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5月初旬から落ち着きを見せていたベトナムの自由市場USD相場が、週明け2営業日で再び上昇に転じた。一方、商業銀行のUSD売りレートはベトナム国家銀行(中央銀行)が設定する上限(トラン)にほぼ張り付いた状態が続いている。米国ではFRB(連邦準備制度理事会)新議長にケビン・ウォーシュ氏が指名され、利下げと資産圧縮の「二本柱」政策が注目される中、ベトナムドンへの影響も無視できない局面である。
国家銀行の中心レートと銀行レートの現況
2026年5月19日、ベトナム国家銀行が公表したVND/USDの中心レートは25,133ドンで、前営業日比2ドンの上昇となった。ベトナムでは中心レートに対し±5%の変動幅が認められており、この日の上限(トラン)は26,389 VND、下限(サン)は23,876 VNDとなる。
注目すべきは、大半の商業銀行がUSD売りレートを26,389 VNDに設定し、上限にぴったり張り付いている点である。ABBank、ACB、アグリバンク(Agribank、ベトナム最大の国有商業銀行)、BIDV、エキシムバンク(Eximbank)、HDBank、MB、テックコムバンク(Techcombank)、ベトコムバンク(Vietcombank)、VPBankなど主要行を含む24行が一斉にこの上限レートを適用している。HSBC、OCB、VCBNeo、ビエティンバンク(VietinBank)のみが26,387〜26,388 VNDとわずかに低い水準で提示していた。
銀行間で広がる買値の格差
USD買い入れレートでは銀行間の競争が鮮明に表れている。現金取引ではHSBCが最高値の26,207 VND、NCB(ベトナム国民信用銀行)が最安値の25,800 VNDと、実に407ドンもの差がある。振込取引ではOCBが26,238 VNDで最高、ビエティンバンクが25,990 VNDで最低だった。
売買スプレッド(買値と売値の差)も銀行ごとに大きく異なる。振込ベースでOCBが149ドンと最も狭く、ビエティンバンクは397ドンと最大。NCBの339ドン、UOBの279ドンが続く。主要行の多くは220〜250ドン前後のスプレッドに収まっており、各行が外貨獲得のため買い入れ競争を強めている一方、売りレートは国家銀行の上限に縛られている構図が浮かび上がる。
自由市場では再びプレミアム拡大
自由市場(闇市場とも呼ばれる非公式な両替市場)では、5月19日時点で買値が26,480〜26,511 VND、売値が26,530〜26,611 VNDで取引されていた。前営業日比で買値が36ドン、売値が16ドン上昇している。銀行レートとの乖離は買い側で280〜520ドン、売り側で140〜220ドン程度であり、公式レートに対する「自由市場プレミアム」が再び拡大傾向にある。
米FRB新議長指名と国際要因
為替の背景として、米国のFRB人事が大きな材料となっている。トランプ大統領が指名したケビン・ウォーシュ氏は、利下げとFRBのバランスシート縮小を同時に進める方針を掲げている。同氏の就任宣誓式は今週金曜日にホワイトハウスで行われる予定である。
しかし、この政策実現は容易ではない。直近2カ月でインフレ圧力が再燃しており、FRB内部では利下げに慎重な声が根強い。雇用市場も安定しており、短期的な利下げサイクル入りの根拠は弱まっている。ウォーシュ氏は上院の承認公聴会で、従来のインフレ指標だけでなく他の物価指標も考慮すべきとの見解を示し、中東紛争によるエネルギーコスト上昇を踏まえれば高インフレ下でも利下げ余地はあると主張した。
一方、CME FedWatchによると、市場は2026年12月までにFRBが「利上げ」する確率を約50%と織り込んでおり、インフレ長期化への警戒は根強い。それにもかかわらず、前日の取引でドルインデックス(DXY)は主要通貨バスケットに対して0.32%下落した。これはトランプ大統領がイラン攻撃計画を一時中断し和平交渉を優先すると表明したことで、安全資産としてのドル需要が後退したためである。
投資家・ビジネス視点の考察
ベトナム株式市場において、為替の動向は極めて重要なファクターである。銀行のUSD売りレートが上限に張り付いている状態は、国内のドル需要が依然として旺盛であることを示しており、以下の点に注目したい。
銀行セクターへの影響:スプレッド拡大は銀行の外貨取引収益にプラスに働く可能性がある一方、国家銀行の上限規制により売り側の価格転嫁余地は限定的である。ビエティンバンク(CTG)、ベトコムバンク(VCB)、BIDV(BID)など大手行の為替関連収益動向を注視すべきである。
輸出入企業への影響:ドン安が続けばベトナムからの輸出企業にとっては追い風だが、原材料を輸入に依存する製造業や日系進出企業にとってはコスト増要因となる。特に在ベトナム日系企業は、ドン建ての売上とドル建ての仕入れとの間で為替リスク管理が一段と重要になる局面である。
FTSE新興市場指数への格上げとの関連:2026年9月に決定が見込まれるFTSE新興市場指数へのベトナム格上げにとって、為替の安定性は重要な評価項目の一つである。自由市場プレミアムの拡大や銀行レートの上限張り付きが常態化すれば、海外機関投資家の間で為替リスクへの懸念が高まり、格上げ判断にネガティブな材料となりかねない。国家銀行の為替管理手腕が問われる局面が続く。
FRB人事の波及:ウォーシュ新議長の下でドル金利が動けば、新興国通貨全般に影響が及ぶ。特にベトナムは対米貿易黒字が大きく、米国の通貨政策への感応度が高い。ドル高が進行すればドン安圧力が強まり、国家銀行が外貨準備を取り崩して介入するシナリオも想定される。
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