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ベトナム国家銀行(中央銀行)のグエン・ティ・ホン総裁による金利引き下げ指示を受け、各商業銀行の預金金利はやや低下傾向にある。しかし、全体的な金利水準は依然として魅力的な水準を維持しており、HDBank(ホーチミン市開発商業銀行)、OCB(オリエント商業銀行)、NCB(ナショナル・シチズン銀行)などの中堅銀行は年8〜9%という高い利率を提示している。ベトナムの預金金利動向は、株式市場への資金流入にも直接影響を及ぼすため、投資家にとって見逃せないテーマである。
中銀総裁の指示で「クールダウン」—それでも高水準が続く背景
2025年に入って以降、ベトナムの商業銀行各行は積極的な預金獲得競争を繰り広げてきた。景気回復に伴う貸出需要の増加、企業向け融資の拡大を見越した資金調達ニーズの高まりが、預金金利の上昇圧力を生んでいた。こうした動きに対し、ベトナム国家銀行のグエン・ティ・ホン総裁は、過度な金利競争がマクロ経済の安定を損なう可能性を懸念し、各銀行に金利の引き下げ・抑制を指示した。
この指示を受け、多くの銀行が短期預金を中心に金利を引き下げる動きを見せたものの、中長期の定期預金については依然として高い利率が維持されている。特に注目すべきは、以下のような銀行が年8〜9%という際立った金利を提示している点である。
- HDBank(ホーチミン市開発商業銀行):ベトナム大手航空会社ベトジェットエアの創業者グエン・ティ・フォン・タオ氏が副会長を務める有力商業銀行。個人向けリテール事業やマイクロファイナンスに強みを持つ。
- OCB(オリエント商業銀行):日本のあおぞら銀行が約15%を出資する戦略的パートナーシップを結んでおり、日本の投資家にとって馴染み深い銀行の一つである。
- NCB(ナショナル・シチズン銀行):近年、再建・経営改革を進めている中小規模の銀行で、預金獲得のために高い金利を提示する傾向がある。
ベトナムの預金金利の水準感—日本やASEAN諸国との比較
日本の読者にとって、年8〜9%という預金金利は驚異的な数字に映るだろう。日本の大手銀行の普通預金金利が0.1〜0.2%程度、定期預金でも0.3〜0.5%程度にとどまっていることを考えると、ベトナムの金利水準は桁違いに高い。もっとも、ベトナムの消費者物価上昇率(CPI)は2025年に入り年3〜4%台で推移しており、実質金利で見ても年4〜5%のプラスリターンが期待できる計算になる。
ASEAN域内で比較しても、インドネシアやフィリピンの預金金利が5〜6%台であることを考えると、ベトナムの8〜9%は相対的に高い水準にある。これは、ベトナムの銀行セクターが資金調達競争の只中にあることを反映している。
金利引き下げ指示の真意—ベトナム国家銀行の金融政策スタンス
ベトナム国家銀行が各行に金利抑制を求める背景には、複数の政策目的がある。第一に、企業向け貸出金利の低下を促し、製造業やインフラ投資など実体経済への資金供給を円滑にすること。第二に、銀行間の過度な預金獲得競争が銀行セクターの収益構造を悪化させるリスクを回避すること。第三に、為替市場の安定維持である。預金金利が急騰すればドン建て資産の魅力が増す一方で、銀行のNIM(純金利マージン)を圧迫し、経営の健全性に影響を及ぼしかねない。
ベトナム政府は2025年のGDP成長率目標を8%以上に設定しており、経済成長を支えるための緩和的な金融環境の維持が国策として重要視されている。こうした中での「金利引き下げ指示」は、成長優先の政策スタンスの表れでもある。
高金利の恩恵を受ける銀行と、金利低下で恩恵を受ける銀行
預金金利の動向は、銀行株の投資判断にも直結する。高い預金金利を提示する中小銀行は、資金調達コストが重く利益を圧迫する可能性がある一方、預金残高の積み上げによる事業拡大余地もある。他方、ベトコムバンク(Vietcombank)やビエティンバンク(VietinBank)、BIDV(ベトナム投資開発銀行)といった国有系大手銀行は、ブランド力や信用力を背景にそれほど金利を引き上げなくても預金を集められるため、NIMの面で有利な立場にある。
今後、中銀の指示に従い金利が全体的に低下していけば、調達コストが下がる大手銀行ほど利益改善の恩恵を受けやすい。このため、銀行株への投資を検討する場合は、各行の預金金利戦略と貸出ポートフォリオの質を慎重に見極める必要がある。
投資家・ビジネス視点の考察
ベトナム株式市場への影響:預金金利が高止まりしている間は、リスクを取らずとも年8〜9%のリターンが得られるため、個人投資家の資金が株式市場から預金に流れやすい構造が続く。逆に、今後中銀の指示が奏功し金利が明確な低下トレンドに入れば、株式市場への資金回帰が期待できる。2024年後半〜2025年前半にかけてベトナム株式市場(VN-Index)が伸び悩んでいた一因も、この高預金金利にあったとされる。
FTSE新興市場指数への格上げとの関連:2026年9月に決定が見込まれるFTSE新興市場指数への格上げは、海外機関投資家の大規模な資金流入を促すとされている。金利環境の正常化・安定化は、こうした格上げ審査においてもマクロ経済の安定性を示す好材料となりうる。中銀の金利コントロール能力が評価されれば、格上げに向けたポジティブなシグナルとなるだろう。
日本企業・進出企業への影響:ベトナムに進出している日本企業にとっては、現地通貨建ての借入コストに直結するテーマである。貸出金利が低下すれば、工場建設やサプライチェーン投資のファイナンスコストが軽減される。また、あおぞら銀行が出資するOCBの動向は、日越金融協力の象徴として注目に値する。高金利での預金運用が可能であることは、現地法人の余剰資金運用においてもプラス要因となる。
マクロ経済のトレンドにおける位置づけ:ベトナムは2025年、米中貿易摩擦の恩恵を受けた製造業の移転加速、FDI(外国直接投資)の堅調な流入、そして国内消費の回復という三本柱で高成長を維持している。その中での銀行セクターの資金獲得競争は、実体経済の資金需要の強さを裏付けるものであり、ベトナム経済のダイナミズムを象徴する現象といえる。
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