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ベトナム政府が掲げる2026〜2030年のGDP2桁成長目標に伴い、電力消費も年率8〜10%の複合成長が見込まれている。証券大手VnDirect(VnDirect証券)は最新の電力セクターレポートで、2025年を再生可能エネルギー投資の「新サイクル元年」と位置づけ、2026年以降に投資が加速すると分析した。注目銘柄としてREE、POW、PC1が挙げられており、ベトナム株投資家にとって見逃せないテーマとなっている。
電力需要急増の背景——FDI・データセンター・都市化
ベトナムの電力消費が今後大きく伸びると見られる最大の要因は、堅調なFDI(外国直接投資)の流入である。2024〜2025年のFDI実行額は前年同期比で9%超の複合成長率を記録しており、グローバルな貿易リスクにもかかわらず勢いを維持している。特に注目すべきは、投資先が半導体・電子機器などのハイテク製造業やデータセンターといった電力多消費型産業に集中している点である。
加えて、急速な都市化の進行、国民所得の向上、交通・サービス分野の電化トレンドも民生用電力需要を押し上げる構造的要因となっている。VnDirectは、GDP成長率に対する電力消費の弾性値を約1.0倍と仮定し、2026〜2030年の電力消費が年率8〜10%の複合成長を達成し得ると試算している。
エルニーニョと北部の電力不足リスク
ベトナムは設計容量の半分以上が天候依存型電源(水力・太陽光・風力)で構成されており、エルニーニョ現象が優勢な年の夏季ピーク時には局地的な電力不足に直面するリスクがある。特に北部は水力発電への依存度が高く、渇水期には供給が逼迫しやすい。電力供給の不安定さはハイテク産業やデータセンターを誘致するうえで致命的なマイナス要因となるため、安定電源への投資は国家的急務である。
この課題を解決するため、ベトナムはガス火力(LNG含む)への投資拡大と、再生可能エネルギーの追加導入によって設計容量とピーク需要のマージンを広げる必要がある。
ガス火力——Lô B・Ô Môn(オモン)プロジェクトが転機に
ガス火力については、発電コストの高さとBOT契約切れ(フーミー地区の複数プラント)の影響で、短期的な見通しは控えめである。ニョンチャック(Nhon Trach)やカマウ(Ca Mau)の発電所の稼働効率は、今後数年間に割り当てられるQc(契約電力量)比率に大きく左右される状況だ。
ただし、2027年にLô B – Ô Môn(ロットB・オモンガス田開発プロジェクト)から初のガス供給が開始され、オモン電力センターの4基が2027〜2030年に順次稼働する見通しであり、ここが転換点となる。政府が公布した政令100/2025/NĐ-CPは、国内ガスを使用するガス火力発電所についてガス供給能力に応じた最大出力での運転・調達を認めており、オモンの発電所群は高い設備利用率での安定稼働が期待できる。
第8次電力マスタープラン(PDP8)が掲げるLNG発電の2030年目標達成は困難とみられるものの、石炭火力の代替かつ再エネの補完電源としてのLNG/ガス火力のポテンシャルは依然として大きい。VnDirectは、LNG発電投資の先行者としてPOW(PetroVietnam Power、ペトロベトナムパワー/ティッカー:POW)が恩恵を受けると評価している。
再生可能エネルギー——2025年が新投資サイクルの起点
FIT(固定価格買取制度)終了後、新たな法的枠組みが整備されたことで、2025年には多くの再エネプロジェクト(大半が風力発電)が入札・着工段階に入っている。注目すべき傾向として、プロジェクトの大型化が進んでおり、参入企業も資金力と経験を持つ大手に集約されつつある。具体的にはREE(REEコーポレーション/ティッカー:REE)、チュオンタイングループ(Truong Thanh Vietnam=TTVN)、ビンエナジー(VinEnergo、ビングループ傘下)などが名を連ねる。
VnDirectは、2025年を再エネ投資の新サイクルの出発点と位置づけ、2026年以降に投資が本格的に加速すると見通している。
VnDirectが推す注目3銘柄
VnDirectは株式投資の観点から、エネルギー転換トレンドに沿った発電容量の成長余地を持つ企業と、発電所・送電網投資のバリューチェーンで恩恵を受けるサービス企業を選好している。
- REE(REEコーポレーション):再生可能エネルギー投資のテーマで推奨。水力・風力・太陽光と幅広いポートフォリオを持ち、新規大型風力案件にも積極参入している。
- POW(ペトロベトナムパワー):LNG/ガス火力投資のテーマで推奨。オモン電力センターなどの大型プロジェクトで先行者メリットを有する。
- PC1(パワー・コンストラクション・ナンバーワン):ベトナム最大手の電力インフラ建設企業であり、今後見込まれる大規模な送電線投資需要の直接的な受益者である。
さらに、電力コンサルティング企業であるTV1、TV2なども、発電所建設に伴うコンサル契約やEPC契約のバックログ増加で恩恵を享受し得るとされている。
投資家・ビジネス視点の考察
ベトナムの電力セクターは、同国の経済成長と直結する「インフラのボトルネック解消」というテーマそのものである。GDP2桁成長を実現するには電力供給の安定と拡大が不可欠であり、政府が制度面で後押しを強めている以上、セクター全体への資金流入が中長期的に続く公算が大きい。
日本企業にとっても示唆は多い。JERA(東京電力・中部電力系)や丸紅、住友商事など日本の大手はベトナムのLNGや再エネプロジェクトに既に関与しており、今回のレポートが示す2027年以降のガス火力本格化は、これら日系企業のベトナム事業収益にも直結するテーマである。
また、2026年9月に判断が見込まれるFTSE新興市場指数へのベトナム格上げが実現すれば、海外機関投資家の資金がベトナム市場に大量に流入する。電力セクターはインフラ関連の中核として、指数組み入れ銘柄の有力候補となるREEやPOWへの注目度がさらに高まる可能性がある。電力需要の構造的成長とFTSE格上げという二つの大きなカタリストが重なる2026〜2027年は、ベトナム電力株にとって極めて重要なタイミングとなるだろう。
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