴えている。
財務大臣が示した衝撃的な数字
ゴー・バン・トゥアン財務大臣の発言によれば、現在ベトナム国内では約20万ヘクタールの土地と、3.3兆兆ドンに上る資金が各種投資プロジェクトおよび土地関連案件において滞留(トンドン)状態にある。これは東京都の面積(約2,200平方キロメートル=22万ヘクタール)にほぼ匹敵する広大な土地が、開発途上のまま放置されているに等しい規模である。
トゥアン大臣は、こうした滞留資源を「疎通」(コイトン)させ、経済成長のための新たな資金源として活用する必要があると強調した。「疎通」とは、ベトナムの政策用語で、法的・行政的な障害を取り除いて資金や資産の流動性を回復させることを意味する。
なぜこれほどの資金が滞留しているのか
ベトナムでは近年、投資プロジェクトや土地案件が停滞する構造的な問題が繰り返し指摘されてきた。その背景には複数の要因がある。
第一に、土地法・投資法・建設法など複数の法律が複雑に絡み合い、許認可プロセスが長期化・煩雑化していることである。ベトナムでは2024年に改正土地法が施行されたものの、施行細則や地方レベルでの運用が追いついていない地域も多く、プロジェクトの停滞が解消されていないケースが散見される。
第二に、地方政府の幹部が汚職摘発を恐れて許認可の判断を先送りする「不作為」の問題がある。ベトナム共産党が推進する反汚職キャンペーン(通称「燃える炉」運動)は腐敗根絶に大きな成果を上げた一方、地方官僚が責任を問われることを恐れて決裁を避けるという副作用も生んでいる。
第三に、不動産市場の調整局面である。2022年後半から2023年にかけてベトナムの不動産市場は社債デフォルト問題や流動性危機に見舞われ、多くの大型開発プロジェクトが資金繰りの悪化により中断を余儀なくされた。2024年以降は回復基調にあるものの、法的手続きが完了していないプロジェクトは依然として多い。
政府の対応策と今後の方向性
ベトナム政府は、こうした滞留資産の問題を最重要課題の一つとして位置づけている。2025年から2026年にかけて、以下のような施策が進められている。
まず、改正土地法の運用を加速させるための施行細則の整備である。土地使用権の明確化、収用手続きの迅速化、土地価格の市場連動型への移行といった改革が段階的に進められている。
次に、公共投資の執行率向上である。ベトナムでは毎年、国家予算で承認された公共投資の執行率が低迷する問題があり、年末に駆け込みで予算消化する傾向が強い。政府は各省庁・地方政府に対して執行率の目標を設定し、進捗管理を厳格化している。
さらに、不動産プロジェクトの法的整理も進む。停滞プロジェクトの棚卸しを行い、法的要件を満たしたものから順次許認可を再開する方針が示されている。これにより、長年塩漬けとなっていた都市開発や工業団地プロジェクトが動き出す可能性がある。
投資家・ビジネス視点の考察
今回の財務大臣の発言は、ベトナム株式市場と日本企業にとって複数の重要なインプリケーションを持つ。
不動産・建設セクターへの影響:3.3兆兆ドンという滞留資金の「疎通」が本格化すれば、不動産デベロッパーや建設会社にとって大きな追い風となる。ホーチミン市やハノイ市で停滞していた大型プロジェクトが再開すれば、ビングループ(Vingroup、ベトナム最大手コングロマリット)、ノバランド(Novaland)、バンダットグループ(Van Dat Group)といった上場不動産企業の業績改善につながる可能性がある。
銀行セクターへの波及:不動産プロジェクトの停滞は、融資の不良債権化リスクと直結する。滞留プロジェクトが動き出せば、銀行セクターの資産の質が改善し、信用コストの低下が期待できる。ベトコムバンク(Vietcombank)やビッドブイ(BIDV)など大手国有商業銀行への好影響が見込まれる。
日本企業への影響:ベトナムには住友商事、三菱商事、野村不動産、大和ハウスなど多くの日系企業が不動産・工業団地開発に参画している。土地関連の許認可が円滑化すれば、こうした日系企業の事業展開も加速する可能性がある。特に工業団地開発は、米中対立を背景としたサプライチェーン再編(チャイナ+ワン戦略)の受け皿として需要が旺盛であり、土地の流動化は日本の製造業にとっても朗報である。
FTSE新興市場指数への格上げとの関連:2026年9月に決定が見込まれるFTSE新興市場指数へのベトナムの格上げに向けて、政府は市場の透明性向上と経済のファンダメンタルズ強化を急いでいる。滞留資産の解放によるGDP成長率の押し上げは、格上げ審査においてもプラス材料となる。格上げが実現すれば、海外機関投資家からの資金流入が本格化し、ベトナム株式市場全体の底上げにつながると見られている。
マクロ経済への影響:ベトナム政府は2025年のGDP成長率目標を8%以上に設定しており、2026年も高い成長を維持する方針である。3.3兆兆ドンという巨額の滞留資金が経済循環に戻れば、建設投資の活性化、雇用創出、税収増加という好循環が生まれる。ベトナムが「2045年までに高所得国入り」という長期目標を掲げる中で、遊休資産の活用は避けて通れない課題であり、今回の財務大臣の発言はその決意を改めて示したものと解釈できる。
ただし、注意すべき点もある。法改正や行政手続きの改善は一朝一夕には進まず、地方レベルでの実行力にばらつきがあることは過去の経験が示している。投資家としては、政策の「発表」と「実行」のギャップを冷静に見極める姿勢が求められる。
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出典: 元記事












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