ベトナム太陽光発電大手チュンナム系企業が約1,000億ドンの赤字——累積損失1,800億ドン超の深刻度

Công ty điện mặt trời của Trung Nam lỗ gần 1.000 tỷ đồng
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ベトナムの再生可能エネルギー大手チュンナム・グループ(Trung Nam Group)傘下の太陽光発電企業「チュンナム・トゥアンナム(Trung Nam Thuận Nam)」が、2025年度に税引前損失9,700億ドンを計上したことが明らかになった。累積損失は1兆8,000億ドンを超え、同社の財務状況は極めて深刻な局面を迎えている。ベトナムの再エネセクター全体の構造的課題を象徴する事例として、投資家の注目を集めている。

目次

チュンナム・トゥアンナムとは何か

チュンナム・トゥアンナムは、ベトナム南中部のカインホア省(Khánh Hòa、ニャチャンで知られるリゾート地を擁する省)に立地する出力450MWの大規模太陽光発電所の事業主(オーナー兼投資家)である。親会社のチュンナム・グループは、ニントゥアン省(Ninh Thuận)やカインホア省を中心に太陽光・風力発電事業を積極展開してきたベトナム有数の民間再エネ開発企業だ。同グループは発電事業のほか、不動産開発やインフラ建設も手がける総合企業グループとして知られている。

450MWという規模は、ベトナム国内の太陽光発電所としてもトップクラスであり、稼働当初は同国の再エネ推進を象徴するプロジェクトとして大きな期待を集めていた。

巨額赤字の背景——FIT問題と電力購入契約の壁

今回の巨額赤字を理解するには、ベトナムの再生可能エネルギー政策の変遷を把握する必要がある。

ベトナム政府は2017年以降、固定価格買取制度(FIT=Feed-in Tariff)を導入し、太陽光発電の急速な普及を後押しした。特に2019年6月末を期限としたFIT1(1kWhあたり9.35米セント)の優遇価格は、国内外の投資家を一斉に引き付け、南中部を中心に太陽光発電所の建設ラッシュが起きた。その後、2020年末期限のFIT2(同8.38米セント)が設定されたが、多くのプロジェクトが期限内の商業運転開始に間に合わず、電力購入契約(PPA)を締結できないまま「宙に浮く」事態が続出した。

チュンナム・トゥアンナムの450MWプロジェクトも、こうした制度の狭間で翻弄された案件の一つとみられる。FIT期限に間に合わなかったプロジェクトは、ベトナム電力公社(EVN=Electricity of Vietnam、国営の電力独占企業)との間で正式なPPAが結べず、暫定的な低価格での売電を余儀なくされるか、あるいは発電しても送電網に接続できない「カーテイルメント(出力抑制)」の影響を受けるケースが少なくない。

加えて、ベトナム南中部は太陽光発電の適地が集中しているがゆえに、送電インフラの容量が発電能力の急増に追いつかず、慢性的な送電制約が発生している。発電所を建てても十分に売電できないという構造的な矛盾が、事業者の収益を圧迫し続けているのである。

財務状況の深刻さ

チュンナム・トゥアンナムの2025年度(前年度)の税引前損失は9,700億ドンに達した。これにより累積損失は1兆8,000億ドンを超える水準に膨らんでいる。大規模太陽光発電所は初期投資が巨額であり、その多くを銀行借入で賄うのが一般的だ。売電収入が計画を大幅に下回る中で、元利返済の負担が重くのしかかっている構図が容易に推察される。

累積損失が1兆8,000億ドンを超えるということは、同社の自己資本が大幅に毀損している可能性が高い。債務超過に陥っているか、あるいはその瀬戸際にある状況と考えられ、親会社であるチュンナム・グループの財務にも少なからぬ影響を及ぼしているはずである。

ベトナム再エネセクター全体の課題

チュンナム・トゥアンナムの苦境は、同社だけの問題ではない。ベトナムでは同様の事情を抱える太陽光・風力発電事業者が多数存在する。FIT制度の急な打ち切りと後継制度の策定遅延、送電網の整備不足、EVNとのPPA交渉の長期化——これらの問題は、ベトナムの再エネ投資環境に対する海外投資家の信頼を大きく損なってきた。

ベトナム政府は2023年に「電力開発計画第8次(PDP8)」を承認し、2030年までの電源構成において再エネ比率を大幅に引き上げる方針を示している。しかし、既存プロジェクトの救済策や新たな買取価格メカニズム(DPPA=直接電力購入契約制度など)の整備は遅れ気味であり、事業者の経営改善に直結するかは不透明な状況が続いている。

投資家・ビジネス視点の考察

ベトナム株式市場への影響:チュンナム・グループ自体は非上場企業であるため、同社の業績悪化が直接的に株式市場の個別銘柄に反映されるわけではない。しかし、同グループに融資を行っている銀行セクターへの間接的な影響には注意が必要である。ベトナムの商業銀行の中には、再エネ関連融資の不良債権化リスクを抱えている先があり、今後の決算で貸倒引当金の積み増しとして顕在化する可能性がある。

日本企業への示唆:日本企業はベトナムの再エネ市場に対して高い関心を持ち、太陽光・風力・LNG火力などへの投資を検討・実行してきた。今回のケースは、ベトナムにおける再エネ投資のカントリーリスク——特に制度変更リスクと送電インフラリスク——を改めて浮き彫りにしている。日本のデベロッパーや商社がベトナムの発電事業に参入する際は、PPA条件の確実性と送電網アクセスの保証を最優先で精査すべきである。

FTSE新興市場指数との関連:2026年9月に決定が見込まれるFTSE新興市場指数へのベトナム格上げは、主に市場アクセスや決済制度の改善が評価ポイントとなる。再エネセクターの個別企業の業績悪化が直接的に格上げ判断を左右することはないが、エネルギー政策の不透明性が外国人投資家のベトナム市場全体に対する信認に影響を与える可能性は否定できない。電力の安定供給は製造業を中心とするFDI(外国直接投資)の大前提であり、再エネ政策の混乱が長引けば、ベトナム経済のファンダメンタルズに対する評価にも波及しうる。

今後の注目点:チュンナム・グループが親会社として追加出資や債務再編に動くのか、あるいはプロジェクトの売却・譲渡に踏み切るのかが焦点となる。ベトナムでは経営難に陥った再エネプロジェクトを外資系企業が買収する動きも散見されており、バリュエーション次第では新たな投資機会が生まれる可能性もある。制度面では、DPPA(直接電力購入契約)の本格運用や、移行メカニズムとしての新たな買取価格の設定が進むかどうかが、セクター全体の回復の鍵を握っている。


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出典: 元記事

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