ベトナムのデータセンター急増で深刻化する電力不足問題——AI時代の「エネルギーの渇き」をどう解くか

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クラウドとAIの爆発的普及により、世界中でデータセンターの電力消費が急増している。ベトナムでも大規模データセンター建設が進むなか、電力供給が最大のボトルネックとして浮上しており、冷却技術の革新とグリーン化が急務となっている。

目次

世界のデータセンター電力消費は2028年に倍増へ

国際エネルギー機関(IEA)によると、2023年に世界のデータセンターが消費した電力は約340TWhに達し、世界全体の電力需要の1.3%を占めた。この数字はベトナム一国の総電力消費量を上回る規模である。米国単体では、データセンターの電力消費が150TWhと、同国の総電力需要の約3%に相当する。

国際データ・コーポレーション(IDC)の2024年レポートでは、世界のデータセンターの総電力消費量が2028年までに857TWhへと倍増以上になると予測されている。年平均成長率(CAGR)は19.5%。とりわけAI関連ワークロードの電力消費はCAGR 44.7%という驚異的な伸びを示し、2027年には146.2TWhに達する見通しである。

AIデータセンターが全電力の25%を消費する衝撃

ベトナム最大手の通信グループであるViettel(ベトテル)の子会社Viettel IDCが主催した「Data Center & Cloud Infrastructure Summit(DCCI Summit)2026」で、専門家らは衝撃的な数字を明らかにした。現在、世界には約11,000のデータセンターが存在するが、AIデータセンターは数としては全体の1%未満であるにもかかわらず、全データセンターの電力消費の25%を占めているという。

2030年頃には、AIデータセンターが従来型データセンターと並び、世界全体のデータセンター電力消費の半分を占めるようになると予測されている。

従来型データセンターでは1ラックあたりの消費電力は20〜30kW程度だが、AIデータセンターでは100kW、場合によっては200kWを超える。これにより電力供給、冷却、ネットワーク接続、継続運用といったあらゆる面で新たな要件が生じている。

Viettel IDCのCEO、レ・バー・タン氏は「AIデータセンターではラックあたりの電力密度が現在の5〜10kWから100〜150kWへと跳ね上がる。現在の施設で数百ラックを設置できるスペースでも、AIラックなら10台程度で電力を使い切ってしまう」と説明。「今後のデータセンター建設において、土地は最大の問題ではなくなる。電力資源こそが最も重要な要素だ」と断言した。

液体冷却とグリーン化——新世代データセンターの必須条件

ラックあたりの消費電力が急増したことで、従来の空冷システムでは限界を迎えている。新世代のデータセンターでは、リアドア冷却、ダイレクト・トゥ・チップ冷却、液浸冷却(イマージョン・クーリング)といった液体冷却技術の導入が不可欠となっている。

Climaveneta Vietnam(イタリア系冷却設備大手のベトナム法人)のナショナル・セールスディレクター、グエン・マイン・クオン氏は、ラックの消費電力が20kW以下であれば従来型の空冷で対応可能だが、70〜80kWレベルになると液体冷却(Liquid Cooling)が必須になると説明。ただし液体冷却でもCPU発熱の80〜90%しか処理できず、残り10〜20%は依然として空冷で対処する必要があるという。

現在、テクノロジー企業各社はサーバー、ネットワーク機器、冷却装置を統合した超大型ラックを開発しており、2026年末にはAIサーバー向けインフラ大手各社からこれらの製品が市場投入される見込みである。

設計段階から始まるカーボン削減

Schneider Electric Vietnam(シュナイダーエレクトリック、フランス系エネルギー管理大手のベトナム法人)のソリューション・エネルギーマネジメントディレクター、グエン・トゥアン・アイン氏は、データセンターの環境負荷を評価する際には設計・製造・運用の全ライフサイクルで見る必要があると強調した。製品の環境負荷の約80%は設計段階で決定されるため、運用時の排出削減と並行して、設備・素材に含まれる「内包炭素(エンボディドカーボン)」の削減も不可欠である。

運用面では、3相UPS(無停電電源装置)の場合、ライフサイクルにおけるCO₂排出の93%が電力使用に由来する。高効率UPSの導入によりCO₂排出を最大34%、最適運用モードでは79%削減できるという。

電力配分システムの最適化により損失を11.91%から4.91%に低減し、電力使用効率(PUE)を1.5から1.45へ改善可能。さらに冷却ソリューションの最適化を組み合わせればPUEは1.29まで改善でき、AIデータセンターで液体冷却を採用した場合はさらに低い数値が実現できるとしている。

ベトナムにおけるグリーンデータセンターの動き

データセンターはデジタル経済の中核インフラとなりつつあるが、膨大な電力消費と温室効果ガス排出が課題である。世界的にグリーンデータセンター建設の潮流が加速するなか、ベトナムでもViettelやVNPT(ベトナム郵電グループ、国営通信大手)といった主要企業がグリーンデータセンターの構築に段階的に取り組んでいる。これはベトナム政府が推進するデジタルトランスフォーメーション(DX)とグリーン成長戦略の双方に対応する動きである。

投資家・ビジネス視点の考察

本ニュースが示唆するポイントは多い。

ベトナム株式市場への影響:ベトナムではViettel系列企業やFPT(ベトナム最大手IT企業、ホーチミン証券取引所上場・ティッカー:FPT)がデータセンター事業を積極拡大している。電力需要の急増はベトナム電力公社(EVN)関連のインフラ投資銘柄、再生可能エネルギー関連銘柄にとって追い風となる。冷却設備メーカーや電力機器サプライヤーにも注目が集まるだろう。

日本企業への示唆:日本の冷却技術・省エネ技術メーカー(ダイキン、パナソニック等)にとって、ベトナムのデータセンター市場は有望な輸出・進出先となり得る。また、NTTデータや富士通といったデータセンター事業者にとっても、ベトナムでの拠点拡大は戦略的に検討すべき領域である。

FTSE新興市場指数への格上げとの関連:2026年9月に決定が見込まれるベトナムのFTSE新興市場指数への格上げが実現すれば、海外資金の大量流入が期待される。デジタルインフラの充実は格上げ後のベトナム市場の魅力をさらに高める要素であり、データセンター関連投資の加速は市場全体の底上げにつながる。

ベトナム経済全体における位置づけ:ベトナムは2024年のQuy Nhon AI Summitや各種政策でAI・デジタル経済の発展を国家戦略に位置づけている。しかし電力供給のボトルネックは深刻であり、近年は夏季の電力不足が社会問題となっている。データセンターの電力需要急増は、ベトナムのエネルギー政策全体の転換を迫る構造的課題であり、LNG火力や再生可能エネルギーへの投資拡大が不可避の状況である。


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出典: VnEconomy元記事

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