ベトナム証券市場が大改革へ――外国人投資家、国際ブローカー経由で口座開設不要に。FTSE新興国指数昇格への布石か

ベトナム財務省は2026年2月3日、証券市場に関する通達第08/2026/TT-BTC号を公布した。この新規定により、外国人投資家は国際的な証券仲介機関(グローバルブローカー)を通じてベトナム国内の証券会社に売買注文を出すことが可能となり、従来義務付けられていた国内証券会社での口座開設が不要となる。これはベトナム証券市場の国際化に向けた画期的な制度変更であり、FTSE(英国の指数算出大手)が求めていた条件を満たすものとして注目を集めている。

目次

新制度の核心——グローバルブローカー経由の取引解禁

通達08号は全16条からなり、うち15条が既存規定の改正・追加内容、1条が施行条項である。最大の目玉は、外国人投資家がグローバルブローカーを代理人として活用し、ベトナム国内証券会社と直接契約を結ばずに証券取引を行える仕組みの導入だ。

この改正は、FTSEや海外の機関投資家からの長年の要望に応えたものである。具体的には、(1)既にグローバルブローカーと取引関係を持つ外国人投資家が、新たにベトナム国内証券会社と契約を締結する手間を省く、(2)大型ファンドが市場参入する際の時間・手続き・プロセスを大幅に短縮する、という2つの狙いがある。

ただし、外国人投資家は引き続き証券取引コード(証券取引登録番号)を取得し、カストディアン(保管機関)に証券保管口座を開設する必要がある。取引後の資金・証券は、ベトナム証券保管振替機関(VSDC)および決済銀行を経由してカストディアンに振り分けられ、投資家の保管口座に記帳される仕組みだ。これは韓国や台湾など、他のアジア新興市場で既に採用されている方式と同様であり、海外投資家にとって馴染みやすい制度設計といえる。

NPF取引(事前入金不要取引)の規制見直し

通達08号には、NPF(Non-Prefunding、事前入金不要)取引に関する重要な改正も含まれている。まず、外国機関投資家がNPF取引で決済義務を履行しなかった場合の情報開示義務が廃止された。従来は市場全体に違反情報が公開されていたが、今後は証券会社が国家証券委員会(SSC)、VSDC、ベトナム証券取引所(VNX)に当日中に報告するのみで、市場への公表は行われない。

一方で、決済違反に対するペナルティは厳格化された。初回違反の場合は7営業日、30営業日以内に3回の違反があった場合は180日連続でNPF取引が禁止される。この期間中、当該投資家は株式購入時に保管口座に十分な資金を用意しなければならない。

さらに、NPF取引の対象銘柄制限が撤廃された。従来、証券会社自身の株式、その親会社の株式、同一グループ会社の株式などはNPF取引の対象外とされていたが、これがインデックス連動型ファンドの運用に支障をきたしていた。新規定では、他の証券会社との所有権移転契約を締結することを条件に、これらの銘柄もNPF取引の対象となる。決済不履行時には、当該株式は別の証券会社の自己勘定に移転され、その証券会社が市場で売却できる仕組みだ。

外国籍ファンド運用会社に2口座開設を許可

政令245/2025/NĐ-CP号に基づき、外国籍の証券投資ファンド運用会社には2つの証券取引コードが付与されることになった。これを受け、通達08号は同運用会社に対し、(1)自社の取引活動用口座、(2)顧客資産の運用管理用口座、の2つの取引口座開設を認めている。これにより、自己資金と顧客資金の分別管理が明確化され、国際的なファンド運用基準への適合性が高まる。

FTSE新興国指数昇格への重要な一歩

今回の制度改正は、ベトナム株式市場がFTSEの新興国指数(Emerging Market Index)に昇格するための条件整備として極めて重要な意味を持つ。FTSEは長年、ベトナム市場に対して事前入金要件の緩和や外国人投資家のアクセス改善を求めてきた。2025年9月にはFTSEがベトナムを「ウォッチリスト」に追加しており、早ければ2026年後半にも新興国指数への正式昇格が実現する可能性がある。

新興国指数への昇格が実現すれば、FTSEの指数に連動するパッシブファンドから数十億ドル規模の資金流入が見込まれる。これはベトナム証券市場の流動性向上と時価総額拡大に直結し、ひいてはベトナム経済全体の国際的な信認向上にも寄与するだろう。

日本企業・投資家への影響

日本の機関投資家や個人投資家にとっても、今回の制度改正は朗報である。これまでベトナム株投資には現地証券会社での口座開設という煩雑な手続きが必要だったが、今後は野村証券や大和証券といった日系証券会社のグローバルネットワークを経由して、より簡便にベトナム株にアクセスできる可能性が広がる。

また、ベトナムに進出している日系製造業やサービス業にとっても、現地子会社の株式上場や資本調達の選択肢が広がることが期待される。ベトナム証券市場の制度的成熟は、日越経済関係の深化にも好影響を与えるだろう。

ベトナム政府は2030年までに証券市場の時価総額をGDP比100%に引き上げる目標を掲げている。今回の通達08号は、その野心的な目標達成に向けた重要な布石となる。

出典: VnExpress

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