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ベトナムのオンライン消費において、ライブコマース(ライブ配信を通じた販売)が全体の約67%を占めるまでに成長していることが、調査会社QandMe(キューアンドミー)の2026年4月付レポートで明らかになった。もはや補助的チャネルではなく、EC(電子商取引)の「主柱」へと変貌を遂げたライブコマースの実態と、投資家・ビジネスパーソンが押さえるべきポイントを詳しく解説する。
ライブコマースが「主戦場」に——調査の全体像
QandMeが発表した「Vietnam Live Commerce Popularity」レポートによると、調査対象者のオンライン支出のうち約67%がライブ配信経由での購入に充てられている。さらに回答者の60%が「毎週ライブ配信を通じてオンライン購入を行っている」と答えており、ライブコマースが日常的な購買チャネルとして完全に定着した姿が浮き彫りになった。視聴時間帯は夜間の自宅視聴が30%と最多である。
人気カテゴリーはファッション、ビューティー(化粧品)、パーソナルケアの3分野。ベトナムは人口の中央年齢が約32歳と若く、スマートフォン普及率も高いため、こうしたカテゴリーとライブ配信の親和性が極めて高い。
ブランド公式アカウントがKOLの約2倍の支持を獲得
注目すべきは、約50%の消費者が「ブランド公式アカウント」のライブ配信から購入していると回答した点である。KOL(Key Opinion Leader=インフルエンサー)や有名人のチャネル経由での購入はその約半分にとどまり、信頼の重心がブランド側に移りつつあることが鮮明になった。これは企業にとって、高額なKOL起用費を削減しつつ自社チャネルで売上を伸ばせる可能性を示唆する重要なデータである。
購買行動を支配する6つのドライバー
QandMeは、ライブコマースにおける購買行動を形成する6つの動機を特定している。
- 価格比較志向(56%)——他チャネルより安い価格を求めてライブ配信を選ぶ。
- 限定クーポン・希少性(43%)——ライブ配信限定のバウチャーや時間制限付きオファーが即時購入を促す。
- アルゴリズムによるレコメンド(44%)——プラットフォームのコンテンツ配信アルゴリズムが「適切な人に適切なタイミングで」商品を届ける。
- リアルタイム実演(31%)——静止画では伝わらない疑問を、ライブでのデモンストレーションが解消する。
- KOLの信頼性(24%)——インフルエンサーの推薦が購入判断を後押しする。
- ブランド公式の信頼性(23%)——正規品であるという安心感が決め手になる。
最も強い購買決定因子は依然として「価格・プロモーション」で、回答者の82%がこれを挙げた。しかしライブコマースが従来型ECと一線を画すのは、リアルタイムの双方向性(59%)と、配信中に商品を実演・紹介できる即時性(53%)にある。これらが消費者の信頼を醸成し、購買までの意思決定時間を大幅に短縮している。
また47%の視聴者は「まだ検討段階」でライブ配信を見ており、価格・タイミング・コンテンツの3要素が揃った瞬間に購入を決断する。衝動買いは13%に過ぎず、企業は事前にブランド認知や購買意欲を育成したうえで、ライブ配信で「最後の一押し」をかける戦略が有効だとレポートは指摘する。
EC4大プラットフォームの売上動向——2026年Q1は148.6兆ドン
ベトナムの4大ECプラットフォームであるShopee(ショッピー)、Lazada(ラザダ)、Tiki(ティキ)、TikTok Shop(ティックトックショップ)の2026年第1四半期の合計売上高は148兆6,000億ドンに達し、前年同期比で46.60%の増加となった。ただしデータ分析プラットフォームMetric.vn(メトリック)の予測では、2026年第2四半期は前四半期比4.28%減の約142兆2,000億ドンに落ち着く見通しである。季節要因による若干の調整はあるものの、年間ベースでは依然として力強い成長トレンドが続いている。
業種別に異なる「説得の言語」
レポートはまた、ライブコマースに画一的な成功モデルは存在しないと警告する。ファッションでは試着やサイズ相談、家電・電子機器では正規代理店の信頼性と技術的な説明、食品・飲料(F&B)では味覚や感情に訴える演出がそれぞれ求められる。すべての商材に同じフォーマットを適用すれば、ライブ配信の効果は著しく低下するという。
投資家・ビジネス視点の考察
このレポートは、ベトナムのデジタル消費がさらに一段階成熟したことを示している。投資家として注目すべきポイントは以下の通りである。
1. EC関連銘柄への追い風:ベトナム株式市場では、ECインフラやデジタル決済に関連する銘柄(FPT〈エフピーティー、ベトナム最大手IT企業〉やMWG〈モバイルワールド・グループ、家電・EC大手〉など)が、ライブコマース拡大の恩恵を受ける可能性がある。物流企業も取扱量増加の追い風を享受するだろう。
2. 日本企業への示唆:ベトナムに進出済みの日本の消費財メーカーや化粧品ブランドにとって、ブランド公式アカウントによるライブ配信は、KOL依存を減らしつつ信頼性を武器にできる有望チャネルである。資生堂やユニクロなど、すでにベトナム市場でブランド認知を持つ企業は「公式ライブ+限定価格」の組み合わせで大きなリターンが見込める。
3. FTSE新興市場指数への格上げとの関連:2026年9月に決定が見込まれるベトナムのFTSE新興市場指数への格上げは、海外からの資金流入を加速させる。デジタル消費の急成長は、ベトナム経済の「内需主導型成長」の証左であり、格上げ審査において市場の厚みと成長性を示すポジティブな材料となる。
4. リスク要因:Q2の売上減速予測が示すように、EC市場は季節変動やプロモーション依存度の高さというリスクを内包する。また、ライブコマースの価格競争が激化すれば、出店企業の利益率が圧迫される構造的な課題もある。プラットフォーム手数料の引き上げリスクにも留意が必要である。
総じて、ベトナムのライブコマース市場は「量的拡大」から「質的深化」のフェーズに入りつつある。ブランド直営の台頭、アルゴリズム活用、業種別戦略の分化——これらのトレンドを正確に捉えることが、ベトナム消費市場での成功と、関連銘柄への投資判断の鍵を握るだろう。
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