こんにちは、ベトナム経済&株式投資ニュース解説のベトテク太郎です。
「数字は良くなった。でも株価は戻っていない。」
こういう状況、投資家として一番もどかしいんですよね。わかります。ハノイのスーパーで地元産のパンガシウスを買うたびに、ああこれがVHCの商品なんだなとか、ふと考えてしまうのですが、その会社の決算が良くても株価がついてこないという現象は、今のベトナム水産セクターがまさにそれです。
今回は、VietstockFinanceの統計をもとにした2026年第1四半期の水産業決算について整理していきます。
17社合計で純利益が63%増——数字の概要
上場している水産関連企業17社の2026年第1四半期の合計数字から見ていきましょう。
総売上高は16兆7000億VNDを超え、前年同期比で24%の増収となりました。そして純利益は8680億VNDに達し、前年同期比で63%以上の増加です。
24%の増収で63%の増益。つまり利益の伸び率が売上の伸び率を大幅に上回っているわけで、これはセクター全体として利益率の改善が起きているということを示しています。昨年は関税ショックで苦しんだ企業が多かったわけですが、コスト面の改善や製品ミックスの高付加価値化が効いてきているということです。
牽引役はパンガシウスとエビの2本柱
VHCが近年最高の第1四半期利益を更新
業界の盟主ともいえるVinh Hoan(VHC)は今回の決算でも存在感を示しました。売上高は約2兆9500億VND(前年同期比+12%)、純利益は2660億VND(+38%)。VHCにとっては近年最高の第1四半期利益となっています。
経営陣のコメントが興味深くて、「パンガシウスの生産量と販売価格の両方が改善した」としつつ、「海洋魚の供給量が減少する中でティラピアなどの白身魚需要が増えている」と評価しています。パンガシウス一本足打法から脱却して、白身魚のグローバルな需給の波を取り込んでいるということです。
ANVは66%増収、米国向けティラピアが効いた
Nam Viet(ANV)の伸びはさらに大きく、売上高が前年同期比66%増の1兆8400億VND超、純利益は48%増の1950億VNDに達しました。
ANVについてはFPT証券(FPTS)の分析が参考になります。「ベトナム産ティラピアが中国産ティラピアと比べて大幅に低い関税の恩恵を受けた」という点が利益拡大の大きな要因として挙げられています。ドナルド・トランプ大統領の相互関税をめぐる混乱が、皮肉にもベトナムのティラピア輸出業者にとっては追い風になったという構図です。
IDIは粗利益率が8.8%から15.3%へ
IDI(IDI)は売上高こそ約1兆5000億VNDとほぼ横ばいでしたが、純利益は400億VNDを超え前年同期比54%増。注目すべきはパンガシウス事業の粗利益率が8.8%から15.3%へと大幅に改善した点です。売上が増えなくても、利益率が上がれば利益は増えるというシンプルな話で、IDIはこの「利益の質の改善」が今回の主役でした。
MPCは純利益が約12倍——エビ大手の底力
エビ分野ではMinh Phu(MPC)が圧倒的な数字を出しました。売上高5兆7000億VND超(前年同期比2倍)、純利益2080億VND(前年同期比約12倍)。高付加価値製品への集中戦略が利益率の「抜本的な改善」につながったとMPC自身が説明しています。これは事業ポートフォリオの転換が成果として現れた好例だと思います。
好調でなかった企業も存在する
ここで少し立ち止まりたいと思います。全体が好調というわけではありません。
Camimex(CMM)は売上高がわずかに増加したにもかかわらず、純利益は26%減の約220億VNDとなりました。金利費用と管理費の増加が足を引っ張りました。Thuan Phuoc(THP)は粗利益がほぼ倍増しながらも、輸入税と相殺関税の急増によって純利益がわずか36億VNDにとどまりました。
こういう企業が混在しているということは、セクター全体が一様に改善したのではなく、「コスト構造をどう整備したか」と「高付加価値製品に転換できたか」で明暗が分かれている段階だということです。そういうことなんです。
VASEP発表の輸出統計——中国・香港が最大の牽引役
VASEPによると、2026年第1四半期の水産物輸出額は26億4000万ドルで、前年同期比14.4%増となりました。
品目別では、エビが10億ドルを超え輸出総額の40%以上を占める最大品目。パンガシウスは5億1400万ドル近くで約17%増です。ティラピア、ロブスター、ホタテ、カキなども成長しており、高付加価値製品全般への需要が厚くなっていることがうかがえます。
市場別で最も印象的なのは中国・香港で、輸出額が前年同期比49%増の7億4400万ドルに達しています。一方、米国は7.4%減少、EUは横ばいに近い水準でした。米国依存から中国需要へのシフトというより、中国が急拡大しつつ米国依存リスクも顕在化しているという複合的な状況です。
株価はまだ「完全な回復」ではない
業績が改善しているのに、株価が以前の水準に戻っていないというのが今のベトナム水産セクターの現実です。
VHCは現在1株あたり約6万VNDで取引されており、昨年の安値から約40%上昇しています。しかし関税ショック前に記録していた7万VND台の水準にはまだ達していません。FMCも現在3万8000VND前後で、かつての4万5000VND前後を下回っています。IDIに至っては、6200VND前後という水準で、ほぼ安値圏内のままです。
これをどう読むか、ですよね。
一つには「市場がまだ業績の改善を信頼していない」という解釈があります。関税の行方が不透明で、いつまた急落するかわからないという警戒感が株価に折り込まれているとも言えます。もう一つには、「業績改善は本物だが、株価の回復はこれから」という見方もできます。
どちらが正しいかは、今後の関税交渉や輸出の継続性次第で変わってきます。投資判断はご自身の方針でご判断いただく部分になりますが、少なくとも「決算の中身が変わってきた」という事実は押さえておいて良いと思います。
FTSE昇格との文脈で見ると
最後に少し大局的な話をすると、ベトナム市場は2026年9月21日からFTSE Russell二次新興市場への段階的な組み入れが始まります。パッシブ資金の流入が始まるという「メカニズム」が動いているわけで、水産セクターはその文脈の中でどう位置づけられるか。
個別業種として直接的な連動があるわけではありませんが、マーケット全体への資金流入は個別銘柄にも波及します。業績が改善していて、かつ株価がまだ以前の水準に戻っていないというセクターは、そういう意味で一つの観察対象になり得るかもしれません。
詳しくは「富の南下」シリーズでも書いていますので、ぜひ合わせてご覧ください。 https://note.com/gonviet/m/m88eefc2a6c74
いかがでしたでしょうか。今回のベトナム水産業2026年Q1決算について、皆さんのご意見もぜひお聞かせください。コメント欄や@viettechtaroのDMでお待ちしています。
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