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ベトナムを代表するテクノロジー企業VNG(VNGコーポレーション、ホーチミン市証券取引所ティッカー未上場・UPCoM市場で取引)が、2025年度の事業計画として税引前利益4,500億ドンの黒字化目標を掲げた。実現すれば、5年連続で続いた赤字にようやく終止符が打たれることになる。ベトナムのテック業界を牽引してきた同社の「復活宣言」は、投資家にとって見逃せないシグナルである。
VNGとは何者か——ベトナム・テック業界の「顔」
VNGは2004年に設立されたベトナム発のテクノロジー企業であり、当初はオンラインゲームの配信・運営からスタートした。その後、メッセージアプリ「Zalo(ザロ)」を開発・展開し、ベトナム国内で圧倒的なシェアを獲得。Zaloは現在、ベトナムの日常生活に欠かせないコミュニケーションインフラとなっており、月間アクティブユーザーは7,000万人を超えるとされる。日本で言えばLINEに相当する存在である。
さらに、電子決済サービス「ZaloPay(ザロペイ)」、クラウドサービス、AIプラットフォーム、音楽配信「Zing MP3」など、事業領域を多角化してきた。ベトナム政府が推進するデジタルトランスフォーメーション(DX)政策の中核的な民間プレーヤーの一つでもある。
2023年末にはナスダック市場への上場も果たし、「ベトナム初のナスダック上場テック企業」として国際的な注目を集めた。しかし、上場後の株価は期待ほど伸びず、業績面でも赤字体質からの脱却が課題として残されていた。
5年連続赤字の背景——成長投資と収益化のジレンマ
VNGが赤字を計上し続けてきた最大の要因は、ZaloPayをはじめとするフィンテック事業への大規模な先行投資である。ベトナムでは近年、MoMo(モモ)やShopeePay(ショッピーペイ)など複数の電子決済プレーヤーがしのぎを削っており、ユーザー獲得のためのプロモーション費用やインフラ整備費用が膨大にかかっていた。
加えて、クラウドコンピューティングやAI関連の研究開発費も増大。VNGは「ベトナムのテックジャイアント」としてのポジションを維持・強化するために、短期的な利益よりも中長期の成長を優先する戦略を採ってきた。こうした構図は、かつてのアマゾンや楽天の成長期に通じるものがある。
しかし、5年という赤字期間は投資家の忍耐を試すには十分な長さであり、市場からは「いつ黒字化するのか」という声が年々強まっていた。
2025年度計画の具体像——4,500億ドンの黒字目標
VNGが打ち出した2025年度の事業計画では、税引前利益として4,500億ドンの達成を目指すとされている。この数字は、同社にとって2020年以降初めての黒字目標であり、経営陣が収益化に対する明確なコミットメントを示したものと解釈できる。
黒字化の背景には、いくつかの要因が考えられる。第一に、ZaloPayの加入者基盤が一定規模に達し、プロモーションコストの効率化が進んでいること。第二に、ゲーム事業が引き続き安定的なキャッシュフローを生み出していること。第三に、クラウドやAIサービスの法人向け展開が収益貢献フェーズに入りつつあることである。
また、ナスダック上場企業として国際的な投資家の監視下に置かれていることも、経営規律の強化につながっている可能性がある。赤字を放置し続ければ、海外投資家の離反を招くリスクがあるためだ。
ベトナム・テックセクターの現在地
VNGの黒字化計画は、ベトナムのテクノロジーセクター全体の成熟を象徴する動きでもある。ベトナムは人口約1億人のうち、平均年齢が30代前半と若く、スマートフォン普及率も高い。デジタル経済の市場規模は2025年に430億ドルに達するとの予測(Google・Temasek・Bain共同レポート)もあり、東南アジアの中でもインドネシアに次ぐ成長市場として位置づけられている。
FPTコーポレーション(ベトナム最大のIT企業、日本のNTTデータやトヨタとも取引実績あり)が堅調な業績を維持する一方、スタートアップ層でもフィンテック、Eコマース、エドテックなど多様な領域で資金調達が活発化している。VNGが黒字化を達成すれば、ベトナム発テック企業に対する国際的な評価が一段と高まることが期待される。
投資家・ビジネス視点の考察
1. VNG株と市場への影響
VNGは現在UPCoM市場(未上場株式の取引市場)で取引されており、流動性は限定的ながらも、個人投資家の注目度は高い。黒字化計画の発表は短期的なポジティブ材料であり、UPCoM市場における同社株に買い圧力がかかる可能性がある。ただし、あくまで「計画」であり、実際の四半期決算で進捗が確認されるまでは慎重な評価が必要である。
2. FTSE新興市場指数への格上げとの関連
2026年9月に決定が見込まれるベトナムのFTSE新興市場指数への格上げは、ベトナム株式市場全体への資金流入を促す大きなカタリストである。VNGのような知名度の高いテック銘柄が黒字化を果たせば、「ベトナム市場にはグローバルに通用するテック企業がある」という物語を国際投資家に訴求する上で、極めて重要なピースとなる。格上げを見据えたポートフォリオ構築を考える投資家にとって、VNGの業績推移はウォッチリストに加えるべき項目である。
3. 日本企業への示唆
VNGが展開するZaloプラットフォームは、日本企業がベトナム市場でマーケティングを行う際の重要なチャネルの一つである。VNGの経営基盤が安定すれば、Zaloエコシステム上でのビジネス展開もより信頼性を増す。また、VNGのクラウド・AI事業が成長すれば、日本のSIer(システムインテグレーター)やSaaS企業との協業の可能性も広がるだろう。
4. リスク要因
一方で注意すべき点もある。ベトナムのフィンテック規制は依然として流動的であり、ZaloPayに対する規制強化がコスト増につながるリスクがある。また、ナスダック市場での株価パフォーマンスが低迷を続ければ、国際資本市場での資金調達力に影響が出る可能性もある。4,500億ドンという黒字目標が「保守的」なのか「野心的」なのかは、上半期の決算を見極めてから判断すべきである。
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出典: VNExpress元記事












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