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ベトナム民間銀行大手のテックコムバンク(Techcombank、ホーチミン証券取引所ティッカー:TCB)が2026年第1四半期決算を発表し、サービス手数料収入が前年同期比47%増の3,600億ドンに達したことが明らかになった。同項目は同行の利益成長における最大の貢献源となっており、ベトナム銀行セクターにおける収益構造の変化を象徴するニュースとして注目される。
テックコムバンクとは何か
テックコムバンク(Vietnam Technological and Commercial Joint Stock Bank)は、1993年に設立されたベトナムを代表する民間商業銀行の一つである。ハノイに本店を構え、リテールバンキング、法人向け金融、投資銀行業務、保険・証券関連サービスなど多角的な金融事業を展開している。同行はベトナム不動産大手ビングループ(Vingroup)との密接な取引関係でも知られ、住宅ローンや関連金融商品の提供で強みを持つ。ホーチミン証券取引所に上場しており、時価総額ベースでもベトナム銀行セクターの上位に位置する存在である。
サービス手数料収入47%増の中身
2026年第1四半期において、テックコムバンクが計上したサービス手数料収入(thu nhập phí dịch vụ)は3,600億ドンに上り、前年同期比で47%の大幅増加を記録した。この「サービス手数料収入」とは、融資による利ざや(NII=純金利収入)とは異なる非金利収入の代表的な項目であり、具体的には決済手数料、カード関連手数料、バンカシュアランス(銀行窓口での保険販売)手数料、送金・為替手数料、投資信託や証券仲介手数料などが含まれる。
ベトナムの銀行業界では従来、収益の大部分を貸出金利収入に依存する構造が続いていた。しかし近年、中央銀行(ベトナム国家銀行)による政策金利の引き下げや銀行間の貸出金利競争の激化により、金利マージンは縮小傾向にある。こうした環境のなかで、テックコムバンクがサービス手数料収入を急拡大させていることは、同行が収益の多角化を着実に進めている証拠といえる。
非金利収入拡大の背景
テックコムバンクのサービス手数料収入が47%もの伸びを見せた背景には、複数の構造的要因がある。
第一に、ベトナム全体でのキャッシュレス決済の急速な普及である。ベトナム政府は「2025年までに非現金決済比率を大幅に引き上げる」という目標を掲げており、QRコード決済やモバイルバンキングの利用者は年々拡大している。テックコムバンクはデジタルバンキングに早くから注力しており、自社アプリ経由の取引件数・手数料収入が急増しているとみられる。
第二に、バンカシュアランス(銀行窓口保険販売)の回復である。ベトナムでは2023年に一部保険会社の不正販売問題が社会問題化し、バンカシュアランス市場が一時冷え込んだ。しかし規制整備の進展と消費者信頼の回復に伴い、2025年後半から各行とも保険販売手数料が持ち直しつつある。テックコムバンクもこの恩恵を受けた可能性が高い。
第三に、証券・資産運用関連手数料の伸びである。ベトナム株式市場は2025年後半以降、FTSE新興市場指数への格上げ期待を背景に海外資金が流入し、取引量が増加傾向にある。テックコムバンク傘下のテックコム証券(TCBS)は証券仲介手数料で恩恵を受けやすいポジションにあり、グループ全体の手数料収入を押し上げる要因となっていると考えられる。
利益成長の「主役」に躍り出た手数料収入
元記事では、サービス手数料収入が「利益成長への主な貢献源(nguồn đóng góp chính vào tăng trưởng lợi nhuận)」になったと報じている。これは従来の「金利収入が利益の大半を占める」というベトナム銀行の典型的な収益構造からの明確な転換を示すものだ。金利収入は景気循環や中央銀行の金融政策に左右されやすい一方、手数料収入はサービス利用件数に連動するため、安定性が相対的に高い。テックコムバンクが手数料ビジネスを利益の柱に据えることに成功すれば、同行の収益のボラティリティが低下し、バリュエーション面でのプレミアムが正当化されやすくなる。
投資家・ビジネス視点の考察
ベトナム株式市場・関連銘柄への影響:テックコムバンク(TCB)は、ホーチミン証券取引所の代表的な銀行銘柄であり、VN-Index構成比率でも上位に位置する。手数料収入の急拡大は、単なる一時的要因ではなくデジタル化やサービス多角化といった構造的な成長を反映しており、中長期的な買い材料と評価できる。他の民間銀行(VPBank、MBBank、ACBなど)でも同様の非金利収入拡大が確認されれば、銀行セクター全体のリレーティング(評価見直し)につながる可能性がある。
FTSE新興市場指数格上げとの関連性:2026年9月に決定が見込まれるFTSE新興市場指数へのベトナム格上げは、海外機関投資家の資金流入を大幅に増加させるとみられている。格上げが実現すれば、時価総額・流動性の高い銀行銘柄が真っ先にパッシブ資金の買い対象となるため、TCBの恩恵は大きい。手数料収入の増加によって利益の「質」が向上していることは、海外投資家のデューデリジェンスにおいてもプラスに評価されるだろう。
日本企業への示唆:ベトナムに進出している日系金融機関やフィンテック企業にとっては、ベトナム国内銀行のデジタル化・手数料ビジネス拡大は競争環境の激化を意味する。一方で、決済インフラやITシステムの高度化に伴い、日本の技術・サービスの需要が拡大する余地もある。テックコムバンクのようなデジタル先進行と協業・提携する戦略は、引き続き有効なベトナム市場攻略の一手となりうる。
ベトナム経済全体のトレンド:銀行の非金利収入拡大は、ベトナム経済のサービス化・デジタル化の進展を映し出す鏡でもある。個人消費の拡大、中間所得層の台頭、電子商取引市場の成長といったマクロトレンドが銀行のフィービジネスを底支えしており、この流れは今後数年にわたって続くと見込まれる。
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出典: 元記事












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