こんにちは、ベトナム経済&株式投資ニュース解説のベトテク太郎です。
ハノイに住んで13年。タイ湖のほとりのカフェで、日本から来た投資家の方とよく聞かれる質問があります。「ベトナム株って、配当でちゃんとお金が入ってくるんですか?」と。
正直なところ、これはなかなか奥が深い質問なんです。「ベトナム株 高配当銘柄」で検索すると、利回り15%なんていう数字がズラッと並ぶ。でも、その多くは小型株で、来年も同じ配当が出るかどうか怪しいものばかり。一方で、誰もが名前を知る大型優良株、しかもVN30(ベトナムを代表する大型株30銘柄の指数)に入っているような銘柄の中にも、利回り7%を超える高配当株が、ちゃんと存在しています。
2026年5月時点で、VN-Indexは1,884ポイント前後。年初に記録した史上最高値圏から一度調整に入った局面です。株価が下がるということは、裏を返せば配当利回りが上がるということ。さらに今年9月にはFTSE Russellによる新興国(Secondary Emerging Market)への昇格が段階的に始まる予定で、長期マネーがベトナムに向かう流れも見えてきました。配当をもらいながら、市場全体の底上げも狙う。今のベトナム株は、高配当投資を考えるうえで、なかなか面白い位置にあると私は見ています。
今日は「ベトナム株のおすすめ高配当銘柄」を、VN30の中から、どういう基準で選べばいいのか。利回りの数字だけに飛びつくと痛い目を見る理由も含めて、現地在住の視点で正直に解説していきます。
そもそもベトナム株の配当は「ちょっと変わっている」
本題に入る前に、どうしても先に押さえてほしいことがあります。これを知らずにベトナムの高配当株を語ると、確実に数字を読み間違えるからです。
ベトナム企業は配当を「額面(パーバリュー)に対する%」で発表します。ベトナム株の額面は、ほぼ一律で1株10,000VND。だから企業が「現金配当25%」と発表したら、それは株価の25%ではなく、額面10,000VNDの25%、つまり1株あたり2,500VNDという意味なんです。日本円にすると1VND=約0.006円なので、2,500VND×0.006=約15円。ここを「株価の25%だ!」と勘違いすると、とんでもない高利回りに見えてしまう。これがベトナム高配当銘柄を調べるときの、一番よくある落とし穴です。
もうひとつ。ベトナム企業は「現金配当」と「株式配当(ボーナス株)」を使い分けます。株式配当というのは、現金の代わりに新しい株をもらえる仕組み。これは銀行株でとくに多くて、VN30に9社入っている銀行のうち、長らく多くが現金ではなく株式での配当を続けてきました。資本を社内に残して成長に回すためです。だから「銀行株=高配当」と思い込むと、現金の利回りはほとんどゼロだった、ということが起こりえる。最近は現金配当に踏み切る銀行も増えてきましたが、それでも現金利回りはまだ低めというのが実情です。
つまり、本当に欲しい「現金がチャリンと入ってくる高配当」を狙うなら、現金配当の実績がしっかりある銘柄を、額面比の%にだまされずに見極める必要がある。そういうことなんです。
ベトナム高配当銘柄の選定基準|利回りより先に見るべき5つの視点
ではどうやって選ぶのか。私が日頃、配当目的の銘柄をウォッチするときに見ている視点を、優先順位の高い順に整理しておきます。これはどの新興国の高配当株にも応用できる、わりと普遍的なチェックリストだと思っています。
第一に、配当の継続性です。単年でたまたま高利回りになった銘柄ではなく、過去数年にわたって安定して配当を払い続けてきたか。記念配当や特別配当で一時的に膨らんだ数字は、翌年には消えます。
第二に、配当性向(払い出した配当が、その期の利益の何%か)。これが意外と見落とされがちですが、極めて重要です。配当性向が100%を超えているということは、その年に稼いだ利益以上に配当を出している、つまり過去の蓄えを取り崩している状態を意味します。利回りが高くても、この水準が続けば、いずれ減配のリスクが顔を出す。逆に配当性向が40〜60%程度なら、利益でしっかりカバーできていて、むしろ増配の余地すらある、と読めます。
第三に、現金配当か株式配当か。前章のとおり、欲しいのが現金なら、現金配当の比率を確認すること。
第四に、業績のディフェンシブ性。景気が悪くなっても需要が落ちにくい、生活必需品やインフラ、エネルギーといった事業は、配当の原資である利益も安定しやすい。
そして第五に、税引後でいくら残るか。これは後ほど詳しく触れますが、ベトナムの配当には外国人個人投資家への課税があり、日本側でも課税される。額面の利回りと、手取りの利回りは別物だと考えておくべきです。
