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住民85%が路地暮らし、ホーチミン市が「アプリで呼ぶ小型バス」で挑む都市交通革命

こんにちは、ベトナム経済&株式投資ニュース解説のベトテク太郎です。

今日は、ホーチミン市が打ち出した「ちょっと面白い公共交通の実験」についてお話ししたいと思います。正直、僕はこのニュースを最初に読んだとき、「これ、ベトナムの都市の景色が本当に変わるかもしれないぞ」と感じました。

ホーチミン市建設局が、大型バスが入れない住宅街や路地を走る「小型のオンデマンドバス」、いわゆるDRT(Demand Responsive Transit)モデルの試験導入を提案したんです。固定ルートを走る従来のバスとは違って、乗客がアプリで予約して、似たような目的地の人たちを自動でグループ化して、1台の小型バスに乗り合わせる。これがあのGrabや配車サービスに近い発想で動く「公共交通」というのが、なかなか興味深いところです。

ホーチミン市の住民85%が、大型バスでは届かない場所に住んでいる

このニュースで僕が一番ハッとしたのは、専門家の言葉です。ホーチミン市工科大学の元学科長であるファム・スアン・マイ准教授によると、ホーチミン市の住民の約85~86%は狭い路地で生活していて、大型バスが入れない地域に住んでいるそうなんです。

ハノイに13年住んでいる僕の感覚からしても、これはものすごくリアルな話です。ベトナムの都市って、表通りには立派な大通りが走っていても、一本中に入ると本当に細い路地(ベトナム語で「ngõ」と呼びます)が網の目のように広がっているんですよ。バイクなら通れるけど、車一台がやっと、というレベルの道。そこに人々が密集して暮らしている。

ハノイのタイ湖エリアでも、表通りから20m入ったところに昔ながらの家が並んでいて、そこに住んでいる人たちは公共交通機関に乗るまでに長い距離を歩かなければならない。ホーチミン市はそれがもっと激しい。だから「バス停まで500m以上歩くのが当たり前」になっている地域が多いと。本来なら200m以内が望ましいとされているそうです。

このギャップをどう埋めるか。それが今回のDRT構想の本質です。

アプリで呼ぶ「仮想ステーション」というアイデア

仕組みをもう少し具体的に紹介すると、こうなります。

乗客はアプリを通じて乗車を予約する。システムが似たような旅程の人を自動でグループ化して、1台の小型バスにまとめる。乗降場所は事前に登録された「仮想ステーション」。すべての予約、調整、支払い、データ管理がデジタルプラットフォーム上で行われる。車両は12人乗り程度の小型で、GPS追跡装置を搭載していて、運行センターと常に接続されている。

ピーク時間は固定ルートで動かして、オフピーク時間は需要に応じて柔軟に動かす。これ、よく考えられていますよね。バスでもなく、タクシーでもなく、その中間。ベトナムの実情にピタッとはまる発想だと思います。

試験導入の場所として挙がっているのは、ホーチミン市立大学周辺、市内中心部、そしてベンタイン~スオイティエン地下鉄沿線。特に大学周辺は、学生と講師という「テクノロジーや電子決済に慣れた層」が乗客の中心になるので、試験運行にはうってつけというわけです。

投資家として、どのセクターに目が向くか

ここからが、投資家としての視点です。

今回のDRT構想を読んで、僕の頭の中でいくつかの関連セクターが動き始めました。あくまで「私の個人的な見解」として読んでください。

まず、小型車両の供給。12人乗り程度の小型バス、しかも将来的にはEV化が想定される車両。ベトナムではこの領域、VinFast(VFS)を擁するビングループ(VIC)が国内シェアを着々と固めています。電動の小型乗合車両、いわゆる「電動ミニバス」のような商品が、もし公共交通の規格として採用されたら、これは大きな受注機会になりうる。

次に、システム・アプリ開発。予約、調整、支払い、データ保存、GPS追跡。これらをデジタルプラットフォームで構築・運用する事業者が必要になります。ベトナム国内で公共インフラ系のIT案件を取れる会社は限られていて、FPT(FPT)あたりが代名詞的なポジションです。FPTは政府系のデジタル化案件に強く、スマートシティ関連の実績もあるので、もし本格採用されればプレゼンスは増す方向でしょう。

そして、不動産。これが個人的には一番面白い切り口です。ホーチミン市の場合、ベンタイン~スオイティエン地下鉄が今年から本格稼働していて、沿線の駅周辺はすでに不動産デベロッパーの草刈り場になっています。DRTが「地下鉄駅と住宅街の最後の数百メートル」を埋める交通手段として機能するなら、今まで「駅から遠いから安かった」エリアの価値が変わってくる可能性がある。沿線開発に強いビンホームズ(VHM)やノバランド(NVL)あたりは、このストーリーの恩恵を間接的に受ける位置にいます。

ハノイ在住13年の僕が、このニュースに感じる「肌感覚」

少し脱線します。

僕は2013年からハノイに住んでいるんですが、この13年間でこの街の公共交通は本当に大きく変わりました。最初は「公共交通という概念すら成立していない」と感じていた都市が、2A号線、3号線と地下鉄が次々に開通して、街の景色そのものが変わってきている。

ただ、地下鉄を使っていて毎回思うんですよ。「駅まで行くのが面倒くさい」と。家から駅まで800m歩く間に汗だくになって、結局Grabバイクを呼んでしまう。これがハノイの夏の現実です。ホーチミン市はもっと暑いので、もっと深刻でしょう。

つまり、地下鉄やバスというハードを作っても、「ラストワンマイル」が解決しないと、結局みんな配車サービスに流れていく。DRT構想は、ここを公共交通の側から埋めにきた、というのが本当の意味です。

これがうまくいくかどうかは、正直まだわかりません。専門家も指摘しているように、狭い路地に12人乗りの小型バスを入れることには、視界の悪い交差点での渋滞や安全上のリスクがある。「仮想ステーション」の管理が甘ければ、無許可の停車や違法な乗降場所が乱立する可能性もある。Grabやマイリン(Mai Linh)といった既存の配車サービスやタクシーとの競合関係も整理しないといけない。

でも、85~86%の住民が「公共交通の空白地帯」に住んでいる、というのは投資家にとっては「埋められていない巨大な需要」でもあるわけです。そこに公共政策と民間サービスが両側から手を伸ばし始めている。これがベトナムの都市インフラの、今のフェーズなんです。

投資家として頭の片隅に置いておきたいこと

DRTの試験運行はまだ「提案段階」です。実際に動き出して、結果が出るまでには時間がかかる。今すぐ何かの銘柄が爆騰する話ではありません。

でも、視点を少し引いて見ると、ベトナムの都市交通は今、次の段階に入ろうとしています。地下鉄が幹線を作り、DRTのような新しい仕組みが毛細血管を埋めていく。その過程で恩恵を受けるセクターは、車両メーカー、IT・アプリ開発、沿線不動産、そして長期的には消費・小売(駅周辺の人流が変わるため)にまで広がる可能性があります。

「公共交通革命の周辺で何が動くか」という視点を持っていると、ニュースの読み方が変わってきます。今回の報道は、その視点を養うのに、なかなか良い教材だと僕は思います。

「住民の85%が、まだ公共交通から取り残されている」。この数字を、需要の大きさとして読むか、難しさとして読むか。投資家の視点では前者です。

そういうことなんです。

いかがでしたでしょうか。今回のホーチミン市のミニバス構想について、皆さんのご意見もぜひお聞かせください。コメント欄や@viettechtaroのDMでお待ちしています。

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