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ベトナムのデータセンター市場が、AI時代の到来を追い風に急成長フェーズに入っている。2025年4月20日にViettel IDC(ベトナム最大手通信グループViettel傘下のデータセンター事業会社)が開催した「Data Center & Cloud Infrastructure Summit(DCCI Summit)2026」において、同社CEOのレー・バー・タン氏が市場の現状と将来展望を明らかにした。ベトナムのデータセンター成長率は約14%と世界平均の約1.5倍に達し、クラウドサービスも年30%成長を維持している。
世界・APAC市場の中でのベトナムの位置づけ
タン氏が示したデータによれば、世界のデータセンター市場は2030年に6,274億ドルに達する見通しで、アジア太平洋(APAC)地域だけで1,748億ドルを占める。成長率を見ると、グローバル平均が8.8%、APAC平均が9.3%であるのに対し、東南アジアは約14%と大幅に上回る。ベトナムはまさにこの高成長ゾーンの中核に位置している。
現在、世界には約11,000カ所のデータセンターが存在するが、AIデータセンターは数量ベースで1%未満にもかかわらず、業界全体の電力消費の25%を占める。今後10年でこの割合は50%に達するとの予測も示された。APAC地域ではAI関連データセンターとして約19.4GWの展開が計画されており、うち3.7GW(約20%)がすでに建設中または稼働済みである。
ベトナム市場の急拡大—104MWから600MWへ
ベトナムのデータセンター総容量は現在約104MWだが、2030年までに5〜6倍の約600MWに拡大する見通しである。この急拡大を支えるのが、ベトナム政府による土地、電力、税制面での優遇政策だ。ハノイやホーチミン市といった大都市圏を中心に、多数の新規プロジェクトが進行中である。
国内企業のみならず、海外勢の動きも活発だ。UAE(アラブ首長国連邦)のAI企業G42や米マイクロソフトが、2026〜2027年にかけてホーチミン市でのデータセンター展開を計画している。大手テック企業が東南アジアへデータセンターを移転・新設する流れの中で、ベトナムは有力な受け皿として存在感を高めている。
Viettelの大規模計画—5拠点・350MW「AIファクトリー」
Viettelは2026〜2030年の期間に、「AIファクトリー」モデルの大規模データセンターを5カ所展開する計画を発表した。設置予定地はホーチミン市、ハノイ、カインホア省(中南部の沿岸省)、ドンタップ省(メコンデルタ地域)で、合計容量は約350MWに達する見込みである。Viettelは単なるインフラ構築にとどまらず、国内パートナーと連携してベトナムのデジタル経済・AI経済の基盤構築を目指すとしている。
「AI対応」データセンターの4要件
タン氏は、次世代AIデータセンターに求められる4つの要件を提示した。
第一に、ラックあたりの電力密度の飛躍的向上。従来型データセンターでは1ラックあたり20〜30kWが一般的だったが、AI用途では100kW、さらには200kW超が求められる。これに伴い、給電・冷却・ネットワーク・運用すべてに抜本的な変革が必要となる。
第二に、ネットワークインフラの全面的なアップグレード。接続速度は従来の100〜200Gbpsから400〜800Gbps、最大1.6Tbpsへと引き上げられる。AIクラスター間のリアルタイムに近い通信を、超低遅延・超広帯域で実現するためである。
第三に、冷却技術の根本的な転換。従来型の空調システムではAI機器の高密度発熱に対応できず、液冷などの先進的冷却技術の導入が不可欠となる。
第四に、運用のスマート化・自律化。DCIM(Data Center Infrastructure Management)などの管理システムを活用し、最終的には自律運用を目指す方向性が示された。
ビジネスモデルの転換—「rack」から「token per watt」へ
注目すべきは、データセンターのビジネスモデル自体の変化である。従来はラック単位やバンド幅単位で課金されていたが、AI時代には「token per watt」、すなわち消費電力1ワットあたりのAI処理効率が価値の指標となる。これはAIワークロードの特性を直接反映した課金体系であり、業界の収益構造を根本から変える可能性がある。
クラウド市場—30%成長と「主権クラウド」の台頭
クラウドサービスに関しても、ベトナムの成長率は年約30%と、グローバル平均(約20%)やASEAN平均を大きく上回る。さらに重要なのは、クラウドの役割が「柔軟なリソース拡張ツール」から「戦略的意思決定の対象」へと変化している点である。AI活用が進む中、企業はデータの所在地、セキュリティ、法規制への準拠、長期的なコスト管理を重視するようになっている。
実際、69%の企業がパブリッククラウドからプライベートクラウドへのワークロード移行を検討しており、ソブリンクラウド(主権クラウド)IaaS市場は2026年に800億ドルに達すると予測されている。クラウドはもはや単なる技術選択ではなく、データガバナンスとデジタル主権に関わる戦略的判断となっているのである。
投資家・ビジネス視点の考察
今回の情報は、ベトナム株式市場および関連銘柄に複数の示唆を与える。
Viettel関連:Viettelグループは非上場だが、傘下のViettel Post(VTP)やViettel Global(VGI)はホーチミン証券取引所に上場している。データセンター事業の拡大はグループ全体の企業価値向上につながり、間接的にこれら上場子会社の評価にも影響し得る。
電力・エネルギー関連:データセンターの急拡大は膨大な電力需要を生む。ベトナムでは再生可能エネルギーや送電インフラへの投資が急務であり、電力関連銘柄(PC1、POW、GEGなど)にとって中長期的な追い風となる可能性がある。
不動産・工業団地関連:ハノイ、ホーチミン市近郊の工業用地需要が増加する。工業団地を運営するBCM(Becamex IDC)やKBC(キンバック都市開発)などにも間接的な恩恵が期待される。
日本企業への影響:NTTデータ、KDDIなど日本の通信・データセンター事業者はASEAN展開を加速しており、ベトナムの優遇政策は進出検討の材料となる。また、冷却技術やサーバー周辺機器を手がける日本メーカーにとっても商機が広がる。
FTSE新興市場指数との関連:2026年9月に予定されるベトナムのFTSE新興市場指数への格上げが実現すれば、海外機関投資家の資金流入が加速する。デジタルインフラの充実は、ベトナム市場全体の「投資適格性」を高める要素として、格上げ判断にもプラスに作用するだろう。
ベトナムは人口約1億人の若い労働力、地理的にASEANの中心に位置する立地優位性、そして政府の積極的なデジタル化推進策を武器に、AI時代のデータセンターハブとしての地位を確立しつつある。G42やマイクロソフトといったグローバルプレーヤーの参入は、その裏付けと言える。今後数年間のインフラ投資の進捗が、ベトナムのデジタル経済の成長軌道を大きく左右することになるだろう。
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