この5つを通すと、利回りランキングの上位を占める小型株の多くは、実はふるい落とされます。残るのが、これから紹介する大型の優良配当株なんです。
2026年 VN30から選ぶ、おすすめ高配当銘柄
ここからが本題。2026年初〜5月時点の各種データソースを参照しながら、VN30の中で私が高配当の観点から継続的にウォッチしている銘柄を、正直なコメント付きで紹介します。利回りは株価で日々動くので、あくまで「目安のレンジ」として見てください。
| 銘柄(コード) | セクター | 配当利回りの目安 | 配当性向 | ひとこと |
|---|---|---|---|---|
| ヴィナミルク(VNM) | 生活必需品(乳業) | 約7〜9% | 100%超 | 高利回りの代表格。ただし持続性に注意 |
| サベコ(SAB) | 飲料(ビール) | 約7〜10% | 100%超 | 安定配当だが同じく払い過ぎ気味 |
| PVガス(GAS) | ガス・公益 | 約3%(予想5%台) | 約40% | 利回りは控えめだが配当の質が高い |
| ペトロリメックス(PLX) | 石油製品流通 | 約3%前後 | ─ | 内需直結のインフラ系で安定感 |
| REE | 電力・インフラ | 約1.4% | 約22% | 「高配当」のイメージは誤解、実は成長株寄り |
まず、ベトナムの高配当を語るうえで絶対に外せないのが、乳業最大手のヴィナミルク(VNM)です。ベトナム中のスーパーやコンビニで、この会社の牛乳やヨーグルトを見ない日はありません。額面比で手厚い現金配当を続けていて、直近12か月ベースの配当利回りは、時期によって7〜9%程度で推移してきました。生活必需品という業態のディフェンシブ性も申し分ない。
ただし、ここで先ほどの選定基準が効いてきます。VNMの配当性向は100%を超える局面があるんです。つまり、その期の利益以上に配当を出している。長年のブランド力で稼いだ蓄えがあるからこそできる芸当ですが、これがずっと続けられるかというと、私はやや慎重に見ています。利回りの高さの裏側に、こういう構造がある。これを知っているかどうかで、投資判断は変わってきます。
次に、ビール最大手のサベコ(SAB)。1875年創業という、ベトナムでも屈指の歴史を持つ会社で、「サイゴンビール」「333(バーバーバー)」といえば、現地で飲んだことがある方も多いはずです。年間の現金配当は額面比で60%、1株あたり約6,000VND(日本円で約36円)という手厚さで、株価次第では利回りが7〜10%超に届く局面もあります。ただし、これもVNMと同じで配当性向が100%超。ビール消費が成熟してきたベトナム市場で、この配当をどう維持していくかは、私が継続観察しているポイントです。
ここで毛色が変わるのがPVガス(GAS)。国営ペトロベトナム傘下の天然ガス独占企業です。現金配当の利回り自体は足元で3%前後と、VNMやSABに比べると見劣りします。でも、私が注目しているのはむしろこちらの「配当の質」なんです。GASの配当性向は40%程度と低く、利益でしっかりカバーされている。つまり払い過ぎていない。アナリストの予想では将来の配当利回りは5%台への上昇も見込まれていて、増配の余地を残した、持続性の高い配当だと分析できます。利回りの絶対値より、安心して持ち続けられるか。そういう視点で見ると、GASの評価は一段上がります。
石油製品流通の最大手ペトロリメックス(PLX)も、利回り3%前後で内需に直結したインフラ系。ガソリンスタンドという生活インフラを押さえている安定感があります。
そして、ぜひ知っておいてほしいのが「高配当だと思われがちだけど、実は違う」銘柄の存在です。その代表がREE。電力・水道・インフラを手がける会社なので、いかにも高配当そうに見えるんですが、実際の配当利回りは1%台と低い。なぜか。配当に回すより、再生可能エネルギーなどの成長投資に資金を振り向けているからです。これはこれで一つの経営判断で、悪いことではありません。ただ「インフラ=高配当」というイメージだけで選ぶと、思っていたのと違う、ということになる。銘柄は、業態の印象ではなく、実際の数字で見る。ここでも基準が効いてくるわけです。
配当にかかる税金と、日本人投資家のリアルな買い方
高配当株を語るなら、避けて通れないのが税金と、そもそもどうやって買うのか、という現実的な話です。ここを書かない高配当記事は、正直、片手落ちだと私は思っています。
