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ベトナム最大の経済都市ホーチミン市が、長年にわたり停滞していた838件のプロジェクト・土地区画の問題解決に本格的に乗り出した。総投資額は20万6,000億ドン超、対象面積は1万7,000ヘクタール以上に及ぶ。都市開発の「詰まり」を解消するこの動きは、不動産市場や投資環境に大きなインパクトを与える可能性がある。
「計画34」の全容—838件の滞留案件とは
2025年5月6日、ホーチミン市人民委員会のグエン・ヴァン・ドゥオック主席は、関係各局との会議を主宰し、「計画34(Kế hoạch 34)」の進捗状況を確認した。計画34とは、ホーチミン市内で法的手続きや行政上の問題により長期間停滞しているプロジェクトや土地区画を一括して洗い出し、障害を除去することを目的とした市独自のイニシアティブである。
ホーチミン市財務局のクアック・ゴック・トゥアン副局長の報告によれば、統計・精査・更新の結果、市内には838件の滞留プロジェクト・土地区画が確認された。総投資額は20万6,000億ドン超、対象面積は1万7,000ヘクタール以上に達する。ホーチミン市の総面積が約2,095平方キロメートルであることを考えると、1万7,000ヘクタール(170平方キロメートル)は市域の約8%に相当する極めて広大な規模である。
進捗状況—半数以上が解決済み
838件のうち、障害除去が完了したプロジェクトは417件、おおむね完了したものが393件、現在進行中のものが28件となっている。つまり全体の約97%がすでに解決済みまたは解決の目途が立っている状況であり、市当局の強い推進力がうかがえる。
一方で、ホーチミン市監察局は、まだ完了していない案件のうち100件を選定し、遅延原因の調査・検査を継続する方針を提案した。これは関係者の責任を明確にするとともに、今後のプロジェクト管理プロセスの改善につなげる狙いがある。
背景にある法制度の転換期
ホーチミン市人民委員会のチャン・ヴァン・バイ副主席は、共産党政治局の「結論24」および国会の「決議29」に基づく新たな計画の継続的な展開が重要であると強調した。これらの政策は、2024年土地法(Luật Đất đai năm 2024)が施行される前に、長期間滞留しているプロジェクトの困難を解消し、土地関連の法令違反を処理することを目的としている。
ベトナムでは2024年に改正土地法が成立し、段階的に施行が進んでいる。新法は土地使用権の付与方法や補償基準を大幅に見直すもので、旧法下で手続きが宙に浮いたプロジェクトを新法施行前に整理しておくことは、法的安定性の確保という観点から極めて重要である。ホーチミン市が計画34を急ピッチで進めている背景には、この法制度の移行期という事情がある。
なぜホーチミン市で滞留案件が多いのか
ホーチミン市はベトナムのGDPの約2割を占める経済の中心地であり、人口約1,000万人(周辺地域を含めると推定1,300万人超)を擁する。急速な都市化が進む中で、土地収用の補償問題、複数の行政機関にまたがる許認可の遅延、法令解釈の不統一、さらには過去の汚職摘発に伴う関係者の萎縮(いわゆる「判を押さない」問題)など、複合的な要因がプロジェクトの停滞を招いてきた。
特に2022年以降、ベトナム全土で展開された反汚職キャンペーン(「焼却炉」と呼ばれる)の影響で、地方行政官が許認可の判断を先送りする傾向が顕著となり、不動産開発を中心に多くのプロジェクトが事実上凍結される事態が発生していた。計画34はこうした「行政の停滞」を打破するための具体的な取り組みとして、中央政府からも高く評価されている。
投資家・ビジネス視点の考察
今回の動きは、ベトナム株式市場、とりわけ不動産セクターに対して複数の重要なインプリケーションを持つ。
不動産関連銘柄への影響:ホーチミン市で活動する大手不動産デベロッパー——ノヴァランド(NVL)、ナムロン(NLG)、クオック・クオン・ジア・ライ(QCG)、フンティン(HTN)など——は、滞留プロジェクトの解消により開発再開・販売開始が可能となる案件を複数抱えているとされる。417件の障害除去完了は、これらの企業にとって在庫の「塩漬け」状態からの解放を意味し、収益回復への期待を高める材料となる。
日系企業への影響:ホーチミン市およびその周辺には多くの日系企業が進出しており、工業団地や物流施設の開発遅延は操業計画に直接的な影響を与える。行政手続きの円滑化は、新規進出を検討する日本企業にとってもポジティブなシグナルである。
FTSE新興市場指数への格上げとの関連:ベトナムは2026年9月のFTSE新興市場指数への格上げが有力視されている。格上げに向けては、市場の透明性や制度的な予測可能性が重視される。ホーチミン市が行政の滞留案件を組織的に解消している姿勢は、ベトナム全体のガバナンス改善の象徴として、海外機関投資家の評価を高める要因となり得る。
マクロ経済への寄与:20万6,000億ドン超の投資が動き出すことは、建設・素材・金融など幅広いセクターへの波及効果を持つ。ベトナム政府が2025年の経済成長率目標として8%以上を掲げる中、ホーチミン市の都市開発加速はその達成に向けた重要なドライバーとなるだろう。
今後は、残る28件の進行中案件や監察局が選定する100件の調査結果に注目したい。遅延の構造的原因が解明され、再発防止策が制度化されれば、ベトナムの投資環境は一段と改善に向かうことが期待される。
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