ベトナム・ホーチミン市「歩道整理」で零細商店が数cm単位の攻防——大手チェーンもビジネスモデル転換迫られる

Tiểu thương co kéo từng cm khi dẹp vỉa hè
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ベトナムの大都市で進む「歩道秩序回復運動」が、零細商人(ティエウトゥオン)の生活を直撃している。わずか数センチメートル単位で営業スペースを確保しようとする攻防が日常化する一方、大手飲食チェーンや小売チェーンも営業形態の抜本的な見直しを迫られている。都市の近代化と庶民経済の間で揺れるベトナムの今を、詳しく解説する。

目次

歩道整理とは何か——繰り返される都市秩序キャンペーン

ベトナムの都市部、とりわけホーチミン市やハノイでは、歩道(ヴィアヘー=vỉa hè)は単なる通行空間ではなく、路上屋台やバイク駐車場、商品陳列スペースとして長年活用されてきた。フォー(米麺)の屋台やバインミー(ベトナム式サンドイッチ)の売り子、プラスチック椅子を並べたカフェなど、歩道上の商売はベトナムの都市文化そのものといえる存在である。

しかし、急速な都市化と交通渋滞の深刻化を背景に、当局は繰り返し「歩道秩序回復」のキャンペーンを展開してきた。2017年にはホーチミン市1区の当時の区長ドアン・ゴック・ハイ氏が大規模な歩道整理を断行し、全国的な注目を集めた。その後も断続的に取り締まりが行われてきたが、2025年に入り再び規制強化の動きが加速している。

「1cmも譲れない」——零細商人たちの生存戦略

今回の取り締まり強化により、歩道上に商品や什器をはみ出させている零細商人たちは、文字通り「センチメートル単位」の攻防を繰り広げている。店舗の間口がわずかでも歩道に出ていれば撤去や罰金の対象となるため、商人たちは折り畳み式の陳列台を導入したり、壁面に商品を掛けるなどして、許容範囲内に収まるよう工夫を凝らしている。

ベトナムの零細商人にとって、歩道上の数十センチメートルは死活問題である。ベトナムでは都市部の店舗物件は「間口の広さ」で価値が決まる傾向が強く、間口1メートルの違いが賃料に大きく影響する。そのため、歩道を活用した陳列は家賃コストを抑える最も手軽な方法であり、これを失うことは利益の大幅な縮小を意味する。

路上販売に依存してきた高齢の女性商人や、元手が少なく固定店舗を構えられない若年層の個人事業主にとっては、代替手段を見つけるのも容易ではない。取り締まりを逃れるため、当局の巡回時間帯だけ商品を引っ込め、巡回が終わると再び広げるという「いたちごっこ」も各地で報告されている。

大手チェーンにも波及——ビジネスモデルの転換

影響を受けているのは零細商人だけではない。大手の飲食チェーンや小売チェーンも、歩道上のテラス席やサイン看板の設置が制限されることで、集客力の低下に直面している。ベトナムでは大手コーヒーチェーンのハイランズコーヒー(Highlands Coffee)やフックロン(Phúc Long)、さらには外資系のスターバックスなども、路面店では歩道側にテラス席を設けることで客を呼び込んできた。

こうした企業は今、店舗のレイアウトを屋内重視に切り替えたり、デリバリー比率を高めたり、ショッピングモール内への出店比率を増やすなど、ビジネスモデルそのものの再構築を余儀なくされている。歩道の使い方ひとつで売上が大きく変動するという構造は、ベトナムの小売・飲食業界に特有の課題である。

背景にある都市近代化の潮流

ベトナム政府が歩道整理に力を入れる背景には、都市インフラの近代化という大きな国家目標がある。ホーチミン市ではメトロ1号線(ベンタイン〜スオイティエン間)が2024年末に開業し、都市交通の近代化が急ピッチで進んでいる。整然とした歩行空間の確保は、公共交通利用促進のためにも不可欠であり、観光都市としてのイメージ向上にも直結する。

また、ベトナムは2026年9月にFTSE(フッツィー)新興市場指数への格上げ判定を控えており、外国人投資家の目を意識した「都市ガバナンスの向上」というシグナルを発信したい思惑もある。街の景観や秩序は、国際的な投資家が現地を訪問した際の第一印象に直結するため、当局としては取り締まりの手を緩めにくい状況にある。

投資家・ビジネス視点の考察

1. 小売・飲食セクターへの影響
歩道規制の強化は、路面店に依存する零細事業者を直撃する一方で、ショッピングモールやコンビニエンスストアなど「屋内型」の小売業態に追い風となる可能性がある。ベトナムの上場企業では、モール運営を手掛けるビンコム・リテール(Vincom Retail、HOSE上場ティッカー:VRE)や、コンビニ事業を拡大するモバイルワールド・グループ(Mobile World、HOSE上場ティッカー:MWG)などが間接的な恩恵を受ける可能性がある。

2. デリバリー・ECプラットフォームの成長加速
店頭販売スペースの制約は、消費者の購買行動をオンラインやデリバリーに向かわせる。グラブ(Grab)やショッピー(Shopee)といったプラットフォーム経済の拡大を後押しする構造的要因のひとつとなり得る。

3. 日本企業への示唆
ベトナムに進出している日系小売・外食企業(イオン、ミニストップ、丸亀製麺など)にとっては、歩道規制は路面店戦略の見直しを迫る要因となる。一方で、モール内出店を中心とする企業は相対的に影響が小さい。ベトナム進出を検討する日本企業は、出店形態の選択にあたり、こうした都市規制の動向を注視する必要がある。

4. FTSE格上げとの関連
直接的なつながりは薄いものの、「都市ガバナンスの改善」「法規制の透明性向上」といったソフトインフラの整備は、FTSE格上げ審査においてベトナムの制度的成熟度を示す材料となり得る。投資家心理にはプラスに作用する側面がある。

5. ベトナム経済のトレンドにおける位置づけ
歩道の秩序回復は、ベトナムが「インフォーマル経済(非公式経済)からフォーマル経済への移行」を進める過程の象徴的な事象である。屋台文化は観光資源でもあるため、完全な排除ではなく「管理された共存」のモデルが模索されている段階だ。この移行の速度と方向性は、ベトナムの中長期的な消費市場の構造変化を読み解くうえで重要な指標となる。


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出典: 元記事(VnExpress)

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