こんにちは、ベトナム経済&株式投資ニュース解説のベトテク太郎です。
「ベトナム株に興味はあるけど、個別株は情報も少ないし、口座開設のハードルも高い。投資信託でまとめて一本、買える商品はないの?」
ハノイに住んで13年、日本の読者の方からいちばん多くいただく質問が、これなんです。私自身、現地で暮らしながらベトナム経済の伸びを毎日肌で感じているわけですが、いざ日本から投資しようとすると、これがなかなか手強い。証券口座、外国人持株枠、現地のカストディ……正直、初心者がいきなり個別株から入るのは、私でもおすすめしづらいんですよね。
そんな中で「とりあえずこれ一本でベトナム市場まるごと買えますよ」という顔をして登場したのが、iFreeNEXT ベトナム株インデックスです。大和アセットマネジメントが2024年6月に設定した、新NISAの成長投資枠でも買えるインデックスファンド。日本の個人投資家がベトナム株に分散投資できる、数少ない選択肢のひとつなんです。
しかも今、このファンドにとって追い風になりそうな大きなニュースが出ています。FTSE社によるベトナム株の新興国市場への格上げが、2026年9月21日に発効すると正式に決まりました。これがどう効いてくるのか。今日は、目論見書から運用報告書まで全部読み込んだうえで、iFreeNEXT ベトナム株インデックスの中身を、現地目線でひとつずつ解剖していきます。
iFreeNEXT ベトナム株インデックスとは?まずは基本データから
最初に、ファンドの素性をざっと押さえておきましょう。難しい話は後にして、まずは「どこの誰が運用している、どういう箱なのか」というところです。
運用しているのは大和アセットマネジメント、いわゆる大手の運用会社で、iFreeNEXTシリーズの一本ですね。商品分類は「追加型投信/海外/株式/インデックス型」。為替ヘッジはなしです。設定日は2024年6月28日、信託期間は無期限。決算は年1回、毎年5月28日となっています。新NISAの成長投資枠の対象になっているのも、地味に大きいポイントです。
数字の現在地も見ておきましょう。2026年5月27日時点で、基準価額は13,920円、純資産総額は約162億円。設定時が10,000円スタートでしたから、設定来でおよそ「+39.20%」。1年で見ると「+56.99%」という、なかなか派手なリターンになっています。ただこの1年リターンは、後で触れますが「底からの戻り」をかなり含んでいるので、額面どおりに受け取ると火傷します。そのあたりも正直に書いていきますね。
分配金は、第1期(2025年5月決算)が0円。設定来でも分配実績はまだありません。これは悪い話ではなくて、インデックスファンドとして分配金を出さずに信託財産の中で再投資していく、いわゆる成長重視の運用方針だからです。FIREを狙う長期投資家にとっては、むしろ複利が効くので歓迎すべき設計だと私は見ています。
連動先は「VN100指数」|よく聞くVN-Indexとは別物です
ここで一点、多くの人が勘違いしているところを潰しておきます。
iFreeNEXT ベトナム株インデックスが連動を目指しているのは「VN-Index」ではなく「VN100指数(配当込み、円ベース)」です。ニュースでよく耳にするVN-Indexは、ホーチミン証券取引所(HOSE)に上場する全銘柄をまるごと対象にした指数。一方のVN100指数は、そのHOSEの中から流動性の高い時価総額上位100銘柄だけを抜き出したものなんです。計算方式は浮動株調整済みの時価総額加重平均。
何が違うのか。ざっくり言えば、VN100は「ちゃんと売買できる、大きくて流動性のある銘柄だけのベトナム代表チーム」だと思ってください。流動性の低い小型株のノイズが入りにくいぶん、外国人投資家が実際に投資する対象としては、むしろこちらのほうが現実的なんですね。「ベトナム株インデックスを買ったのにVN-Indexと値動きが微妙に違う」という声を時々見かけますが、そもそも追いかけている指数が違うから、というのが答えのひとつです。
中身を解剖|なぜ最大の組入が「ダイヤモンドETF」なのか
さて、ここからが本題というか、私がいちばん語りたかった部分です。
iFreeNEXT ベトナム株インデックスの組入上位を見ると、トップに来るのが個別株ではなく「DCVFMVN DIAMOND ETF」というETFなんですね。比率はなんと13.5%(2026年4月末時点)。「インデックスファンドなのに、なんで中にETFが入ってるの?しかもそれが最大?」と引っかかった方、鋭いです。
これ、ベトナム株ならではの事情なんです。ベトナムには「外国人持株比率規制(フォーリン・オーナーシップ・リミット)」というものがあって、銀行株などの一部の優良銘柄は、外国人が買える枠がすでに満杯になっていることが多い。つまり、指数の構成銘柄に入っていても、外国人である日本のファンドが直接は買い増せない銘柄が存在するわけです。
そこで登場するのが、このダイヤモンドETF。外国人枠が埋まりがちな優良銘柄を中心に詰め合わせた現地のETFを通すことで、規制をかいくぐって実質的なエクスポージャーを確保しているんですね。実際このファンド、外国投資証券(ETF類)を合計で17%前後組み入れていて、ダイヤモンドETFのほかにVN30 ETFなども保有しています。「規制があるから連動性が落ちる」のではなく「ETFを噛ませて連動性を保ちにいく」。この構造を理解しているかどうかで、このファンドの見え方はだいぶ変わると思います。
