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ベトナム最大級の外資系運用会社ドラゴン・キャピタル(Dragon Capital)の専門家が、ビングループ(Vingroup、ベトナム最大のコングロマリット)傘下の株式群が足元で急騰している状況について「不合理ではない」との見解を示した。財務の健全性に照らせば株価上昇は正当であり、むしろベトナム市場の他の主力(大型)銘柄と比較すると依然として割安水準にあるという。ホーチミン証券取引所(HOSE)の時価総額の相当部分を占めるビングループ関連株の評価が市場全体の方向感を左右するだけに、投資家にとって極めて重要なメッセージである。
ビングループ株急騰の背景
2025年に入ってから、ビングループ(VIC)をはじめ、不動産開発のビンホームズ(Vinhomes、VHM)、電気自動車(EV)メーカーのビンファスト(VinFast、VFS)など、グループ傘下の上場銘柄が軒並み大きく値を上げている。ベトナムのVN指数が年初来で堅調に推移するなかでも、ビングループ関連株の上昇率は市場平均を大きく上回るペースで推移してきた。
こうした急騰に対しては、一部の市場参加者から「過熱ではないか」「実態を伴わない投機的な上昇ではないか」といった懸念の声も出ていた。特に個人投資家比率が高いベトナム市場では、テーマ株への資金集中が過度なバリュエーションの歪みを生むことが過去にも繰り返されてきた経緯がある。
Dragon Capitalの見解——「財務の裏付けがある」
この懸念に対して、ドラゴン・キャピタルの専門家は明確に反論した。同社の分析によれば、ビングループの株価上昇はグループ全体の財務体質の改善と事業ポートフォリオの拡充にしっかり裏打ちされたものであり、決して「不合理(vô lý)」ではないという。
さらに注目すべきは、現在の株価水準をもってしても、ベトナム市場の他の「柱(trụ)」と呼ばれる大型銘柄——たとえば銀行セクターの主力株や消費財大手——と比較すると、バリュエーション面ではまだ低い位置にあるとの指摘である。ドラゴン・キャピタルはベトナム株式市場で20年以上の運用実績を持ち、運用資産総額は数十億ドル規模に達するとされる。外資系ファンドの「最古参」ともいえる存在であるだけに、その分析は市場での信頼度が高い。
ビングループの事業構造と近年の変化
ビングループは、創業者のファム・ニャット・ヴォン(Phạm Nhật Vượng)会長が率いるベトナム最大の民間企業グループである。不動産開発(ビンホームズ)、商業施設運営(ビンコム・リテール=Vincom Retail、VRE)、EV製造(ビンファスト)、教育(ビンスクール)、医療(ビンメック)など多角的に事業を展開している。
近年のグループ戦略で最も大きな転換点となったのが、ビンファストのEV事業への経営資源の集中である。ビンファストは2023年に米ナスダック市場にSPAC経由で上場を果たし、北米やインドネシアなど海外市場への販路拡大を加速させてきた。当初は巨額の赤字が懸念材料とされたが、販売台数の着実な増加や、ベトナム国内でのEVシフトの追い風を受け、投資家の見方は徐々に好転しつつある。
不動産事業の柱であるビンホームズも、ベトナム国内の都市化と中間層拡大を背景に、ハノイやホーチミン市近郊で大型プロジェクトを相次いで立ち上げている。2024年後半以降の不動産市場の回復基調も、株価のサポート材料となっている。
ベトナム株式市場における「柱銘柄」の存在感
ベトナム株式市場では、VN指数の構成比率が高い大型銘柄を「cổ phiếu trụ(柱銘柄)」と呼ぶ。銀行株(VCB=ベトコムバンク、BID=BIDVなど)、ビングループ関連株、そしてモバイル・ワールド(MWG)やFPTコーポレーション(FPT)などのIT・小売株がその代表格である。
ドラゴン・キャピタルが「他の柱銘柄より割安」と指摘したことは、つまりビングループ関連のPER(株価収益率)やPBR(株価純資産倍率)が、銀行大手やIT大手と比べてまだ低い水準にとどまっているということを意味する。ベトナム市場全体が外国人投資家の注目を集めるなかで、こうしたバリュエーション・ギャップは、資金流入の余地がまだあることを示唆している。
投資家・ビジネス視点の考察
1. ベトナム株式市場への影響
ビングループ関連銘柄はVN指数の時価総額に占めるウエートが極めて大きいため、これらの銘柄の動向は指数全体のパフォーマンスに直結する。ドラゴン・キャピタルのような大手ファンドが「まだ割安」と公言した意味は大きく、今後も国内外の機関投資家による買いが継続する可能性がある。
2. FTSE新興市場指数への格上げとの関連
ベトナム株式市場は2026年9月にもFTSE(フッツィー)の新興市場指数への正式格上げが決定される見込みである。格上げが実現すれば、世界中のパッシブファンドからベトナム市場への資金流入が一気に加速する。大型で流動性の高いビングループ関連株は、こうしたインデックス資金の受け皿として真っ先に恩恵を受ける銘柄群となる。格上げ前の「仕込み段階」において、ドラゴン・キャピタルの発言は投資家に対するシグナルとして機能し得る。
3. 日本企業・日本人投資家への示唆
ビングループは日本企業との接点も多い。ビンファストのEV部品サプライチェーンには日系部品メーカーが関与しており、ビンホームズの大型住宅開発では日系ゼネコンが施工に参画するケースもある。ビングループの企業価値が市場で再評価されることは、関連する日本企業のベトナム事業にもプラスに作用するだろう。
また、ベトナム株式への直接投資を行っている日本の個人投資家にとっても、「急騰=バブル」と短絡的に判断するのではなく、ファンダメンタルズに基づいた冷静な評価が必要であることを、今回のドラゴン・キャピタルの分析は示している。
4. ベトナム経済全体のトレンドにおける位置づけ
ベトナムは2025年もGDP成長率7〜8%台を目標に掲げ、製造業の輸出拡大、内需の回復、インフラ投資の加速といった複合的な成長ドライバーを有している。ビングループはその「内需・都市化・テクノロジー」の三つの成長軸を体現する企業であり、同グループの株価動向はベトナム経済の構造的な成長ポテンシャルを映す鏡ともいえる。
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出典: 元記事












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