まず税金。ベトナムでは、外国の個人投資家が受け取る現金配当には、源泉徴収で5%の個人所得税がかかります。一方、株式配当(ボーナス株)の場合は、受け取った時点では課税されず、その株を売却したときに課税される仕組みです。さらに日本の居住者であれば、この配当は日本側でも課税対象になります。二重課税にならないよう、日本とベトナムの間には租税条約があり、確定申告で外国税額控除を使って調整するのが基本的な流れです。額面の利回りが7%でも、手取りはそこから目減りする。これは頭に入れておいてください。
そして、もっと根本的な話。「じゃあ明日からVNMを買おう」と思っても、実は日本の主要なネット証券では、ベトナムの個別株を直接売買するのは現状かなりハードルが高いんです。SBI証券や楽天証券で米国株を買うようには、いきません。現実的なアクセス手段としては、ベトナム株に投資する投資信託やETF(上場投資信託)を通じて、間接的にベトナム市場全体に投資する。あるいは、ベトナム現地の証券会社に口座を開設する、といった方法になります。個別の高配当株をピンポイントで狙うのは、相応の手間がかかる。この現実を伝えずに「ベトナムの高配当株はお得です」とだけ言うのは、フェアじゃないと思うので、正直に書いておきます。
ハノイの街角から見た、ベトナム人と配当の感覚
ここで少し現地の話を。ベトナムの個人投資家と話していて面白いのは、彼らの多くが「配当」にあまり関心を持っていないことなんです。日本だと「高配当株でコツコツ不労所得」という発想が人気ですが、こちらの個人投資家の主戦場は、あくまで値上がり益。短期で何倍を狙う、というノリの人が、カフェでも本当に多い。
だからこそ、ベトナム企業が現金配当より株式配当やボーナス株を好む文化が根づいているとも言えます。株主も「現金より株を増やしてくれ」という発想なんですね。タイ湖周辺のカフェで、隣のテーブルの若者がスマホの取引アプリを開いて一喜一憂しているのを、私は何度も見てきました。でも彼らが見ているのは、配当利回りの欄ではなく、チャートの値動きなんです。
この「現地はキャピタルゲイン志向、だから優良な高配当株がかえって見過ごされやすい」という構図は、長期で配当をもらいながら市場の成長も取りにいきたい日本の投資家にとっては、むしろチャンスの裏返しかもしれない。私はそう感じています。
なお、配当という「もらい続ける」発想は、私が以前から書いている「富の南下」という考え方とも、地続きの話です。世界の富が南へ、新興国へと流れていく長い潮流の中で、その配当を受け取り続けるという選択肢。興味のある方は、シリーズのマガジンもあわせて読んでみてください。
https://note.com/gonviet/m/m88eefc2a6c74
高配当だからこそ気をつけたいリスク
最後に、リスクの話も正直にしておきます。高配当は魅力的ですが、フリーランチではありません。
一番大きいのは、やはり為替リスク。ベトナムドン(VND)は長期的に対円・対ドルで緩やかに下落する傾向があり、せっかくのドン建て配当が、円換算で目減りしてしまう可能性があります。利回り7%でも、年率の為替下落で何%か食われる、という前提で考えておくべきです。
次に、すでに触れた配当性向の問題。VNMやSABのように利回りは高くても払い過ぎ気味の銘柄は、業績が崩れれば減配のリスクがある。高い利回りは、市場が「この配当はいつか続かなくなるかも」と織り込んでいる結果である場合も少なくありません。
加えて、外国人保有枠(フォーリン・オーナーシップ・リミット)の問題。人気の高い大型株は、外国人が買える枠がすでに埋まっていて、買いたくても買えない、ということが起こります。
こうしたリスクを全部ひっくるめたうえで、それでもベトナムの高配当株には、成熟市場にはない利回りと成長の同居という独特の魅力がある。要は、利回りの数字だけを見るのではなく、配当の「中身」と「持続性」、そして手取りと為替まで含めて判断する。結局のところ、これに尽きるんです。
いかがでしたでしょうか。今回のベトナム高配当銘柄について、皆さんのご意見もぜひお聞かせください。コメント欄や@viettechtaroのDMでお待ちしています。
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本記事で提供される情報は、執筆者の個人的な分析と見解に基づくものであり、投資判断の最終的な決定は読者ご自身の責任において行ってください。ベトナム株式投資は価格変動が大きく、元本割れのリスクを伴います。
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