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ハノイ市が、地下構造物の建設および都市地下空間の開発・活用を促進するため、土地使用料の全額免除や優遇融資、PPP(官民連携)への財政支援など包括的な優遇政策を盛り込んだ決議案を策定し、現在パブリックコメントを募集している。気候変動に伴う深刻な都市浸水問題を背景に、地下インフラ整備を一気に加速させる狙いである。
決議案の背景——深刻化するハノイの都市問題
近年、気候変動の影響でハノイでは大規模な豪雨が頻発し、都市部の浸水被害が年々深刻化している。地上の交通インフラはすでに飽和状態にあり、慢性的な渋滞や駐車場不足も市民生活を圧迫している。こうした「都市のボトルネック」を解消する切り札として、ハノイ市人民評議会(HĐND、地方議会に相当)は地下空間の本格的な開発・利用に向けた優遇制度の整備に着手した。
対象となる地下構造物は多岐にわたる。具体的には、①地下交通施設(地下鉄関連施設、地下道路トンネルなど)、②地下技術インフラ(共同溝、上下水道など)、③地下公共施設、④多機能地下空間、⑤国防・安全保障・治安維持のための地下施設——の5カテゴリーが明記されている。
土地・用地に関する優遇政策
決議案の柱の一つが、土地・用地面での大幅な優遇措置である。ハノイ市は、人民評議会決議第433号(第1期)で承認された「投資奨励対象地下構造物リスト」に基づき、計画済み・投資承認済みの地下プロジェクトへの投資を優先的に推進する方針を示している。
注目すべきは、社会化(民間資本の活用)方式で建設される地下構造物について、投資家が計画上の総建築床面積の最大30%を商業サービスや駐車場支援サービスの運営に充てることが認められる点である。これにより、民間投資家は地下施設の一部を収益源として活用でき、投資回収の道筋が立てやすくなる。
さらに、計画に基づく地下駐車場プロジェクトの場合は、総建築床面積の最大50%を支援サービス・商業サービスに利用可能とする(うち支援サービスは最低25%)。ただし、計画上の駐車容量を確保し、現行の設計基準・技術基準を遵守することが条件となる。
加えて、地下構造物の建設・投資実施期間中、土地賃借料および地下空間使用料を全額免除するという大胆な措置も盛り込まれている。地下工事は工期が長く初期コストが膨大になるため、この免除措置は投資家にとって極めて大きなインセンティブとなる。
融資・税制に関する優遇政策
資金面では、地下構造物の建設プロジェクトに対し、ハノイ市投資開発基金(Quỹ đầu tư phát triển Thành phố)から優遇金利での融資を受けられる制度が設けられる。融資を受けるには、事業可能性調査報告書、明確な財務計画、そして環境保護基準の遵守とクリーンテクノロジーの採用に関するコミットメントを提示する必要がある。
税制面では、新規投資プロジェクトを実施する企業の所得に対する免税・減税期間が設定され、その起算点は当該プロジェクトから課税所得が初めて発生した年度からとなる。
行政手続きの簡素化と技術支援
決議案は、投資環境の改善にも踏み込んでいる。計画承認済みかつ投資方針の承認を得た地下構造物プロジェクトで、商業融資の条件を満たす企業に対しては優先的な支援を行う。特に、ハイテク技術や環境配慮型技術を採用するプロジェクトには、許認可の優先付与、融資へのアクセス支援、財政支援策の適用が認められる。
行政面では、投資・建設・環境に関する書類手続きについて、各局・各部門・各地方間のワンストップサービス(一括窓口)体制を導入する。ベトナムでは行政手続きの煩雑さが投資障壁として長年指摘されてきただけに、この改革は民間投資家にとって歓迎すべき動きである。
国家予算による支援——PPPプロジェクトへの手厚い措置
PPP方式による地下構造物プロジェクトに対しては、国家予算から計画策定、投資準備、融資支援、資本支援を優先的に配分する。
特筆すべきは、PPPプロジェクトにおいて補償・支援・再定住費用が総投資額の50%超を占め、かつ事業のキャッシュフロー上、投資回収が困難と判断される場合には、国家予算がこれらの費用の一部または全額を負担するという規定である。ただし、その上限は当該PPPプロジェクト総投資額の70%までとされている。
また、自動化技術、新素材、クリーンエネルギーを活用する地下構造物プロジェクトに対しては、人材育成、研究開発、技術移転・科学技術応用にかかる費用を国家予算から支援する。
投資家・ビジネス視点の考察
今回の決議案は、ハノイの都市開発における大きな転換点となり得る。以下の観点から注目に値する。
ベトナム株式市場への影響:地下インフラ建設の本格化は、建設・ゼネコンセクター、建材セクター、さらには地下鉄関連の機械・設備セクターに恩恵をもたらす可能性がある。ハノイではメトロ3号線(ニョン〜ハノイ駅間)の建設が進行中であり、今後の地下路線延伸計画とも連動する。PPP方式の活用拡大は、インフラ関連のリーディング企業にとって受注機会の拡大を意味する。
日本企業への影響:日本はハノイのメトロ建設(都市鉄道)においてODA(政府開発援助)を通じた最大の支援国であり、地下トンネル技術やシールドマシン技術でも世界トップクラスの実績を持つ。今回の優遇策により、日系ゼネコンや地下インフラ関連企業がハノイ市場に参入・拡大する好機が生まれる。共同溝(ユーティリティトンネル)技術や地下駐車場の運営ノウハウも、日本企業が強みを発揮できる分野である。
FTSE新興市場指数との関連:2026年9月に決定が見込まれるFTSE新興市場指数への格上げに向け、ベトナムはインフラ整備と制度改革を加速させている。地下空間開発のような大規模インフラ投資は、都市の国際競争力を高め、外国人投資家にとってのベトナム市場の魅力向上に寄与する。行政手続きのワンストップ化も、投資環境改善の文脈で格上げ審査にプラスに作用する要素である。
ベトナム経済全体のトレンド:ベトナムは2045年までに先進国入りを目指す長期ビジョンを掲げており、ハノイとホーチミン市の二大都市圏における都市インフラの近代化は最重要課題の一つである。地下空間の活用は、限られた都市の地上スペースを最大限に生かしつつ、防災機能を強化するという「二兎を追う」戦略であり、今後ホーチミン市など他都市への波及も想定される。
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出典: 元記事












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