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ベトナム国会(第16期第1回会期)は2024年4月24日、国家機関に所属する「公的弁護士(ルアットスーコン)」制度を試験的に導入する決議を、出席議員484名中467名(93.4%)の賛成で正式に可決した。ベトナムが国際経済への統合を加速させるなか、国家の法的防御力を高める画期的な制度改革として注目される。
決議の概要——2年間の試験運用
可決された決議は全12条からなり、施行期間は2026年10月1日から2028年9月30日までの2年間である。公的弁護士の活動原則、資格基準、業務範囲、権利・義務、案件処理プロセス、待遇・政策について包括的に規定している。
試験導入の対象機関
中央省庁では、国防省、公安省、外務省、司法省、財政省、商工省、農業環境省、建設省の8省が対象となる。地方では、ハノイ市、ホーチミン市、ダナン市、ハイフォン市、カントー市の中央直轄5市に加え、ドンナイ省、バクニン省、クアンニン省、カインホア省、ラムドン省の5省が選ばれた。いずれもベトナム経済の中核を担う地域であり、外国投資が集中するエリアでもある。
公的弁護士とは何か——その定義と資格要件
決議によれば、公的弁護士とは、幹部・公務員・職員・人民軍将校・人民公安将校、または対象機関が代表所有者となる国有企業の従業員のうち、弁護士業務証明書を取得し、国家機関・政治体制に属する組織・国有企業の権利と合法的利益を法的に保護する役割を担う者を指す。
司法省のホアン・タイン・トゥン大臣は、国会での説明において、公的弁護士は高度な専門性と実務経験が求められる職種であると強調した。具体的には、法律分野での常勤・直接的な実務経験が最低5年以上必要とされる。この経験は、訴訟、法的助言、複雑な法的案件の解決など、実践的な業務に紐づくものでなければならない。さらに、弁護士法に定める弁護士資格基準を満たすことが必須条件とされており、民間弁護士と同等の専門能力を担保する設計となっている。
待遇制度——「月次手当+案件別報酬」の二本立て
公的弁護士の報酬体系は、「月次支援手当」と「案件別報酬」を組み合わせたハイブリッド型が採用される。トゥン司法大臣は、公的弁護士は個別案件の処理だけでなく、所属機関の常任法律顧問としての役割も果たすため、安定的な月次収入の保障が不可欠であると説明した。法的リスクの予防という「常時待機」の性質を反映した制度設計である。
一方、案件別報酬は、国際訴訟や長期化する行政不服申立て・告発案件など、複雑かつ高負荷の業務に対する適正な対価を確保するためのものだ。報酬水準は、司法手続機関の要請により弁護士が訴訟に参加する際の報酬を参考に設定された。国有企業で勤務する公的弁護士については、企業の給与体系との整合性を図るため、月次手当の具体的運用を政府が別途規定する旨の条項も、国会議員の意見を踏まえて追加された。
制度導入の背景——なぜ今、公的弁護士なのか
ベトナムは近年、CPTPP(環太平洋パートナーシップに関する包括的及び先進的な協定)やEVFTA(EU・ベトナム自由貿易協定)など大型FTAの締結を相次いで実現し、国際的な通商紛争や投資仲裁のリスクが飛躍的に高まっている。従来、国家側の法的対応は外部の民間弁護士事務所に委託するケースが多かったが、機密保持や費用対効果、対応のスピードなどの面で課題が指摘されてきた。公的弁護士制度は、こうした課題に対する構造的な解決策として位置づけられる。
また、国有企業改革やインフラ開発プロジェクトが加速するなか、土地収用、環境規制、契約紛争など法的リスクが多様化しており、国家機関内部に高度な法的専門人材を配置する必要性は一段と高まっていた。
投資家・ビジネス視点の考察
本決議は株式市場に直接的なインパクトを与えるものではないが、ベトナムの制度的インフラの成熟を示すシグナルとして重要である。以下の観点から注目すべきだ。
1. 法的透明性・予見可能性の向上:公的弁護士が国家機関の法的対応を専門化することで、行政手続きの質が向上し、外国投資家にとってのビジネス環境が改善される可能性がある。これは2026年9月に判断が見込まれるFTSE新興市場指数への格上げ審査においても、ガバナンス面でのプラス材料となり得る。
2. 日本企業への影響:ベトナムに進出している日系企業にとって、カウンターパートである国家機関や国有企業の法的対応が専門化・迅速化することは歓迎すべき動きである。特にインフラ・建設・エネルギー分野でODA案件やPPP事業に関与する企業にとっては、契約交渉や紛争解決の質的向上が期待できる。
3. 国有企業関連銘柄:対象となる国有企業においては、法的リスク管理体制の強化がコーポレートガバナンスの改善につながる。中長期的には、国有企業株(ペトロベトナムグループ傘下企業、ベトナム電力公社関連など)の評価向上に寄与する可能性もある。
4. ベトナム経済のトレンドにおける位置づけ:本制度は、ベトナムが「安価な労働力」を武器にした成長モデルから、制度・法治に裏打ちされた質の高い経済運営へと転換しつつあることを示す一例である。投資家としては、こうした制度改革の積み重ねがベトナムの「カントリーリスクプレミアム」を低下させる方向に作用する点を中長期の投資判断に織り込むべきだろう。
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