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ベトナム建設省が、建築士の業務資格(チュンチー・ハンゲー=職業実践証明書)に関する制度を包括的に見直す法改正案を起草した。2019年制定の建築法(第40/2019/QH14号)の複数条項を修正し、資格取得条件の明確化、発行権限の拡大、データベースの国家統合、外国人建築士の資格転換手続きの簡素化などを盛り込んでいる。建設・不動産セクターの制度インフラに直結する改正であり、日系設計事務所やゼネコンにも影響が及ぶ可能性がある。
現行制度と改正案の概要
現行の建築法第21条では、設計主任(チューチー・ティエットケー)や建築専門の責任者、個人として活動する建築士に対し、建築業務実践証明書の保有を義務付けている。証明書を持たない個人は、建築事務所に所属するか、証明書保有者と協力する形でのみ業務参加が認められる。
今回の改正案では、この規定を「条件および能力に関する規定」へと改称・拡充する。具体的には、証明書が必要な業務範囲を以下の3分野に明示した。
- 建築物の建築設計
- 都市計画・農村計画・都市デザインにおける建築設計
- 景観建築設計
これらの業務において「建設設計主任」(チューニエム・ティエットケー・サイズン)を務める者、あるいは個人として独立開業する建築士には証明書が必須となる。一方、証明書を持たない個人についても、組織内での参加や独立建築士との協力による業務遂行は引き続き認められる。外国人建築士に関する第31条の特例も維持される。
証明書の発行権限——2つの方案を提示
現行法では、省級人民委員会(UBND)傘下の建築専門機関のみが証明書の発行・延長・取消・再発行の権限を持つ。改正案では2つの方案が示されている。
方案1:現行どおり省級の建築専門機関が単独で権限を行使する。
方案2:省級の建築専門機関に加え、中央レベルの建築関連社会職業団体(ベトナム建築家協会等が想定される)にも発行権限を付与する。
方案2が採用されれば、資格発行の窓口が拡大し、手続きの迅速化が期待される一方、品質管理の統一性をどう担保するかが論点となる。
データベースの国家統合とID付与
現行法第24条では、証明書発行後5営業日以内に省級機関がウェブサイトで情報を公開し、さらに建設省へ送付、建設省も5営業日以内にポータルサイトで公開するという二段階の手続きが定められている。
改正案ではこれを抜本的に刷新し、「建築業務実践に関する情報およびデータベース管理」として再構成する。主な変更点は以下のとおりである。
- 証明書データベースと組織データベースの2本立てで構築
- 行政手続き(発行・再発行・転換)の際にデータを自動収集し、建設活動に関する国家情報システムに同期・一元管理
- 各証明書に固有の識別コード(マー・ディンザン)を付与し、トレーサビリティを確保
この改正は、ベトナム政府が推進するデジタルガバメント戦略の一環でもあり、建設分野における透明性向上と行政効率化を狙ったものである。
外国人建築士の資格転換手続きを簡素化
現行法第31条第2項では、外国で発行された有効な建築業務証明書を持つ外国人がベトナムで建築サービスに従事する場合、6カ月未満であれば「承認」手続き、6カ月以上であれば「転換」手続きが必要とされていた。
改正案では、この期間による区分を撤廃し、ベトナムで建築サービスに参加するすべての外国人建築士に対して一律に「転換」手続きを求める方向へ変更する。手続きの窓口は省級人民委員会傘下の建築専門機関のままである。なお、ベトナムが締結している国際条約や国際協定に基づく相互承認・転換の仕組みは引き続き適用される。
投資家・ビジネス視点の考察
本改正案は建設・不動産セクターの制度基盤を整備するものであり、直接的な株価インパクトは限定的だが、中長期的には以下の点で注目に値する。
1. 建設・設計関連企業への影響:資格要件の明確化とデータベース統合により、無資格業者の排除が進む可能性がある。上場ゼネコンや設計コンサルティング企業(コテック建設〈CTD〉、ホアビン建設〈HBC〉など)にとっては、業界の信頼性向上を通じた間接的なプラス要因となりうる。
2. 日系企業への影響:ベトナムに進出している日系設計事務所やゼネコンは、外国人建築士の資格転換手続きが一律化される点に留意が必要である。従来6カ月未満の短期プロジェクトでは簡易な「承認」で済んでいたが、改正後はすべて「転換」手続きが必要となるため、事前の準備期間が増える可能性がある。
3. FTSE新興市場指数格上げとの関連:2026年9月に決定が見込まれるFTSE格上げに向け、ベトナム政府は各分野で制度の透明性・予見可能性を高めている。建設分野のデータベース国家統合やID付与制度は、こうしたガバナンス改善の流れと軌を一にするものであり、海外投資家からの評価向上に寄与する要素である。
4. 不動産市場への波及:建築士資格制度の厳格化は、設計品質の底上げを通じて不動産プロジェクト全体の質的向上につながる。2025年以降、ベトナムの不動産市場は回復基調にあるが、品質管理の強化は中長期的な市場の健全性を支える制度的裏付けとなる。
今後、国会審議を経て最終的にどの方案が採択されるかが焦点となる。特に証明書発行権限を職業団体にも開放する方案2が通れば、建築業界の自主規制機能が強化される一方、行政と民間団体の間の権限調整が新たな課題となるだろう。
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