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スイスの大手金融グループUBSの最新レポートによると、世界の超富裕層ファミリーが米ドル建て資産の保有比率を引き下げる動きを加速させている。背景には、米国の地政学的リスクの高まりと、膨張を続ける米国の公的債務への懸念がある。この潮流は、新興国市場やアジア地域への資金シフトを後押しする可能性があり、ベトナム株式市場にとっても無視できないシグナルである。
UBSが明らかにした富裕層の資産シフト
UBSは世界最大級のウェルスマネジメント機関として、超富裕層ファミリーオフィス(家族の資産を専門的に管理する組織)の投資動向を定期的に調査・公表している。今回のレポートが示した最大のポイントは、世界の最富裕層が米ドル建て資産の保有割合を意図的に減少させているという事実である。
これまで米ドルは「世界の基軸通貨」として、富裕層の資産ポートフォリオにおいて圧倒的な存在感を持ってきた。米国債、米国株、米ドル建ての不動産やプライベートエクイティなど、ドル建て資産はあらゆる資産クラスにまたがっている。しかし近年、その「安全資産」としての地位に疑問符がつき始めている。
背景にある二つの構造的要因
第一に、地政学的緊張の激化である。米中対立の長期化、ロシア・ウクライナ紛争、中東情勢の不安定化など、米国を中心とした国際秩序が揺らぐ中で、ドル一極集中のリスクが意識されるようになった。米国が経済制裁を外交ツールとして多用する姿勢も、「ドル依存」のリスクを高める要因として富裕層の間で警戒されている。
第二に、米国の公的債務の急膨張である。米国の連邦政府債務は近年急速に拡大しており、財政の持続可能性に対する懸念が高まっている。利払い負担の増大は米国の財政余力を圧迫し、長期的にはドルの価値毀損リスクにつながるとの見方が広がっている。信用格付け機関による米国債の格下げも、こうした不安を裏付ける材料として市場に受け止められた。
資金の行き先──金・非ドル資産・新興国市場
では、ドル建て資産から流出した資金はどこに向かうのか。UBSのレポートや各種市場分析によれば、主な受け皿として以下が挙げられる。
金(ゴールド):2024年以降、金価格は歴史的高値圏で推移しており、各国中央銀行も外貨準備における金の比率を高めている。富裕層も同様に、インフレヘッジおよび通貨リスク分散の手段として金への配分を増やしている。
ユーロ建て・アジア通貨建て資産:通貨分散の観点から、ユーロ圏の資産やアジアの成長市場への投資が増加傾向にある。特にASEAN(東南アジア諸国連合)地域は、米中対立に伴うサプライチェーン再編の恩恵を受ける「チャイナ・プラスワン」の最有力候補として注目されている。
プライベートマーケット・オルタナティブ資産:非上場株式やインフラ投資、ヘッジファンドなど、伝統的な上場市場以外の資産クラスへの分散も進んでいる。
ベトナム市場への影響と投資家視点の考察
この世界的な「脱ドル」の潮流は、ベトナム経済および株式市場にとって中長期的にポジティブな追い風となり得る。その理由を以下に整理する。
1. 新興国市場への資金流入の恩恵:ドル建て資産から資金が移動する先の一つとして、高成長が期待されるアジア新興国市場がある。ベトナムはGDP成長率が6〜7%台を維持し、人口ボーナスと都市化の進展が続く数少ない市場である。グローバルな資産配分の見直しが進む中で、ベトナム株への関心が高まる素地がある。
2. FTSE新興市場指数への格上げとの相乗効果:ベトナムは2026年9月にもFTSE(フッツィー)の新興市場指数への格上げが決定される見込みである。格上げが実現すれば、パッシブファンドを中心に数十億ドル規模の資金流入が期待される。ドル資産からの分散を図る富裕層やファミリーオフィスの資金が、FTSE格上げによるインデックス資金と合流すれば、ベトナム市場への買い圧力は一層強まる可能性がある。
3. ベトナムドンの安定性:ベトナム国家銀行(中央銀行)は為替の安定を政策の柱としており、ベトナムドンは他のアジア新興国通貨と比較して相対的に安定した値動きを見せてきた。ドルからの分散先として、通貨が急激に変動しにくい市場は投資家にとって魅力的な条件である。
4. 日本企業・投資家への示唆:日本はベトナムにとって最大級の直接投資国・ODA供与国であり、すでに多くの日本企業がベトナムに生産拠点を構えている。グローバルな資金フローがドルから分散する流れは、円建て・ドン建てでの投資機会を相対的に押し上げる効果がある。日本の個人投資家にとっても、ベトナム株式市場はポートフォリオの地域分散先として改めて検討に値する局面を迎えている。
5. 関連銘柄への注目:グローバル資金の流入が見込まれる場合、まず恩恵を受けるのは流動性の高い大型株である。VNインデックスの構成銘柄では、ビングループ(Vingroup、ベトナム最大手のコングロマリット)、ベトコムバンク(Vietcombank、国内最大の商業銀行)、FPTコーポレーション(IT大手)などが外国人投資家の買いの受け皿となりやすい。また、不動産セクターやインフラ関連銘柄も長期的な資金流入の恩恵を享受する可能性がある。
まとめ──「脱ドル」は一時的な流行ではない
UBSが報告した富裕層のドル資産圧縮は、単なる短期的なポジション調整ではなく、地政学的・財政的な構造変化に基づいた中長期のトレンドシフトである。米国の財政問題と国際秩序の再編が進む限り、この動きは今後も継続・拡大する可能性が高い。ベトナムをはじめとするアジア新興国市場は、こうしたグローバルな資金再配分の受け皿としてますます重要な位置を占めることになるだろう。
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出典: 元記事












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