個別株のほうに目を移すと、上位は見事にベトナムの「顔」が並びます。第2位がVINGROUP(12.4%)、第3位がVINHOMES(6.0%)。どちらもベトナム最大の財閥ビングループ系の不動産・複合企業で、この2社だけで全体の18%超を占めます。続いてフォーチュン・ベトナム、サコムバンク、ホアファット・グループ(鉄鋼最大手)、VPバンク、HDバンク、テクコムバンク……と、銀行と不動産がずらり。
業種別の構成を見ると、これがもう露骨で、金融が37.3%、不動産が23.0%。この2セクターだけで全体の6割を超えます(2026年4月末時点)。情報技術はわずか1.9%、ヘルスケアにいたっては0.1%。つまりiFreeNEXT ベトナム株インデックスを買うということは、実態としては「ベトナムの銀行と不動産にまとめて賭ける」のにかなり近い。ここは、買う前に絶対に知っておいてほしいところです。
気になる信託報酬とコスト|正直に言うと、安くはありません
コストの話も逃げずにいきましょう。
iFreeNEXT ベトナム株インデックスの運用管理費用(信託報酬)は、年率0.781%(税込)です。内訳は委託会社0.37%、販売会社0.32%、受託会社0.02%。購入時手数料はなし、信託財産留保額もなし。そこは良心的です。
ただ、信託報酬0.781%という水準を、ほかのインデックスファンドと並べてみると、どう感じるか。今や全世界株や先進国株のインデックスファンドは年0.1%前後、新興国株のインデックスでも0.2%前後で買える時代です。それと比べると、ベトナム株インデックスのコストは「数倍高い」というのが正直な事実なんですね。
具体的に計算してみましょう。仮に100万円を1年間保有した場合、信託報酬だけで「1,000,000 × 0.781% = 7,810円」。さらに第1期の運用報告書ベースだと、売買委託手数料や海外での保管費用なども含めた総経費率は1.05%でした。これで計算し直すと「1,000,000 × 1.05% = 10,500円」が、年間で見えにくく差し引かれていくイメージです。
じゃあ高いから論外なのかというと、そう単純でもない。そもそもベトナム単一国に低コストで投資できる手段自体がほとんどない。現地で口座を開いて個別株を直接運用するコストや手間を考えれば、「ベトナム一国にNISAでまとめて投資できる利便性の対価」として0.781%をどう評価するか、という話になります。このコストを許容できるかどうかは、まさに投資判断そのもの。ご自身の方針に照らして考えていただきたいところです。
運用実績はどうか|華やかな数字の「裏側」を見る
リターンの話に戻ります。
繰り返しになりますが、直近1年で「+56.99%」、6ヵ月で「+10.21%」(いずれも2026年5月27日時点)。数字だけ見ると、目がくらむような成績です。でもここで冷静になってほしい。
このファンド、設定直後はかなり苦しんでいるんです。第1期(2024年6月〜2025年5月)の運用報告書を読むと、期末の基準価額は9,027円、騰落率は「△9.7%」。つまり最初の1年はマイナスで終わっています。ベトナム株式市況そのものは上昇していたのに、なぜ基準価額が下がったのか。答えは為替です。ベトナム・ドンが対円で下落(円高)したことが、円ベースの基準価額を押し下げた。為替ヘッジなしのファンドだからこそ、現地株高の果実が為替で削られてしまったわけですね。
そのうえ2025年4月には、トランプ政権の相互関税ショックでベトナム株が急落する局面もありました。底値圏では基準価額が8,000円台まで沈んでいます。そこから現在の13,920円まで戻したからこそ、1年リターンが+57%という派手な数字になっている。要するに「底から測れば大きく上がって見える」というだけの話で、設定来で測れば+39%。これでも立派ですが、印象はだいぶ変わりますよね。数字は、どこを起点にするかで化けます。
最大の注目材料はFTSE格上げ|2026年9月21日が分岐点
そして、今このファンドが注目を集めている最大の理由が、FTSE格上げです。
2026年4月7日、FTSE Russell社が定期レビューで、ベトナム株を「フロンティア市場」から「セカンダリー新興国市場」へ格上げし、その発効日を2026年9月21日とすることを正式に決定しました。前回までは発効日の確定が事実上見送られていたので、これがようやく確定した、というのが今回の大きなニュースなんですね。
ここからが投資家として気になるところ。格上げが発効すると、ベトナム株は2026年9月から2027年9月にかけて、FTSEの全世界株式指数や新興国株式指数に段階的に組み入れられていきます。指数に組み入れられるということは、その指数に連動する世界中のパッシブファンドが、機械的にベトナム株を買わざるを得なくなるということ。試算ではパッシブファンドだけで10億米ドル前後、アクティブファンドまで含めれば数十億米ドル規模の海外資金が、ベトナム株式市場に流入すると見込まれています。
