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ホーチミン市を代表するレジャー施設「ダムセン公園(Công viên Đầm Sen)」を運営するフートー・ツーリスト(Phú Thọ Tourist、正式名称:Công ty cổ phần Dịch vụ Phú Thọ)が、2025年第1四半期に再び赤字に転落した。前年度の第4四半期にようやく黒字化を果たしたばかりだったが、わずか1四半期で70億ドンの純損失を計上する結果となった。ベトナムの観光・レジャーセクターの回復が一筋縄ではいかないことを改めて浮き彫りにするニュースである。
フートー・ツーリストとダムセン公園とは
ダムセン公園は、ホーチミン市11区に位置する総合遊園地・レジャー施設で、1980年代に開園した歴史ある公園である。ウォーターパーク、遊園地エリア、動植物園、イベント広場などを擁し、地元住民にとっては家族連れの定番スポットとして長年親しまれてきた。周辺にはダムセン・ウォーターパーク(Đầm Sen Water Park)やダムセン文化公園なども展開されており、一帯はホーチミン市有数のレジャー集積地となっている。
フートー・ツーリストは、このダムセン公園群の運営を中核事業とする上場企業であり、ホーチミン証券取引所(HOSE)に上場している。ホテル運営や飲食、イベント企画なども手がけるが、収益の大部分はダムセン公園の入場料やアトラクション利用料、関連サービスに依存している。そのため、来園者数の変動が業績を大きく左右する構造にある。
前期に黒字復帰も、第1四半期で再び赤字に
フートー・ツーリストは、新型コロナウイルスの影響を受けた2020年〜2021年にかけて深刻な打撃を受け、その後も回復は緩やかだった。2024年度の第4四半期(10〜12月)にようやく損失から脱却し、黒字化を果たしていた。しかし、2025年第1四半期(1〜3月)の決算では再び70億ドンの純損失を計上し、短期間での黒字定着には至らなかった。
第1四半期はベトナムのレジャー業界にとって「閑散期」と「繁忙期」が混在する時期である。1月下旬から2月上旬にかけてのテト(旧正月)連休は国内観光需要が一時的に高まるが、テト明けは消費が急速に冷え込みやすい。また、ホーチミン市では3月以降に気温が上昇し、屋外施設への来園意欲が天候に左右されるという季節的な特性もある。こうした構造的な要因が第1四半期の業績低迷につながった可能性が高い。
ベトナムの観光・レジャーセクターの現状
ベトナム全体で見ると、観光セクターは力強い回復基調にある。2024年にはコロナ前の水準を超える外国人観光客数を記録し、2025年も政府は1,800万〜2,000万人の外国人観光客誘致を目標に掲げている。しかし、その恩恵は国際的な観光地(ダナン、ニャチャン、フーコックなど)に集中しやすく、ホーチミン市内の老舗レジャー施設が必ずしも同じ恩恵を受けるとは限らない。
ダムセン公園のような国内向けレジャー施設は、国内消費者の可処分所得や消費マインドに大きく影響される。2025年初頭はベトナム経済全体が堅調に推移しているものの、不動産市場の調整や一部製造業の輸出減速など、消費者心理を冷やす要因も残っていた。加えて、ホーチミン市内ではショッピングモール併設型のエンターテインメント施設やテーマパーク型複合施設(VinWonders系列など)との競争が激化しており、老舗施設には設備更新や新規投資の負担が重くのしかかる構図がある。
投資家・ビジネス視点の考察
フートー・ツーリストの再赤字転落は、ベトナム株式市場全体への影響は限定的であるが、観光・レジャーセクターへの投資を検討する際にはいくつかの示唆を含んでいる。
第一に、季節性リスクの認識が重要である。ベトナムのレジャー企業は第2四半期(4〜6月)から第3四半期(7〜9月)にかけての夏季が最大の稼ぎ時となる。第1四半期の赤字が通年業績を決定づけるわけではなく、夏季シーズンの動向を見極める必要がある。
第二に、業態転換・設備投資の進捗が注目点となる。ベトナム国内では、ビングループ(Vingroup、ベトナム最大手のコングロマリット)傘下のVinWondersなど、大型資本による最新鋭レジャー施設が台頭している。フートー・ツーリストのような中堅企業が競争力を維持するには、施設リニューアルや体験型コンテンツの拡充が不可欠であり、その投資計画と資金繰りが中長期的な株価の方向性を左右する。
第三に、2026年9月に決定が見込まれるFTSE新興市場指数への格上げとの関連性について。FTSE格上げが実現すれば、ベトナム株式市場全体への海外資金流入が加速するが、恩恵を受けるのは流動性が高く時価総額の大きい銘柄が中心となる。フートー・ツーリストのような中小型銘柄が直接的に恩恵を受ける可能性は限定的であるが、市場全体のセンチメント改善による間接的な追い風は期待できる。
日本企業との関連では、ベトナムの観光・レジャー分野は日系企業にとっても注目度の高い領域である。イオンモールやファミリーマートなど、ベトナムで消費者向けビジネスを展開する日系企業は、ベトナム国内消費のトレンドを把握する上で、フートー・ツーリストのような内需型企業の業績を一つのバロメーターとして参考にできるだろう。
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出典: 元記事












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