こんにちは、ベトナム経済&株式投資ニュース解説のベトテク太郎です。
2026年第1四半期、ベトナムの上場銀行27行の収益ランキングに「王者交代」が起きました。この記事を公開したところ、複数の方からご質問をいただきました。「なぜBIDVがあれほど落ちたのか」「VPBankはこのまま伸び続けるのか」「ABBankの+136%は本物なのか」——確かに、数字を並べるだけでは見えてこない疑問が多い内容でした。
今回は、まず今四半期に何が起きたかを整理したうえで、読者の方からいただいたご質問に一つずつ答えていきたいと思います。
2026年第1四半期、ベトナム銀行業界で何が起きたか
まず数字を整理しましょう。2026年第1四半期の上場27行の営業収益合計は190兆3,710億VNDに達し、前年同期比で15%以上の増加となりました。ベトナムの銀行業界全体が力強く成長しているのは間違いありません。
その中でトップに立ったのがVietinBankで、営業収益は25兆1,020億VND(前年同期比+23%)。一方、昨年末に過去最高の30兆720億VNDを記録したばかりのBIDVは、20兆6,980億VNDにとどまり3位に後退しました。
この落差、正直に言って驚きました。2024年第4四半期にはBIDVがVietinBankに5兆VND以上の差をつけて業界をリードしていたわけですから、わずか数四半期でこれほどの逆転が生じるとは予想できませんでした。
もう一つ注目すべき動きが、VPBankの躍進です。民間銀行首位のVPBankは営業収益19兆9,080億VNDで前年同期比+28%と業界トップクラスの伸び率を記録し、今やBIDVまでの差は約7,900億VNDにまで縮まっています。1年前にはTechcombankとほぼ同規模だったVPBankが、今ではMBの17兆4,300億VNDも上回り、国有4行の背中をとらえつつある。
さらに、ABBankの+136%、NCBの黒字転換(前年同期は大幅赤字)、BVBankの+61%といった中小行の変化が目を引く一方で、SeABankは-50%と明暗が大きく分かれる結果となりました。
Q1. BIDVの収益が急落した理由は何ですか?
これ、私も最初に数字を見たとき「本当か?」と思いました。
単純に「業績悪化」と見るのは少し早計かもしれません。ベトナムの大手国有銀行には「季節性」があります。第4四半期は融資の年間目標達成に向けた駆け込みや手数料収益の集中が起きやすく、その反動として第1四半期は一時的に落ち込むパターンが過去にも見られます。BIDVは政府系プロジェクトへの融資比率が高いため、予算サイクルの影響を受けやすいという構造的な事情もあります。
ただ、それを差し引いても見逃せないことがあります。VietinBankはBIDVより総資産が460兆VND以上少ないにもかかわらず、収益でBIDVを上回りました。「どちらが大きいか」ではなく「どちらが資産をより効率的に活用できるか」という競争軸への転換、これがこの四半期の最も重要なメッセージではないかと思っています。
リテール強化やデジタル化の進捗に差が出てきているのかもしれません。1四半期のデータだけで結論を出すのは危うく、2026年第2四半期以降のBIDVの動きを継続観察していく必要があります。
Q2. VPBankはこのまま「第5のビッグ4」になれると思いますか?
正直に言うと、可能性はあると思っています。ただし「自動的に」ではありません。
VPBankの強みは「多角化された収益構造」にあります。FE Credit(消費者金融)、富裕層向けプライベートバンキング、SME融資、そして近年力を入れているデジタルバンキング。ハノイの街を歩いていても、VPBankとFE Creditの店舗・広告の存在感は明らかに増しています。数字はその戦略が着実に実を結んでいることを示しています。
一方でリスクも存在します。消費者金融事業は景気サイクルの影響を受けやすく、不良債権比率の管理が今後の課題になります。また、国有4行が持つ「政府の後ろ盾」という信用力は、民間銀行にはないものです。数字のレースに勝つことと、本質的なビッグ4入りは別の話かもしれない。それでも、VPBankの勢いが「本物」であることは、データが証明しています。
Q3. ABBankの+136%は信頼できる数字ですか?
鋭いご質問です。率直に言うと、「額面通りには受け取れない部分がある」というのが私の見方です。
前年同期の1兆3,070億VNDというベースが相当低かったことは事実で、ベースが低ければ伸び率は大きく出ます。特定の一時的要因(有価証券売却益など)があった可能性も否定できません。
ただ、それを差し引いても、2年前と比べると収益が約2倍になっているのは事実です。NCBが1年前に2兆5,250億VNDの損失を計上していたところから黒字転換したことと合わせて見ると、ベトナムの中小銀行セクターで「再編・立て直しの成果が出始めている」という流れは確かにあると感じています。この成長が持続するかどうかは、今後2〜3四半期のデータで判断すべきでしょう。
Q4. SeABankの-50%は何が起きたのですか?
現時点で明確な答えを出すのが難しい案件です。
考えられる要因はいくつかあります。前年同期の収益が一時的な特殊要因で膨らんでいた可能性、今年の第1四半期に費用や引当金の計上が集中した可能性、あるいは本業の融資収益が実際に落ち込んでいる可能性。私の手元にある情報だけではどれが主因かを断定できません。
SeABankの決算報告書の詳細データを確認するまでは、「構造的な問題」と「一時的な振れ」の判別は保留にしておくのが誠実な態度だと思っています。次四半期以降の数字で判断する、というスタンスが適切ではないかと考えます。
Q5. この銀行業界の動きはFTSE昇格とどう関係しますか?
これが一番聞きたかった方も多いのではないでしょうか。
FTSE Russell新興国昇格の実施は2026年9月が重要なマイルストーンです。昇格によってパッシブファンドの機械的な資金流入が起きることは、「富の南下」の第四教義で詳しく解説していますが(マガジンはこちら)、銀行セクターはその恩恵を最も直接的に受けるセクターの一つです。
なぜか。ベトナムのVN-Index構成比で銀行セクターが占める割合は非常に大きく、外国人投資家が「ベトナム株式市場」を買う際に銀行株を避けることはほぼできません。VCB、BID、CTG、TCB、VPBは軒並み時価総額上位に名を連ねています。
今回のQ1データで示された「収益の格差拡大」は、昇格後の資金流入がどの銘柄に集中するかを占う上でも重要な材料になります。規模だけでなく効率性・成長性で差別化できている銀行が注目される可能性がある、というのが私の個人的な見方です。
「規模が大きければ勝ち」という時代が終わりつつあるとすれば、それはベトナムの銀行業界が成熟の段階に足を踏み入れたということでもあります。そしてその変化の中にこそ、情報を持った投資家にとっての「エッジ」が潜んでいる。そういうことなんです。
いかがでしたでしょうか。今回の2026年第1四半期ベトナム銀行業界の収益動向と読者Q&Aについて、さらにご質問があればコメント欄や@viettechtaroのDMでお待ちしています。
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