ベトナム賃貸住宅の電気料金不正請求に最大3,000万ドンの罰金——5月25日施行の新規定を詳しく解説

Từ 25/5, chủ nhà trọ thu tiền điện sai có thể bị phạt đến 30 triệu đồng
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ベトナムで2025年5月25日より、賃貸住宅(いわゆる「ニャーチョー」=貸し部屋・アパート)のオーナーが入居者から電気料金を規定以上に徴収した場合、2,000万〜3,000万ドンの罰金が科される新たな罰則規定が施行される。根拠となるのは政府が公布した「議定133号(Nghị định 133)」である。ベトナムでは長年、賃貸オーナーによる電気代の上乗せ請求が社会問題化しており、今回の制度強化は数百万人に上る都市部の借家人に直接影響する重要な動きである。

目次

議定133号の概要——何が変わるのか

ベトナムでは、電力会社(EVN=ベトナム電力公社)が設定する「生活用小売電力価格(giá bán lẻ điện sinh hoạt)」に基づき、各世帯が電気料金を支払う仕組みとなっている。しかし、賃貸住宅の多くでは個別の電力メーターが設置されておらず、オーナーが一括して電力会社と契約し、入居者に対して独自に電気代を請求するケースが一般的である。

問題は、この「独自請求」の際にオーナーが大幅な上乗せを行い、EVNの正規小売価格よりもはるかに高い単価で入居者に請求する慣行が横行していた点にある。たとえば、EVNの段階制料金では1kWhあたり1,800〜3,000ドン台であるのに対し、賃貸オーナーが3,500〜5,000ドン、場合によってはそれ以上を請求するケースも珍しくなかった。こうした上乗せは、共用部分の電気代や設備維持費の名目で行われることもあるが、実態としてはオーナーの追加収入源となっていた。

議定133号はこの状況に歯止めをかけるもので、賃貸オーナーが入居者から「生活用小売電力価格」を超える金額を徴収した場合、2,000万〜3,000万ドンの行政罰を科すことを明文化した。5月25日の施行以降、地方当局による取り締まりが本格化する見通しである。

背景——なぜ電気代の上乗せが社会問題なのか

ベトナムの都市部、とりわけホーチミン市、ハノイ、ビンズオン省、ドンナイ省などの工業地帯周辺には、地方から出稼ぎに来た労働者や学生が大量に居住している。彼らの多くは月額100万〜300万ドン程度の安価な貸し部屋に暮らしており、電気代の上乗せは生活費に直結する深刻な問題である。

ベトナム政府はこれまでも、賃貸オーナーに対してEVNの正規料金と同額で入居者に請求するよう求める通達を出してきたが、罰則が不明確であったため実効性に乏しかった。実際、2023年に工業貿易省(Bộ Công Thương)が実施した調査では、賃貸住宅の約7割で正規料金を上回る電気代が請求されているとの結果が出ており、改善が急務とされていた。

また、ベトナムでは夏季(4〜8月)に気温が35〜40度を超える日が続くため、エアコンの使用量が急増し、電気代が跳ね上がる。この時期に上乗せされた電気代は低所得の借家人にとって特に重い負担となる。今回の施行時期が5月末という夏本番の直前に設定されていることも、政府の意図が読み取れる。

賃貸市場への実務的影響

議定133号の施行により、賃貸オーナーには以下の対応が求められることになる。

第一に、入居者への電気料金請求額をEVNの生活用小売価格に厳密に合わせる必要がある。上乗せ分を家賃に転嫁する動きが予想されるが、賃貸市場の競争が激しい都市部では大幅な家賃引き上げは困難であり、オーナー側の収益圧迫要因となる可能性がある。

第二に、個別電力メーターの設置が加速すると見込まれる。入居者がEVNと直接契約できれば、オーナーは電気代の徴収義務から解放される。ベトナム電力公社も個別メーター設置を推進しており、今後の普及が期待される。

第三に、地方当局の取り締まり能力が問われる。ベトナム全国には数百万件の賃貸物件が存在し、すべてを監視することは現実的に難しい。入居者からの通報制度の整備や、デジタル決済の義務化による透明化など、補完的な施策が必要になるだろう。

投資家・ビジネス視点の考察

今回の規制強化は電力小売価格の適正化に焦点を当てたものであり、ベトナム株式市場全体に大きなインパクトを与えるものではないが、いくつかの観点から注視すべきポイントがある。

不動産セクターへの影響:賃貸住宅事業を展開するデベロッパーや、ワーカー向け低価格住宅を手がける企業にとっては、電気代の上乗せによる副次的収入が失われるため、収益モデルの見直しが必要となる。ただし、上場大手デベロッパー(ビンホームズ(Vinhomes/VHM)やノヴァランド(Novaland/NVL)など)は分譲中心のビジネスモデルであるため、直接的な影響は限定的である。むしろ、個別メーターの設置需要増加により、電気メーター製造企業や電気設備関連企業に追い風となる可能性がある。

EVN関連:ベトナム電力公社(EVN)は上場企業ではないが、その傘下の発電・送配電子会社にはホーチミン証券取引所に上場している銘柄もある。個別メーター普及によるEVNの顧客数増加は、長期的には配電事業の安定収益につながる。

日本企業への影響:ベトナムに工場や事務所を構える日本企業にとって、直接的な影響はほぼない。しかし、日系企業の駐在員や現地採用スタッフが賃貸住宅に居住している場合、電気代負担の適正化は生活コスト面でプラスに作用する。また、ベトナムの制度整備が進むことは、FTSE新興市場指数への格上げ(2026年9月決定見込み)に向けた「ガバナンス改善」の一環として、間接的にポジティブな材料と捉えることもできる。市場の透明性・制度の成熟度が高まることは、海外投資家の信頼獲得に不可欠だからである。

マクロ的な位置づけ:ベトナム政府はここ数年、生活インフラ分野の規制整備を加速させている。電気料金の適正化もその一環であり、都市化が進む中での「庶民の生活コスト抑制」と「法の実効性強化」を同時に推進する姿勢が鮮明である。投資家としては、こうした制度面の進化をベトナム市場の中長期的な成熟プロセスとして理解しておくことが重要である。


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出典: 元記事(VnExpress)

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