ハノイ在住13年の現地投資家による、より深い企業分析・投資戦略は👉 メンバーシップで公開中
エルニーニョ現象が2025年6月から再び発生し、2027年まで継続する可能性があるとの予測が発表された。ベトナムでは猛暑の激化、干ばつや塩水遡上(海水が河川上流へ侵入する現象)のリスク増大、さらに非常に強力な台風の発生が懸念されている。農業大国ベトナムにとって、エルニーニョの再来は食料生産からインフラ、電力供給に至るまで広範な経済的影響をもたらしかねない重大な気象リスクである。
エルニーニョとは何か——ベトナムへの影響の特殊性
エルニーニョは、太平洋赤道域の海面水温が平年より高くなる気候現象で、世界各地に異常気象をもたらすことで知られる。ベトナムにおいては、エルニーニョが発生すると以下のような影響が典型的に観測される。
- 猛暑の長期化・激化:特に中部・南部で気温が平年を大幅に上回り、40度超えの日が続くことがある。
- 干ばつの深刻化:メコンデルタ(ベトナム南部の穀倉地帯、全国のコメ生産量の約半分を占める)や中部高原(タイグエン地方、コーヒー栽培の中心地)で水不足が顕著になる。
- 塩水遡上(xâm nhập mặn)の拡大:メコンデルタでは上流からの淡水流量が減少し、海水が河川を遡上。農業用水や飲料水の確保が困難になる。前回2023〜2024年のエルニーニョでも、メコンデルタの複数省で深刻な塩害が報告された。
- 台風の大型化:エルニーニョ期には東海(南シナ海)で発生する台風が少なくなる一方、発生した台風は非常に強力になる傾向がある。ベトナム中部沿岸は台風の直撃を受けやすく、過去にも甚大な被害が出ている。
2025年6月からの再来——予測の詳細
今回の予測によると、エルニーニョは2025年6月に発生し、2027年にかけて持続する可能性がある。直近では2023年半ばから2024年前半にかけてエルニーニョが発生しており、わずか1年程度のインターバルでの再来となる。通常、エルニーニョとラニーニャは2〜7年周期で交互に発生するが、近年は気候変動の影響もあり、エルニーニョの発生頻度や強度が従来のパターンから外れるケースが増えている。
ベトナム気象当局や国際機関の予測では、今回のエルニーニョが長期化する場合、特に2026年の夏季(6〜8月)にかけて猛暑のピークが到来し、干ばつと塩水遡上が最も深刻化するシナリオが想定されている。
農業・水産業への直接的打撃
ベトナムは世界有数のコメ輸出国であり、コーヒー(ロブスタ種で世界最大の生産国)、カシューナッツ、エビなどの農水産物輸出大国でもある。エルニーニョによる干ばつや塩水遡上は、これらの生産に直結する脅威である。
メコンデルタでは、2015〜2016年のエルニーニョ時に約60万ヘクタールの農地が塩害の影響を受け、コメの生産量が大幅に減少した過去がある。中部高原ではコーヒー農園の灌漑用水が不足し、収穫量の減少や品質低下が懸念される。国際的なコーヒー価格の高騰要因にもなり得るため、グローバルなコモディティ市場への波及も注視すべきである。
また、猛暑と水不足は水力発電の出力低下を招く。ベトナムの電源構成において水力発電は依然として重要な比率を占めており、2023年のエルニーニョ時には北部を中心に深刻な電力不足が発生し、工業団地で計画停電が実施された前例がある。製造業への影響は、日系企業を含む外資系企業にとっても切実な問題である。
インフラ・都市部への影響
猛暑の長期化は電力需要の急増を招き、ベトナム電力公社(EVN)の供給体制が試される。一方、エルニーニョ後半に発生しうる強力な台風は、中部沿岸のダナン、フエ、クアンナムといった都市やリゾート地に甚大な被害をもたらすリスクがある。インフラ復旧費用の増大は国家財政にも影響する。
投資家・ビジネス視点の考察
エルニーニョの再来は、ベトナム株式市場においても複数のセクターに影響を及ぼす可能性がある。
【農業・食品関連銘柄】コメや水産物の生産減少リスクは、農業セクターにとってネガティブ材料である。一方、国際的なコメ価格の上昇が見込まれる場合、輸出企業にとっては価格面でのプラス要因にもなりうる。ロクチョイ・グループ(LTG)などコメ輸出関連銘柄や、ミンフー水産(MPC)などエビ養殖大手の動向に注目が集まる。
【電力・エネルギー関連】水力発電の出力低下は、火力発電やガス発電の稼働率を押し上げる。ペトロベトナム・ガス(GAS)やペトロベトナム・パワー(POW)などが恩恵を受ける可能性がある。逆にベトナム電力公社グループ傘下の水力発電企業は業績悪化リスクを抱える。
【建設・建材関連】台風被害後の復旧需要は、セメントや鉄鋼、建設セクターに短期的な需要増をもたらす可能性がある。
【日系企業・進出企業への影響】北部の工業団地に進出している日系製造業にとって、電力不足の再発は生産計画に直結するリスクである。サプライチェーンのBCP(事業継続計画)において、自家発電設備の導入や電力契約の見直しが改めて重要テーマとなる。
【FTSE新興市場指数との関連】2026年9月にベトナムのFTSE新興市場指数への格上げ判断が見込まれている中、エルニーニョによる経済混乱がマクロ指標に影響を与えれば、市場全体のセンチメントにもマイナスに作用しうる。ただし、格上げ判断の主眼は市場アクセス要件(決済制度やNTP口座の導入)であり、気象リスクが直接的に格上げ可否を左右する要素ではない。むしろ、気候リスクへの政府の対応力やインフラ整備の進展が中長期的な投資判断材料となる。
ベトナム経済は2025年に8%成長を目指す高成長路線にあるが、エルニーニョの再来は農業GDP(全体の約12%)を中心に成長率の下振れ要因となりうる。投資家は気象予測の推移を注視しつつ、セクターごとのリスクと機会を冷静に見極める必要がある。
いかがでしたでしょうか。今回のニュースについて、皆さんのご意見もぜひお聞かせください。コメント欄や@viettechtaroのDMでお待ちしています。
この記事が参考になったら、ぜひXでシェアしていただけると嬉しいです。より多くの方にベトナム投資の魅力を伝えたいと思っています。
ハノイ在住13年日本語で毎日配信。
✅ 個別銘柄の詳細分析 ✅ FTSE格上げ関連速報 ✅ 現地だからわかるリアルタイム情報
👉 月額980円でメンバーシップに参加する
出典: 元記事












コメント