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ホーチミン市で初めて、歩道や車道の一時使用許可と料金徴収をスマートフォンアプリで一括管理する仕組みが導入された。対象はアンドン坊(旧5区)で、都市秩序管理のデジタル化を大きく前進させる試みとして注目を集めている。
アンドン坊が先行導入—何が変わるのか
今回アプリの運用を開始したのは、ホーチミン市アンドン坊(Phường An Đông、旧5区に位置)である。旧5区は華人コミュニティが多く暮らすチョロン(Chợ Lớn)地区の中心部にあたり、アンドン市場(An Đông Market)をはじめとする商業施設が密集するエリアだ。狭い路地に露店や屋台がひしめき、歩道上での商売や荷物の仮置き、バイクの駐車が日常的に行われてきた。こうした「歩道の私的利用」は、ベトナムの都市部に共通する慢性的な課題であり、歩行者の安全確保や景観維持の観点から長年問題視されてきた。
従来、歩道や車道の一時使用許可は紙ベースの申請で行われ、区役所や坊の窓口に出向く必要があった。手続きが煩雑なため無許可で歩道を使用するケースが後を絶たず、行政側も取り締まりのリソースが不足していた。今回のアプリ導入により、利用者はスマートフォン上で使用区画や期間を選択し、許可申請から料金支払いまでをオンラインで完結できるようになった。行政側もリアルタイムで使用状況を把握でき、違反の早期発見や許可の取り消しが容易になるという。
ホーチミン市が進める「都市管理DX」の全体像
ホーチミン市は近年、急速な都市化に伴い、交通渋滞、違法建築、歩道の不法占拠といった都市管理の課題が深刻化している。市当局はこれに対し、デジタル技術を活用した「スマートシティ」構想を推進しており、今回のアプリ導入はその具体的な施策の一つに位置づけられる。
ホーチミン市では2023年以降、各区・坊で歩道使用料の徴収強化が段階的に進められてきた。しかし、紙ベースの管理体制では透明性に限界があり、現場の担当者による裁量や不正が生じやすいとの指摘もあった。アプリを通じた許可・課金のデジタル化は、こうした「属人的な管理」からの脱却を目指すものであり、行政手続きの透明性と効率性を同時に高める狙いがある。
なお、ベトナムでは2024年7月に行政区画の大規模再編が実施され、ホーチミン市でも旧24区・県が統合・再編された。旧5区もこの再編の対象であり、アンドン坊は現在の新行政区画のもとで管轄されている。こうした行政再編と並行して、業務のデジタル化を進めることで、新体制への円滑な移行を図る意図もあると考えられる。
歩道経済の実態—なぜ「許可制」が重要なのか
ベトナムの都市部、とりわけホーチミン市やハノイにおいて、歩道は単なる歩行空間ではない。路上カフェ、屋台、バイク駐車場、商品陳列スペースなど、多様な経済活動の場として機能している。これは「歩道経済」(sidewalk economy)とも呼ばれ、零細事業者や個人事業主にとっては生計の基盤そのものである。
一方で、無秩序な歩道利用は歩行者の通行を妨げ、特に車椅子利用者や高齢者、子ども連れにとっては深刻な障壁となる。観光都市としてのイメージにも影響するため、ホーチミン市は「使わせない」のではなく「ルールのもとで使わせる」方針へと舵を切ってきた。今回のアプリは、この「管理された歩道利用」を技術的に実現する手段として大きな意味を持つ。
利用者にとっても、正式な許可を得ることで「いつ取り締まりを受けるかわからない」という不安が解消され、安心して事業を継続できるメリットがある。行政にとっても、料金徴収の漏れを防ぎ、歳入の安定化につながる。まさに双方にとってウィンウィンの仕組みといえる。
投資家・ビジネス視点の考察
今回のニュース自体は一地区の行政デジタル化という「ミクロ」な話題であるが、ベトナム経済・投資を考える上では複数の重要な示唆を含んでいる。
1. GovTech・スマートシティ関連銘柄への追い風
ベトナムではIT企業やフィンテック企業が行政向けソリューションの開発に積極的に取り組んでいる。FPTコーポレーション(FPT、ベトナム最大手IT企業)やVNPTグループなどが自治体向けのデジタルプラットフォームを提供しており、こうした「GovTech」需要の拡大は中長期的に関連銘柄の成長を支える要因となる。ホーチミン市の成功事例が他の省・市に横展開されれば、市場規模はさらに拡大する。
2. デジタル決済の普及加速
アプリを通じた料金徴収は、キャッシュレス決済の浸透を後押しする。ベトナムでは国家銀行(中央銀行)が2025年までにキャッシュレス比率の大幅引き上げを目標に掲げており、行政サービスのデジタル化はその強力な推進力となる。MoMo、ZaloPay、VNPayといったモバイル決済プラットフォームの取引量増加にもつながるだろう。
3. 日本企業への示唆
日本のスマートシティ関連企業や行政DX支援企業にとって、ベトナムは有望な市場である。JICAをはじめ日本の公的機関もホーチミン市の都市交通・都市管理分野で技術協力を行っており、今回のような具体的なデジタル化の進展は、日越間のビジネスマッチングの好機となり得る。特に、GIS(地理情報システム)やIoTセンサーを活用した都市管理ソリューションは、日本企業が強みを持つ分野であり、参入余地は大きい。
4. FTSE新興市場指数格上げとの関連
2026年9月に決定が見込まれるFTSE新興市場指数への格上げに向け、ベトナムは市場の透明性向上や制度整備を急いでいる。行政手続きのデジタル化・透明化は、直接的には株式市場の要件とは異なるものの、国全体のガバナンス水準の向上を示すシグナルとして海外投資家に好印象を与える。こうした「制度面での近代化」の積み重ねが、格上げ審査における定性的な評価にプラスに作用する可能性がある。
アンドン坊での試みが単なるパイロットプロジェクトに終わるのか、それともホーチミン市全域、さらには全国への展開につながるのか。今後の動向を注視したい。
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出典: 元記事












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