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ベトナム最大級のコーヒーチェーン「ハイランズコーヒー(Highlands Coffee)」が、2025年第1四半期に過去最高のEBITDA(利払い・税引き・償却前利益)を記録した。1,000店舗を超える巨大な店舗ネットワークを武器に、ベトナムの旺盛な内需を取り込んだ格好である。同社の好業績は、ベトナムのF&B(飲食)セクター全体の成長力を象徴するニュースとして注目に値する。
第1四半期EBITDAは約6億9,200万ペソ(約2,970億ドン)で過去最高
ハイランズコーヒーの2025年第1四半期のEBITDAは約6億9,200万ペソ(約2,970億ドン)に達し、同社が業績情報を公開して以来の最高水準となった。ここで通貨単位が「ペソ」となっているのは、ハイランズコーヒーの親会社であるフィリピンの大手外食企業ジョリビー・フーズ・コーポレーション(Jollibee Foods Corporation、フィリピン証券取引所上場)が連結決算をフィリピンペソ建てで発表しているためである。ジョリビーは2012年にハイランズコーヒーの株式を取得し、現在は主要株主として同ブランドの国際展開を支えている。
ハイランズコーヒーとは何者か——ベトナム・カフェ文化の象徴
ハイランズコーヒーは2002年にベトナム系アメリカ人のデイビッド・タイ(David Thai)氏によって設立されたコーヒーチェーンである。ブランド名の「ハイランズ(高原)」は、ベトナム中部高原地帯(タイグエン地方)に広がるコーヒー産地に由来する。ベトナムは世界第2位のコーヒー豆生産国(ロブスタ種では世界最大)であり、同国のコーヒー文化は日常生活に深く根づいている。路上の小さなカフェから近代的なチェーン店まで、「カフェに行く」という行為はベトナム人の生活の一部である。
ハイランズコーヒーは、こうした伝統的なカフェ文化を近代的なチェーンオペレーションに昇華させた先駆者と言える。ベトナム式の練乳入りコーヒー(カフェ・スア・ダー)やフリーズ(フローズンドリンク)などを主力商品とし、若年層からビジネスパーソンまで幅広い層を取り込んできた。店舗数は現在1,000店舗を超えており、ベトナム国内のコーヒーチェーンとしては最大規模を誇る。ホーチミン市やハノイ市の主要商業施設、オフィスビル、空港など、人が集まるあらゆる場所にハイランズコーヒーの緑色のロゴが見られる。
急成長するベトナムF&B市場の背景
ハイランズコーヒーの好業績の背景には、ベトナムのF&B市場全体の構造的な成長がある。ベトナムの人口は約1億人で、中央年齢は30代前半と若い。都市化が急速に進み、中間層が拡大するなかで、外食・カフェ消費は年々増加傾向にある。特にコーヒーチェーン市場は、ハイランズコーヒーのほか、フックロン(Phuc Long)、ザ・コーヒーハウス(The Coffee House)、スターバックスなどが激しいシェア争いを繰り広げている。
フックロンは2021年に小売大手マサングループ(Masan Group)の傘下に入り、全国のウィンマート(WinMart)店舗内に出店を加速させた。一方、スターバックスはベトナム市場で2013年の参入以来じわじわと店舗数を増やしているが、価格帯の違いもあり、ハイランズコーヒーの牙城を崩すには至っていない。ハイランズコーヒーの強みは、手頃な価格帯(一杯あたり約29,000〜55,000ドン程度)と、ベトナム人の嗜好に合った商品ラインナップ、そして圧倒的な店舗網にある。
親会社ジョリビーの戦略とハイランズの位置づけ
ハイランズコーヒーの業績は、親会社であるジョリビー・フーズの連結決算に組み込まれている。ジョリビーはフィリピン最大のファストフード企業であり、フィリピン国内では「国民食」とも呼ばれるジョリビー・バーガーで知られる。同社はアジアを中心にグローバル展開を進めており、ベトナムではハイランズコーヒーのほかにも複数のブランドを運営している。ジョリビーにとって、ベトナム事業は東南アジア成長戦略の中核のひとつであり、ハイランズコーヒーの過去最高益は同社の国際事業ポートフォリオの好調さを裏付けるものである。
ジョリビーがフィリピンペソ建てで決算を発表するため、為替変動の影響には注意が必要である。ベトナムドン/フィリピンペソの為替レートによっては、ベトナムドンベースの実質的な成長率と、ペソ建ての数値にはズレが生じうる。ただし今回の「過去最高」という評価は、そうした為替要因を差し引いても堅調な事業成長を反映していると見られる。
投資家・ビジネス視点の考察
ベトナムF&B関連銘柄への示唆:ハイランズコーヒーは直接ベトナム株式市場に上場しているわけではないが、同社の好業績はベトナムの消費セクター全体の力強さを示唆している。ホーチミン証券取引所(HOSE)に上場するF&B関連銘柄、例えばマサングループ(MSN)やビナミルク(VNM)などの消費関連株にもポジティブな波及効果が期待できる。ベトナムの内需主導型成長が続く限り、消費セクターは引き続き投資妙味のある領域である。
日本企業への影響:日本からもベトナムのF&B市場への参入や投資が相次いでいる。丸亀製麺を展開するトリドールホールディングスや、日本発のコンビニ各社がベトナムで積極展開しているが、ハイランズコーヒーの強さはベトナム消費者の「ローカルブランドへの信頼」の厚さを物語っている。日本企業がベトナム市場で成功するためには、現地の嗜好や価格帯への適応が不可欠であることを改めて示す事例と言えるだろう。
FTSE新興市場指数との関連性:ベトナムは2026年9月にFTSE新興市場指数への格上げが決定される見通しであり、格上げが実現すれば大量の外国資金がベトナム株式市場に流入すると予想されている。消費セクターは外国人投資家にとっても理解しやすく、安定成長が見込めるため、格上げ後の資金流入の受け皿となりうる。ハイランズコーヒーのような内需型企業の好調は、ベトナム市場全体のファンダメンタルズの健全性を海外投資家にアピールする材料にもなる。
ベトナム経済全体の文脈:2025年に入り、ベトナム政府は内需拡大と消費促進を重要政策として掲げている。VAT(付加価値税)の軽減措置延長や、観光促進策など、消費を後押しする政策が相次いでおり、ハイランズコーヒーの過去最高益はこうしたマクロ環境の追い風も受けた結果と言えるだろう。
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