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ベトナム商工会議所(VCCI)が、EC(電子商取引)における電子インボイスの発行時期を、商品引渡し時点から「返品期限終了後」へ繰り下げるよう提案した。EC特有の返品慣行に現行制度が追いついておらず、企業の事務負担が増大している実態を踏まえた改革案である。
現行制度の問題点——「渡した瞬間にインボイス発行」がECに合わない
ベトナムの現行規定では、商品販売に係る電子インボイスの発行時期は「買い手への所有権または使用権の移転時点」と定められている。代金の支払いが完了しているか否かは問わない。輸出品(委託加工輸出を含む)についても、通関日の翌営業日までに発行する必要がある。
この規定は対面取引を前提に設計されたものであり、EC取引の実態とは大きく乖離している。ECプラットフォームでは、商品の配達完了後も7〜15日程度の返品期間が設けられるのが一般的である。VCCIは意見書の中で「この期間中、購入者は返品を行う可能性があり、電子インボイスの修正・取消しが頻繁に発生する」と指摘した。結果として、企業や個人事業主は返品のたびにインボイスの訂正手続きを行わなければならず、コストと事務負担が膨らんでいるのが現状である。
VCCIが示す2つの改革案
VCCIは、電子インボイスおよび電子証憑に関する通達草案に対し、以下の2案を提示した。
第1案:発行時期の繰り下げ
ECプラットフォーム上の取引について、電子インボイスの発行時期を「返品許可期間の終了時点」とする。これにより、返品が確定してからインボイスを発行できるため、修正・取消しの頻度が大幅に減少する。インボイスの正確性も担保される。
第2案:返品に伴う減額調整規定の新設
ECプラットフォームが定める返品期間内に商品が返品された場合、インボイス上の金額を減額調整できる規定を新たに設ける。EC特有の取引に対する法的な枠組みを明確化する狙いがある。
委任発行の届出手続きも簡素化を要求
もう一つの重要な論点が、インボイス発行の「委任」に関する届出手続きである。通達草案第5条第3項では、個人事業主や家族経営事業者がECプラットフォーム運営者にインボイス発行を委任する場合、プラットフォーム側が税務当局へ届け出なければならないと規定されている。これは電子インボイスの登録情報変更として扱われ、所定の届出手続きが求められる。
VCCIは、個別案件としては合理的な規定であっても、出店者が膨大な数に上るECプラットフォームでは委任関係が日々変動するため、一件ずつ届け出る方式は現実的でないと批判した。実際、出店者とプラットフォーム間の契約・取引はすべてオンラインで完結しており、データは透明性をもって保存・検証が可能である。
そこでVCCIは、委任に関する変更情報を月次または四半期ごとに一括報告する方式への移行を提案した。この方式であれば、管理上の透明性を確保しつつ、企業と税務当局双方の事務コストを軽減できるとしている。
投資家・ビジネス視点の考察
本件は税制・行政手続きの技術的な改正提案であるが、ベトナムEC市場の急成長を背景に、その影響は広範囲に及ぶ可能性がある。
EC関連銘柄への追い風:ベトナムのEC市場は2024年時点で200億ドル規模とも推計され、年率20%超の成長が続く。インボイス手続きの簡素化が実現すれば、プラットフォーム運営企業(MWG〈モバイルワールド〉、FPTリテールなど)やEC関連物流企業の運営効率が向上する。ホーチミン市証券取引所に上場するEC関連銘柄にとってはポジティブ材料である。
日系企業への影響:イオンベトナムやユニクロ(ファーストリテイリング)など、ベトナムでオンライン販売を展開する日系企業にとっても、返品処理に伴うインボイス修正の事務負担軽減は歓迎すべき動きである。越境EC事業者にとっては、輸出インボイスの発行期限との整合性にも注意が必要だ。
FTSE新興市場指数格上げとの関連:2026年9月に決定が見込まれるFTSE新興市場指数への格上げにおいては、市場の透明性やガバナンスの改善が評価ポイントとなる。電子インボイス制度の合理化は、ベトナムの税務・行政インフラの近代化を示すシグナルであり、間接的にではあるが格上げ評価にプラスに作用し得る。
ベトナム経済全体のトレンド:ベトナム政府はデジタル経済推進を国家戦略の柱に据えており、電子インボイスの全面義務化もその一環である。しかし、制度が実態に追いつかなければ逆に企業活動を阻害しかねない。VCCIの提案は、制度と実態のギャップを埋める現実的なアプローチとして注目に値する。今後、財政省がどの程度この提案を反映するかが焦点となる。
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