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ベトナム製薬業界の有力企業であるハウザン製薬(DHG、ホーチミン証券取引所上場)が、経営陣の人事異動と2025年度の高額配当計画を相次いで発表した。日本の大正製薬が過半数を握る同社の動向は、日越経済関係を象徴するケースとして注目に値する。
藤森修氏の役職変更——ガバナンス体制の再編
DHGは、藤森修(Osamu Fujimori)氏の役職をCEO(総合執行責任者)から「財務・サプライチェーン担当副社長」へ変更すると発表した。任期は2026年5月1日から同年12月31日まで。同氏は引き続き情報開示の権限を持つ担当者も兼務する。
同社はこの人事変更の理由について、「全体的なガバナンス構造との整合性を図り、組織体制を整備して経営効率を向上させるため」と説明している。実質的には、CEO職を廃止し副社長職に再編するもので、経営の意思決定構造をよりシンプルにする狙いがあるとみられる。藤森氏は大正製薬から派遣された日本人幹部であり、親会社の意向が反映された人事である可能性が高い。
配当50%を決定——年間100%の高配当方針
DHGは2025年5月12日を権利確定日として、2025年度第1回配当を実施する。配当率は額面に対して50%、すなわち1株あたり5,000ドンである。支払日は2025年5月28日。
発行済株式数は約1億3,070万株であり、この第1回配当の総額は約6,530億ドンに達する見込みである。最大株主である大正製薬(日本)は51%超を保有しており、約3,330億ドンを受領する計算となる。第2位株主のSCIC(国家資本投資経営総公社、ベトナム政府系の資本管理機関)は43%超を保有し、約2,800億ドンを受け取る見通しだ。
DHGは2025年度の年間配当率を100%(現金配当)とする方針を既に承認しており、総配当額は1兆3,070億ドン超となる。第2回目の配当は2025年9月に実施される予定である。
2026年度の業績計画と直近の業績
DHGは2026年度の事業計画として、売上高5,530億ドン、税引前利益1,007億ドンを目標に掲げている。配当は7%とし、2026年度税引後利益の3%を福利厚生・報奨基金に充当する計画である。
直近の2026年第1四半期(1〜3月期)業績は、純売上高が1,198億ドンで前年同期比横ばい。一方、税引前利益は前年同期比18%増の347億ドン、税引後利益は19%増の316億ドンと利益面で堅調な成長を示した。粗利益率の改善と金融費用の大幅削減が増益の主因である。製品構成も完成品(自社ブランド医薬品)の比率が高い状態を維持しており、収益構造は良好と評価できる。
上場維持の課題——少数株主比率問題
注目すべきは、DHGが現在「公開会社(大衆会社)」の要件を満たしていない点である。ベトナムの証券法では、上場を維持するために一定数以上の少数株主が必要とされるが、大正製薬(51%超)とSCIC(43%超)で合計約95%を占めるDHGは、一般流通株式(フリーフロート)が極めて少ない状態にある。
この問題についてDHGは、国家証券委員会(SSC)に状況を報告し、当局の判断を待っている段階だと説明した。大正製薬とSCICの双方は、透明性や市場での信頼性、少数株主の権利保護の観点から、引き続き公開会社としての地位を維持したい意向を示している。具体的な対策として、株式配当(ボーナス株)の発行や類似の方策を通じて少数株主の比率を高めることを検討中だという。SCICも当局と協議を進めている。
投資家・ビジネス視点の考察
DHGの動向からは、いくつかの重要な示唆が読み取れる。
高配当の魅力と流動性リスク:年間配当100%(額面ベース)は、ベトナム株式市場でも屈指の高配当水準である。しかし、フリーフロートが極めて小さいため、個人投資家が市場で株式を取得すること自体が困難であり、流動性リスクは高い。株価も需給のゆがみから割高に推移しやすい点には留意が必要である。
日本企業のベトナム製薬市場への関与:大正製薬がDHGの過半数を握っている事実は、日本の製薬企業にとってベトナム市場がいかに魅力的かを示している。ベトナムは人口約1億人、高齢化が緩やかに進む成長市場であり、医薬品需要の拡大が続く。大正製薬にとってDHGからの配当収入(年間約6,660億ドン)は安定的なキャッシュフロー源となっている。
FTSE新興市場指数格上げとの関連:2026年9月に決定が見込まれるベトナムのFTSE新興市場指数への格上げにおいて、フリーフロート比率は重要な評価基準の一つである。DHGのようにフリーフロートが極端に小さい銘柄は、仮に格上げが実現しても指数組み入れの恩恵を受けにくい可能性がある。一方で、DHGが株式配当などで流通株式数を増やす施策を実行すれば、市場全体の流動性改善にも寄与し得る。
上場維持問題の行方:公開会社要件を満たさない状態が長期化すれば、最悪の場合は上場廃止のリスクも理論上は存在する。ただし、大正製薬・SCICの双方が上場維持を望んでおり、当局も柔軟に対応する可能性が高い。ボーナス株の発行による希薄化が実施されれば、既存少数株主にとってはプラスとなるだろう。
ベトナム製薬セクターは内需主導の成長が期待される有望分野であり、DHGはその中核銘柄である。日本企業との深い資本関係を持つ同社の今後の展開は、日越経済協力の一つの試金石として引き続き注視すべきである。
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