これまでベトナム株は、外国人投資家の大幅な売り越しが株価の重しになってきました。それが格上げを境に、流入に転じる可能性がある。もちろん「期待で買われて事実で売られる」展開も十分あり得ますし、中東情勢や原油価格次第で話が変わるリスクも残ります。ただ、構造的な資金の流れが変わるかもしれない節目であることは確かです。VN100指数に連動するiFreeNEXT ベトナム株インデックスは、この流れの恩恵をいちばん素直に受けやすい器のひとつ。私がこのタイミングでこのファンドを取り上げたのも、そういう背景があるんです。
なお、足元のベトナム経済も悪くありません。2026年1-3月期の実質GDP成長率は前年同期比+7.8%と、前年の+7.1%を上回る高成長。政府は通年で+10%以上という強気の成長目標まで掲げています。
ハノイのタイ湖から見る、この指数の「リアル」
ここで少し、現地に住んでいる人間としての肌感覚を挟ませてください。
私が暮らすタイ湖エリアのまわりを歩いていると、組入上位に並ぶ企業の存在感を、否応なく実感します。ビングループとビンホームズ。ベトナムに来たことがある人なら分かると思いますが、この国の都市開発って、本当にビングループ抜きには語れないんですよ。新しい巨大ショッピングモールも、湖の向こうに立ち上がる高層マンション群も、気づけばビン系。街そのものが、あの財閥の成長と一蓮托生みたいなところがある。
だからこそ、私はこの指数の「不動産23%・金融37%」という構成を見たとき、「ああ、これはベトナムの今をそのまま切り取った数字だな」と妙に納得したんです。良くも悪くも、今のベトナム経済のエンジンは、銀行が回す信用と、不動産がつくる資産効果。それが指数の中身にそっくり反映されている。
逆に言うと、ベトナムのもうひとつの顔である製造業や輸出、急成長するIT・テック企業の比率は、この指数だと意外なほど小さい。街を歩けばサムスンの工場で働く若者も、現地ITスタートアップの活気も至るところで感じるのに、VN100の中ではそれが主役になっていない。「ベトナムの成長を買っているつもりが、実は銀行と不動産を買っていた」というギャップは、現地に住んでいるとよけいにくっきり見えてくる。この点は、ファンドの善し悪しというより、ベトナム株式市場そのものの今の姿として理解しておくべきだと思います。
どんな人に向いているのか、私の見方
では、iFreeNEXT ベトナム株インデックスは結局どういう人のための商品なのか。あくまで私個人の見解として、整理してみます。
私の目から見て相性が良さそうなのは、ベトナムの長期成長に賭けたくて、新NISAの成長投資枠を使って一本でまとめて投資したい人。個別株を選ぶ手間や現地口座のハードルを払いたくない人。そして何より、銀行と不動産に偏った構成と、0.781%という決して安くないコスト、為替変動のリスクを「分かったうえで」受け入れられる人だと思います。
逆に、信託報酬の安さを最優先する人や、ベトナムのテック・製造業のグロースをピンポイントで取りにいきたい人にとっては、この器はやや物足りないかもしれません。そういう方は、個別株を組み合わせるという選択肢もあります。
私自身がどう向き合っているかというと、ベトナムに住んでこの国の伸びを信じている人間として、こうした指数連動の商品の動きは常に注目して追っています。ただ、FTSE格上げという「期待」が先行している局面でもあるので、一括でドンと入るのか、時間分散で積み立てるのか、そこは値動きとご自身のリスク許容度をよく見て判断したいところ。タイミングの最終判断は、どこまでいってもご自身の責任でお願いします。私が言えるのは「こういう材料と中身がありますよ」というところまで、なんですね。
どこで買えるのか|取扱いネット証券
最後に実務的な話を。iFreeNEXT ベトナム株インデックスは、主要なネット証券でひととおり買えます。2026年5月時点での取扱販売会社は、SBI証券、楽天証券、マネックス証券、松井証券、auカブコムあらため三菱UFJ eスマート証券、moomoo証券、SBIネオトレード証券、それに三菱UFJ銀行といった顔ぶれ。新NISAの成長投資枠で買える証券会社も多いので、すでにお持ちの口座でだいたいカバーできるはずです。販売会社によって取扱いが異なる場合があるので、最終的にはご自身の口座でご確認ください。
ベトナム株という、ふだん日本の証券会社の画面ではなかなか出会えない市場に、NISAの枠を使って一本で投資できる。FTSE格上げという節目を前に、その「器」の中身が銀行と不動産に偏っていること、コストが年0.781%かかること、為替で揺れること。この3つさえ腹落ちさせておけば、iFreeNEXT ベトナム株インデックスとの付き合い方は、ぐっと見えやすくなると思います。華やかな1年リターンの数字に踊らされるのではなく、中身と構造で判断する。そういうことなんです。
いかがでしたでしょうか。今回のiFreeNEXT ベトナム株インデックスについて、皆さんのご意見もぜひお聞かせください。コメント欄や@viettechtaroのDMでお待ちしています。
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