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トヨタ自動車が、米国・イスラエルによるイラン軍事作戦に端を発するホルムズ海峡の機能麻痺を受け、海外生産計画を約8万3,000台削減する方針を固めた。当初公表の3万8,000台から大幅に上方修正された今回の削減は、中東向けのみならずアジア新興国向けモデルにも及び、ベトナムを含む東南アジアのサプライチェーンと自動車市場にも間接的な影響を与える可能性がある。
削減の全体像——当初計画の倍以上に拡大
日経アジアの報道によると、トヨタは2025年5月から11月にかけての海外生産計画において、約8万3,000台の削減を実施する。当初は同期間で3万8,000台の削減を見込んでいたが、中東地域の需要減退と燃料価格の高騰を受け、主要サプライヤーに対して追加の計画調整を通知した。
削減対象となるのは主にガソリン車で、具体的には中国で生産されるSUV「RAV4」のガソリンモデル、そしてトヨタが新興国市場向けに開発した多目的車シリーズ「IMV(Innovative International Multipurpose Vehicle)」である。IMVシリーズにはピックアップトラック「ハイラックス」や多目的車「イノーバ」などが含まれ、ベトナムやタイ、インドネシアなど東南アジア各国で高い人気を誇るモデル群である。
国内生産にも波及——工場の一時停止も
海外生産の削減に先立ち、トヨタは3月・4月の日本国内生産計画においても約4万台を削減していた。これらは主に中東向け輸出を予定していた車両である。さらに6月から9月にかけて、国内生産でも追加で1,500台の削減を行う。対象は商用バン「プロボックス」およびワゴン「カローラツーリング」で、いずれも需要減退が理由とされる。
生産拠点への影響も具体化している。愛知県にあるトヨタの堤工場(「カムリ」などを生産)では、5月中に第2ラインを2日間停止。岐阜県の岐阜車体(小型バス「コースター」などを生産するトヨタグループの車体メーカー)でも第2ラインを1日停止する予定である。ただし、6月時点では他の国内工場の停止計画はないという。
ホルムズ海峡封鎖の深刻度
今回の大規模削減の根本原因は、ホルムズ海峡(ペルシャ湾とオマーン湾を結ぶ世界有数の海上交通の要衝)がほぼ機能停止状態に陥っていることにある。米国とイスラエルがイランに対する軍事作戦を展開した結果、同海峡を通じた物流が長期にわたり滞っている。世界の原油輸送量の約2割がこの海峡を通過するとされ、原油価格の上昇を通じて自動車の燃料コストにも直接的に影響を及ぼしている。
トヨタの経理担当幹部である東孝則氏は、直近の2025年3月期決算説明会において「トヨタは毎年50万〜60万台を中東地域に輸出しており、そのうち半数近くが影響を受ける見通しだ」と述べた。つまり、年間25万〜30万台規模の販売機会が損なわれるリスクがあるということである。
業績見通し——利益22%減の予想にさらなる下振れリスク
トヨタが今月初めに公表した業績見通しによれば、現行の2026年3月期(2025年度)においてトヨタ・レクサスブランド合計で1,000万台の生産を計画しており、前年比1%増を見込んでいる。一方、連結純利益は3兆円(188.9億ドル)と、前年比22%の減益を予想している。
ただし、アナリストの間では、中東情勢と原油市場がさらに悪化した場合、トヨタがこの利益予想をさらに下方修正せざるを得なくなる可能性が指摘されている。
注目すべきは、トヨタがガソリン車の削減を進める一方で、ハイブリッド車「プリウス」や一部の電動車については増産・輸出拡大を計画している点である。燃料高が続く環境下で電動化シフトを加速させるという戦略的判断が読み取れる。
投資家・ビジネス視点の考察
ベトナム自動車市場への影響:トヨタはベトナムにおいても乗用車・商用車の主要ブランドであり、IMVシリーズの「イノーバ」や「ハイラックス」はベトナム市場で根強い需要を持つ。今回の削減がIMV全体に及ぶ場合、ベトナム国内での供給逼迫や納期延長が生じる可能性がある。これはベトナムの自動車ディーラー株や、トヨタ向け部品を供給する現地サプライヤーにとってネガティブ要因となり得る。
ベトナム株式市場への間接的影響:ホルムズ海峡の封鎖長期化は原油価格の高止まりを意味し、石油・ガス関連銘柄(ペトロベトナムグループ各社など)にはプラスに作用する一方、輸送コスト上昇を通じて製造業全般の利益を圧迫する。ベトナムの物流企業や、輸入原材料に依存する製造業セクターには注意が必要である。
日系企業への影響:ベトナムにはトヨタのほか、多くの日系自動車部品メーカーが進出している。トヨタの生産調整はティア1・ティア2サプライヤーの受注減に直結するため、ベトナム現地法人を持つデンソー、アイシン、豊田自動織機などのグループ企業にも波及が見込まれる。
FTSE新興市場指数との関連:2026年9月に決定が見込まれるベトナムのFTSE新興市場指数への格上げに向けて、ベトナム市場は安定的な外資流入が期待されている。しかし、中東リスクによるグローバルなリスクオフ局面が長引けば、新興市場全体への資金流入が鈍化し、格上げ効果が薄まるリスクも意識すべきである。
マクロ的な位置づけ:ベトナムは「チャイナ・プラスワン」の恩恵を受けて製造業の集積が進んでいるが、今回のケースのようにグローバルな地政学リスクがサプライチェーン全体に波及する構造的リスクを改めて浮き彫りにした。中東依存度の高い石油輸入国であるベトナムにとって、ホルムズ海峡の安定は経済の根幹に関わる問題である。
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