ベトナム個人所得税の免税基準額、政府に裁量権委譲へ——現行500億ドンから最大2兆ドン案も浮上

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2026年4月20日、ベトナム国会常務委員会は個人所得税法の改正案を審議し、個人事業主・事業世帯に対する課税売上高の基準(免税ライン)を法律で固定せず、政府に柔軟な設定権限を委譲する方針で一致した。世界経済の不透明感が増すなか、中小零細事業者の負担軽減と機動的な政策運営を両立させる狙いがある。

目次

国会常務委員会で何が議論されたか

この日の審議対象は、個人所得税法・付加価値税(VAT)法・法人所得税法・特別消費税法の4法の一括改正案である。ゴー・ヴァン・トゥアン財務大臣(Bộ trưởng Bộ Tài chính Ngô Văn Tuấn)は趣旨説明で、2026年初頭から国際情勢の変動がベトナム国内経済に大きな影響を及ぼしていると指摘。燃料価格の上昇が生産コストを押し上げ、消費購買力が低下し、個人事業主や事業世帯の経営が困難に直面している現状を強調した。

こうした状況を踏まえ、「個人所得税の課税対象とならない売上高の基準」および「VAT課税対象外となる売上高の基準」を見直し、利益率の低い業種を中心に支援を図る必要があるとトゥアン財務大臣は述べた。

現行制度と改正の方向性

現行法では、個人事業主の年間売上高が5億ドン以下であれば個人所得税が免除される。この数字は改正済みの個人所得税法で法律上に明記されている固定値である。

政府が今回提示した方針では、この免税基準額を法律本文に固定するのではなく、時々の経済状況に応じて政府が柔軟に定める仕組みへ転換する。法人所得税の免税売上高基準についても同様の扱いとする考えだ。

「5億ドンでは低すぎる」——審査側から大幅引き上げ論

審査報告を行った国会経済財政委員会のファン・ヴァン・マイ主任(Chủ nhiệm Ủy ban Kinh tế Tài chính Phan Văn Mãi)は、事業世帯・中小企業が国家予算への貢献だけでなく、雇用創出・社会保障・経済の活力維持において重要な役割を果たしていると強調。税制は「実質的な支援」となるよう設計されるべきであり、小手先の微調整では民間経済の発展を促す精神を十分に反映できないと釘を刺した。

マイ主任は具体的な数字にも言及し、注目すべき議論の経緯を明かしている。

  • 当初の免税基準:1億ドン
  • 起草機関の提案で3億ドンに引き上げ
  • その後さらに5億ドンへ引き上げ(現行水準)
  • しかし「まだ低い」との意見が多数
  • ベトナム中小企業協会(VINASME)は30億ドンを提案
  • 審査機関(経済財政委員会)は人道的配慮と実態を踏まえ、最低でも約20億ドンが妥当との見解を示した

現行の5億ドンと比較すると、中小企業協会案は6倍、審査機関案でも4倍の大幅引き上げとなる。これは個人事業主・小規模事業者にとって極めてインパクトの大きい変更であり、課税ベースの縮小を通じて国家歳入にも影響を及ぼしうる。

財務大臣の反論——「柔軟性こそが鍵」

トゥアン財務大臣は、当初は具体的な数値を法律に明記する方針だったと認めつつも、国際情勢の急変、とりわけエネルギー価格の乱高下やサプライチェーン寸断リスクを踏まえ、政府への権限委譲が不可欠だと説明した。「柔軟な調整メカニズムを欠けば、高い経済成長の維持とマクロ経済の安定という二つの目標を同時に達成するのは困難だ」と強調している。

国会常務委員会の結論

グエン・ティ・ホン国会副議長(Phó Chủ tịch Quốc hội Nguyễn Thị Hồng)が取りまとめた結論では、以下の点が確認された。

  1. 4税法の一括改正方針に同意
  2. 事業世帯・中小企業への適切な支援を税制で保障すること
  3. 税制の公平性・整合性を高め、環境に配慮した消費を促す方向性を堅持すること
  4. 政府に対し、免税基準を政府裁量とする提案の根拠をさらに明確化・補強するよう要請
  5. 本法案は第16期国会第1回会期の議題に追加する形で報告される予定

常務委員会は、これらの免税基準が国民の関心が特に高いテーマであることを認識しており、国会議員が十分な根拠をもって審議・決定できるよう、丁寧な説明を求めている。

投資家・ビジネス視点の考察

①ベトナム株式市場への影響:免税基準の大幅引き上げが実現すれば、個人事業主・小規模事業者の可処分所得が増加し、内需を下支えする効果が期待される。小売・消費関連銘柄(モバイルワールド=MWG、FPTリテールなど)にはプラス材料となりうる。一方、課税ベース縮小による歳入減が財政赤字拡大につながれば、国債金利上昇を通じて金融セクターや不動産セクターへの間接的な影響も考えられる。

②日系企業・進出企業への影響:ベトナムで事業世帯(hộ kinh doanh)と取引する日系製造業やサービス業にとって、取引先の税負担軽減は仕入れコストの安定やサプライチェーンの強靭化につながる可能性がある。また、政府裁量による基準変更は機動的な対応を可能にする反面、予見可能性の低下というリスクも伴う点には留意が必要である。

③FTSE新興市場指数への格上げとの関連:2026年9月に判断が見込まれるFTSE格上げにおいて、直接的な評価項目ではないものの、税制の透明性・予見可能性は制度インフラの成熟度として間接的に評価される。政府への権限委譲が「柔軟性」と受け止められるか「不透明性」と見なされるかは、今後の運用ルールの明確さにかかっている。

④マクロ的な位置づけ:ベトナムは2026年、米中貿易摩擦の再燃やエネルギー価格高騰といった外部ショックに直面しており、今回の税制改正議論はまさにそうしたマクロ環境への政策対応の一環である。中小零細セクターが GDP の約30〜40%を占めるベトナムにおいて、このセクターへの課税方針は経済全体の成長軌道を左右する重要な政策変数と言える。


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出典: 元記事

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