ベトナム不動産市場が「質重視」へ転換、銀行の貸倒引当金21.8兆ドン超—新局面の投資戦略を読む

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ベトナムの不動産市場が大きな転換期を迎えている。銀行セクターの貸倒引当金が急増する中、投資家の行動パターンは「量の拡大」から「質の厳選」へと明確にシフトしており、資産蓄積(「ティック・サン」)という長期戦略が注目を集めている。

目次

銀行セクターが発する警戒シグナル——引当金218,750兆ドンの意味

ベトナムの上場銀行27行の2025年度財務報告によると、信用リスクに対する引当金の総額は2025年12月31日時点で218,750兆ドンに達し、2024年末と比べて1兆2,000億ドン以上の増加となった。これは銀行システム全体が信用リスクの高まりに備え、防衛的な姿勢を強めていることを如実に示すデータである。

個別行を見ると、BIDV(ベトナム投資開発銀行)が約34,944兆ドン、VietinBank(ベトナム商工銀行)が約34,810兆ドンと、国有大手2行が引当金規模で群を抜いている。注目すべきはSacombank(サコムバンク)で、貸倒引当金が急増し2兆ドンの大台を突破した。同行はかつて不良債権処理に苦しんだ経緯があり、再びリスク管理を強化している姿勢がうかがえる。

銀行が引当金を積み増すということは、融資審査がより厳格化し、信用の選別が進むことを意味する。その結果、資金コストの上昇と相まって、レバレッジに過度に依存した投機的資産は魅力を失い、逆に実需に裏打ちされた質の高い資産への評価が高まるという構図が生まれている。

買い手の行動が激変——「法的安全性」が最重要基準に

ダットサンサービシズ(Dat Xanh Services、ベトナム大手不動産仲介)が発表した2025年住宅不動産市場報告書および2026年予測によれば、購入者の心理は明らかに慎重化している。マンション(アパートメント)が依然として最も関心を集める不動産タイプである一方、投機的な商品群は関心度ランキングの最下位に沈んでいる。

特に注目すべきデータは、購入者の79.5%が「法的要素(pháp lý)」をプロジェクト選定時の最重要基準として挙げている点である。これは、かつてのように値上がり期待で飛びつく投資行動から、資産の耐久性・安全性を重視する行動へと、市場参加者のマインドセットが根本的に変化していることを物語っている。

「資産蓄積(ティック・サン)」戦略の3つの防衛層

こうした環境下で、ベトナムの投資家コミュニティでは「ティック・サン(tích sản=資産蓄積)」という概念が急速に広まっている。これは単に不動産を買って長期保有するという単純な話ではない。市場の複数サイクルを通じて価値を維持できる資産を厳選して保有するという、より洗練された投資哲学である。

長期的に価値を維持する不動産には、少なくとも以下の3層の価値基盤が必要とされる。

第1層:都市中心部の立地。経済活動、サービス業、自然な人流が集中するエリアに位置すること。周辺部やニュータウンではなく、都市の「コア」に根ざしていることが重要である。

第2層:明確な法的基盤。信用引き締め局面やリスク回避的な市場環境においても、法的問題により価格が再評価(下方修正)されるリスクが低いこと。ベトナムでは土地使用権証書(ソード)の有無や開発許認可の透明性が極めて重要な要素となる。

第3層:実用価値・収益力。値上がり期待のみに依存するのではなく、賃貸収入や観光・サービス業への活用など、実際の経済活動に参加できる資産であること。

この3層のうち1つでも欠けると、資産価値は市場変動に対して脆弱になる。金利上昇局面や信用収縮期には、値上がり期待だけに支えられた資産ほど大幅な調整を受けやすい。一方、価値基盤が明確な資産は爆発的な成長こそないものの、サイクルを通じて安定したリズムを刻む傾向がある。

ダナン中心部の事例——The Legend Danang

こうした「ティック・サン」戦略の文脈で注目されているのが、ダナン(Da Nang、ベトナム中部最大の都市)のカウロン(Cầu Rồng=ドラゴンブリッジ)・ハン川(sông Hàn)エリアに位置する「The Legend Danang」プロジェクトである。ROXグループが手掛ける同プロジェクトは、ダナンの都市コアかつ観光コアとされるエリアに立地し、上述の3層すべてを備えた資産として位置づけられている。

ダナンはベトナム政府が観光・サービス産業の戦略的拠点として開発を推進している都市であり、中長期的な観光需要の成長が不動産の稼働率・収益力を支える構造にある。投資家の間では「高金利は不動産を排除しない。高金利が排除するのは弱い不動産だけだ」という格言が広まっており、現在の選別的な市場環境を端的に表現している。

投資家・ビジネス視点の考察

今回の動向は、ベトナム株式市場においても複数の示唆を含んでいる。

銀行株への影響:引当金の積み増しは短期的には利益を圧迫する要因だが、中長期的には資産の健全性向上として市場にポジティブに評価される可能性がある。特にBIDV、VietinBank、Sacombankの動向は注視すべきである。2026年9月に決定が見込まれるFTSE新興市場指数への格上げが実現すれば、銀行セクターは外国人投資家の資金流入の最大の受け皿となるため、今のうちにバランスシートを健全化しておく意義は大きい。

不動産セクターへの影響:投機的な不動産企業は淘汰圧力が高まる一方、都市中心部に質の高いポートフォリオを持つデベロッパーは相対的に優位に立つ。ダットサンサービシズ(DXS)やビンホームズ(Vinhomes)など、法的整備が進んだ大手の銘柄が選好されやすい環境である。

日本企業への示唆:ベトナムの不動産市場が「質重視」に転換する中、日本の不動産デベロッパーやREIT運用会社にとっては、法的に透明性が高く実需に裏打ちされたプロジェクトへの投資機会が広がっている。特にダナンは日系企業の進出も増えており、ホスピタリティ分野での協業ポテンシャルは高い。

マクロ的位置づけ:ベトナム経済全体が「高成長・高リスク」から「持続的成長・リスク管理重視」へと成熟段階に入りつつあることを示す象徴的な動きである。これはFTSE格上げの審査においてもプラス材料として評価される可能性がある。市場の透明性向上、リスク管理体制の強化は、まさに格上げの要件と合致するからである。


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出典: 元記事

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